金沢大学先端科学・社会共創推進機構

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「日本体育学会第67回大会」に参加しました

平成28年8月26日
日本体育学会第67回大会 出張報告
金沢大学先端科学・イノベーション推進機構 博士研究員
芝口 翼
 

 2016年8月24~26日、大阪体育大学熊取キャンパス(大阪府)にて日本体育学会第67回大会が開催され、運動生理学と栄養分野に関わる最新の情報を得ること、また、専門分野の研究者との情報交換を目的に参加した(参加期間は24~25日)。
 本大会のテーマは、「スポーツと"ひと・社会"―融合と進歩の先に―」で、参加者の大半は体育分野(運動生理学、体育心理学、体育社会学、体育史など)の研究者であった。

 

 私が携わっている研究プロジェクトは、「米醗酵技術を応用したスポーツ用機能性飲料の開発」であり、現在は主に一過性の運動によって肝・骨格筋のグリコーゲンが枯渇(減少)した状態から、米醗酵エキスの摂取によってどの程度グリコーゲンの超回復(ベースラインよりも高い貯蔵量)が生じるかを評価することで、米醗酵エキス摂取がグリコーゲン再貯蔵能(持久力)に及ぼす影響について検証を行っている。
 本研究の円滑な遂行のためには、持久性運動や栄養摂取による肝・骨格筋の代謝応答の理解と新たな知見の本研究への応用等が必要不可欠であるため、本学会大会では運動生理学分野のシンポジウム「運動時の代謝と臓器連関」を中心に回った。
 同シンポジウムにおける「持久性運動時の脂質、アミノ酸代謝の筋肝連関」の発表では、持久性運動時には筋-肝の臓器特異的な脂質・アミノ酸エネルギー代謝が高まり、分岐鎖アミノ酸(BCAA)は骨格筋のエネルギー産生に用いられるだけでなく、その中間代謝物の一部が肝臓に運ばれて肝臓のエネルギー源となり得ることが示されていた。
 米醗酵エキスがBCAAを始めとする種々のアミノ酸を複合的に含んでいることを考慮すると、運動後の米醗酵エキス摂取により生じる筋・肝の糖代謝の変化は、必ずしも各々の臓器内のみで完結しているわけではなく、筋-肝連関によって生じている可能性があるという点で非常に興味深い物であった。
 また、他の発表では、タウリンやシトルリンといった機能性栄養成分の摂取が運動に伴う血糖値の低下や疲労を抑制する作用があることが示されていた。
 そのメカニズムの一部は、米醗酵エキスが有する機能性を評価する上で重要な概念となり得るものであった。

  

本大会におけるシンポジウムや研究発表への参加、各専門分野の研究者とのディスカッションを通して、自身の研究に有益な情報を多数得ることができた。
 今後は本学会大会で得られたことを活かし、研究を進めていきたい。