今回も社長として社員に向けたメッセージの中から皆さんにも役に立ちそうなものをピックアップしてお送りします。
<見える化の本質は「つながり感」>
先日の北國新聞で、石川工場のIoTが紹介されました。まだまだIoT化が遅れている石川県にあって、地元の新聞、テレビで先進事例として取り上げられつつあります。
私はどこにいても、1日に数回スマホからIoTサーバにアクセスして各成形機の状況やショット数の進捗をモニターしていますが、リアルタイムに表示される数値や状態の変化から生産の進捗が分かるだけでなく、工場で頑張っている一人ひとりの皆さんが今この瞬間何をしているかが想像でき、現場の皆さんとの「つながり感」を感じることができるので大変に気に入っています。
「見える化」とは見えないものを見えるようにしよう、という意味ですが、「見えない」というのにはいろいろな意味があります。
1つは暗黒で本当に見えない状態です。このときには明かりをつけるしかありません。
2つ目は、全体が把握できない、あるいはその中での自分の位置が分からない場合です。
富士山を登っているときには富士山の姿は見えません。自分が何合目にいるのかも分かりません。このような時には自分の頭上にドローンを飛ばして、富士山の全景の中の自分の位置を確認するしかありません。
経営管理で現在使っている「MQ会計」による「日次決算」という手法は、このドローンに相当するものです。
事業ごとに3カ月(90日)を区切りとして、毎日生み出す、仕事の付加価値(MQ:限界利益)を積み上げていくグラフです。途中に赤字と黒字の境界線(損益分岐線=固定費の線)が張ってありますので、1日でも早くその線を越えて、頂上を目指していくよう皆さんの背中を押す役割を果たしています。"このペースでは頂上でご来光を拝めない"と早い時点で分かりますので先へ先へと対策を講じることができます。「見える化」の効能です。
3つ目の「見えない」は、「相手の気持ち」です。これは最もやっかいな問題であり、ほとんどの人が抱える「人間関係」の悩みの元凶でもあります。この「見える化」の手段は、情報のオープン化・共有化の徹底と、私がいつも繰り返す「必死のコミュニケーション」しかありません。かなりのお金をかけて各拠点をテレビ会議でつないだり、社内SNSでお互いの拠点でのイベントを披露しあったり、各拠点内でもランチ会や誕生会をやったりしているうちに、しだいに白山の文化としての「つながり感」が芽吹いてきていることを実感しています。この「つながり感」が世界最高のワンチームへと導いてくれるはずです。
<企業の成長と社員の自己実現>
当社の行動指針の第4条は、「会社は、社員一人ひとりの自己成長と自己実現の機会を提供し」と謳っています。これは、「会社の成長」と「社員の人間としての成長と自己実現」は両立する、あるいはお互いにプラスに影響し合う「相乗効果」がある、ということを前提に書かれています。
先日見たテレビ番組(カンブリア宮殿)の中で、万年二位で低迷するポテトチップスの湖池屋を立て直すために社長として送り込まれた、稀代のマーケッター佐藤章さんは、「企業の成長と社員の自己実現は一致することができる」と言い切っていました。
佐藤さんは湖池屋の若手に100種類の自分の好きなスナックを食べて感想と新たなアイデアを提出せよ、と指示しました。「既にあるものからアイデアは生まれない」ということを教えるためです。
値段でも新しさでもなく、魅力的かどうかを競うのが企業間のあるべき競争だと知っている佐藤さんは、無限にある魅力の構成要素の組み合わせを限界まで考えることで、はじめてオリジナリティーが生まれる、ということを社員に教えることで、会社の体質を変え、低迷していた湖池屋を見事に復活させました。
同時にそれまでカルビーの後追いで新たな"味つけ"に走るだけだった社員が、自ら考え、自分らしさを追求して、これまで見たこともないものを作ろうとする「自己改革できる」人材、「自己実現する」人材に変化していったのです。
「会社の成長」と「社員の人間としての成長と自己実現」は両立し、しかも「相乗効果」があることを、佐藤さんは湖池屋で証明しました。
11月1日から新年度が始まります。
皆さんには、その新年度の事業目標を実現するための「目標設定」と「実行管理計画」を立てていただきますが、これもまた「会社の成長」と「社員一人ひとりの成長と自己実現」の両立のためのツールです。
目標管理を行う理由は、「できるだけ主義」と「いつでもできる主義」を排するためです。
「できるだけ主義」は、自分のできる範囲という現在の自分の能力が前提になりますが、「目標主義」では、目標を達成できる条件を備えた自分が前程になります。いまの自分ではなく、達成できる自分が前提ですから、そこに「自己変革」が必要となるのです。
「いつでもできる主義」では「今じゃなくてもいい」から「いつまでもやらない」結果になりがちです。「今しかできない」機会と捉えると、断然実践できるようになります。
目標管理は会社のためでもありますが、皆さんの成長と自己実現のためでもあるのです。
<新年度を迎えて「まず心を整えよう」>
11月1日から新年度が始まりました。18日に石川工場で、19日に飯能支店で事業計画の全社説明会を予定しています。10年後の私たちのありたい姿からさかのぼって76期の単年度計画までを、皆さんに直接お伝えする予定です。
今日はその前段で、新年度を迎えるにあたり、もう一度、図に示す「基本の習慣」が身についているかどうか自分に問うていただきたいと思います。
・心を込めてあいさつをする習慣
・ゴミを拾い、掃除をする習慣
・約束を守る習慣
・問題の原因を自分に求め、その解決を「自分ごと」として自ら考え行動する習慣
これらの「基本の習慣」を身につける目的の1つは、「心を整える」ことです。
自分の「感情」や「欲望」をコントロールするというのは、何年生きても難しいものです。この難題に対し、日本人は一つの知恵を持っていました。それが、「礼儀」であり「礼節」です。いまでも、柔道や剣道といった武道には、「礼の作法」があります。「礼」に始まり「礼」に終わるという「作法」を通して、乱れる心をコントロールしているのです。
上に上げた「基本の習慣」は、その「礼儀」であり「礼節」であり、それを実行することは「礼の作法」であるともいえるのではないでしょうか。
自分の心をコントロールできなくては相手に勝つことはできません。これは仕事でも同じことです。「心を整える」ことは、勝負に勝つための鍛錬法であり、仕事で成果を上げるための鍛錬法でもあるのです。
まずは、「基本の習慣」の中の最初の基本、「心を込めてあいさつをする」を実践して、明日も朝から心を整え、元気に仕事に邁進していきましょう。
<競争市場の中で>
先週中国に出張してみて、我々が一歩も二歩も進んでいると思っていた光コネクタ分野にも新興の中国企業がヒタヒタと足音を立ててすぐ後ろまで迫っていることを改めて思い知らされ、大変な危機感を覚えました。
「日本の技術に追いつけ、追い越せ」を合言葉に、我々が20年以上かけてやってきたことをわずか2,3年程度でやろうという中国の強い意志がそこにはあります。猛烈な勢いで技術を学び、手探りで自分のものにしようという若手技術者、ふんだんな資源(お金)で支援し、さらに大きく儲けようという多くの投資家の存在。自身が長年蓄積した技術やノウハウが活かせるなら、とそれらを惜しみなく提供する日本人ベテラン技術者の存在。そして2025年までに主要ハイテク産業の国内内製化を目標とする中国政府の政策とバックアップ。これらが相まって、超速の進歩を遂げているのです。
こうなると現在トップクラスの我々の前途は真っ暗なのでしょうか?
私はそうは思いません。むしろ逆に追い込まれた時の我々のエネルギー、活力を見せる絶好のチャンスが迫っていると思っています。国際競争こそ我々を強くしてくれる場だと思うのです。
かつて政府が新興産業である自動車産業の保護のために外国企業を締め出した時、本田技研創業者の本田宗一郎は、通産省に怒鳴り込みに行きました。驚いたのは国内産業を保護して感謝されると思っていた通産省です。
本田は国の保護など百害あって一利無しだというのです。世界との競争にさらされて初めて自分たちのレベルが分かり、改善する意欲が沸くものだ。世界に通用しないものを買わされる国民はたまったものでない、即刻そのような政策はやめろ。というのが本田宗一郎の言い分です。
今こそ、私たちもこの本田宗一郎の気概を見習わなくてはなりません。
「ピンチはチャンスだ。」我々白山に集ったメンバーは、幾多の困難を乗り越え、破綻の淵から奇跡の生還をしてきた人間の集まりです。理屈を抜きに、「我々はどんな困難も乗り越えて成長できる」と自分自身に言い聞かせることから始まります。
そして徹底的に考えることが重要です。
自由な発想で考え抜いて、今までの常識を破る智恵を出していく。とても楽しい作業です。
かつてオートバイが登場したときに自転車は消滅するだろうと言われました。そして自動車が登場したときにオートバイの時代は終わると言われました。しかし実際には自転車も、オートバイも、自動車も、それぞれ様々な形で発展して共存していますね。あるいは形を変えつつ進歩してもいます。
中国新興企業との熾烈な競争を通して、我々は一回り大きく成長していけると思っています。
<新しい1日を生きる>
第76期のスタートはいかがでしょうか。
今日という日は、「昨日のつづき」か、それとも「新しい一日」か。この認識によって、一日の過ごし方は違ってきます。それを意識せず、「似たような毎日」を過ごしていると、いつのまにか「惰性」になり、「マンネリ」になったりします。
毎朝唱和している「やってみよう 日々新たに」は、名君であった中国の「殷の湯王」が、
「まことに、日に新たに
日々に新たに
また日に新たなり」
と毎朝顔を洗う洗面器に彫らせて自戒した、という話から引いています。
昨日意地を張ってできなかったことも、今日なら素直にできるかもしれない。昨日つい逃げてしまったことも、今日なら勇気を出してできるかもしれない。
全てのものが変化している中で、「惰性」に流されて、心が固く乏しくならないように、「新鮮な一日」を生きたいものです。
このところ、私なりに「新鮮な一日」の生き方として工夫していることは、社内外を問わずできるだけ多くの、さまざまな立場の人と会って話を聴き、謙虚に学ぶことです。直接相手と会い、話す相手を自分の目で見て、その人から聞いた話をいったん素直に受け止めた後、自分の頭で考えること。これを意識してやっています。
物事を総合的に判断するためには、できるだけ多くの一次情報を得る必要があります。最も早い方法が一次情報源である当事者の話を聴くことです。これは時にとても勇気のいることではあります。ビジネス上の競合の人や、こちらを嫌っているかもしれない人のところにトコトコ出かけて行って話を聴くのですから。
しかし鬼のようだと思っていたライバル会社のトップがとても人間味あふれる魅力的な人であったり、岩のように頑固な人だと伝えれた人が話し込むうちに柔軟にこちらの相談に乗ってくれたり、逆にこちらが貢献できることを発見したり、様々な広がり方をすることが多いものです。結果として人脈が作られていきます。
また様々な立場の多くの人の話を聴くことで、今まで見つからなかった新たな問題解決の道や新たな関係性の構築が見つかり、新たなビジネススキームになることもあるのです。
歴史を見ると、明治維新という壮大なビジネススキームの刷新も、坂本龍馬に代表される幕末の志士たちが全国を奔走して人に会い、人から学びあうことによって時代の潮流を作り上げることで成し遂げられたのだと思うのです。
<「こち亀」作者の時間管理と「働き方改革」>
「こち亀」作者の秋山治さんは、40年間休まず週刊連載を続けた凄いマンガ家です。
人気マンガ家と言えば、締め切りに追われ、ろくに食事もとらずに徹夜は当たり前、が相場ですが、秋山さんは違います。勤務時間は9時から19時までと決め、昼と夜には1時間ずつ食事休憩をとり、残業は極力控え、徹夜はしない、という規則正しい生活を自身もアシスタントも守ってきたそうです。1作品を5日で仕上げ、2日の余裕を生み出し、その2日間で作品のストックを作り、連載では描けない読み切りに取り組む、といった整然とスケジュール管理された生活パターンを守ってきました。これが質の高い「こち亀」作品を40年間も休みなく世に送り続けてこられた秘密です。
なぜこのような生き方を続けることができたのでしょうか。
秋山さんは、「一つの仕事にかける時間を切り詰めて余裕を生み出す」といい、「小さなムダな時間を省けば誰でも時間は生み出せる」といいます。秋山さんがこのことに気がついたきっかけは、ある町工場で工具を工具箱から取り出して使用後片付けるムダを省くために、全ての工具を壁につるしていることを知ったことでした。
そして最も大切なことは、「スケジュールを自分で決めること」だと言っています。
つまり、秋山さんの時間管理術を一言で言うと、「自分から積極的に時間を生み出す」ことに尽きるのです。
かのドラッカーも名著「経営者の条件」で「汝の時間を知れ」という章を起こし、①自分の時間の使い方を記録し、②ムダなことに使う時間を整理し、③そうして浮いた小間切れの時間をまとめることが、成果を上げるための時間管理の基本だと教えています。
今年から「働き方改革」が本格化します。
「働き方改革」のねらいは、「昭和的働き方からの脱却」です。「モーレツサラリーマン」が賛美され、「24時間働けますか」というCMソングが流行し、定時に帰るなど許されない空気であった「昭和的働き方」。実は、これは戦後の右肩上がりの経済の中、長時間労働で大量生産さえすれば会社の業績が伸びる特殊な環境ならではのものだったのです。
そのような時代は終わり、今や企業は新たな価値創造と効率的な生産性が問われる時代になりました。秋山さんがそうであったように、私たちも白山ならではの価値を、生産性を上げて効果的にお客様に提供し続けていきたいものです。お客様に選ばれる会社になることで、社員の皆さんにとっても残業代以上の収入増と自由な時間の両方が得られる、「真の働き方改革」が実現するのです。
<「ありがとう」が飛び交う会社に>
多くの皆さんは居酒屋やレストランに行って食事やサービスを受けたときに「ありがとう」と言いますね。おいしい食事や素晴らしいサービスに対して感謝の気持ちを表すのは当然のことです。
ではコンビニでお金を払った後、あるいはタクシーから降りるとき、「ありがとう」と言っていますか?ある調査によると、タクシーを降りるときにお礼を言う人は20~30人に一人しかいないそうです。あなたが「私は必ずお礼を言っている」ならば、あなたは20~30人に一人の素晴らしい人だということになります。
時々店員や駅員に怒鳴っているような人を見かけます。あるいはビルの清掃担当の人が入ってきても「ありがとう」どころか挨拶もしない人がいます。あたかもカネを払っている以上サービスするのは当たり前、自分が「上」で、サービス提供者は「下」だとでも思っているかのようです。
言うまでもなく生産者と消費者は対等です。消費者はまた何かの生産者でもあります。この両者が作る「経済(エコノミー)」という言葉は、みんなが幸せになる『共同体』を表わすギリシャ語の「オイコノミア」という言葉が語源です。
幸せな共同体、社会をつくるにはどうしたら良いか。
その一部はお金の循環であり、「経済」というときにはそちらの話に偏りがちですが、大部分は私たちの行動によるものなのです。一人ひとりが感謝の気持ちを持ち、「ありがとう」というマジックワードを伝える、というごく簡単なことで、幸せな共同体、社会「オイコノミア」ができるのです。「ありがとう」と言えば「ありがとう」で返ってくるし、怒りは怒りで返ってきます。それを止めるも広めるも私たちの行動次第なのです。相手が変わるのを期待するのでなく、まず自分が変わる。すべてが自分自身の行動によって決まるのです。
人の集まりである会社もまた同じです。
実際、池袋本社の清掃を担当してくださっている女性とエレベーターで話したら、わが社(5階)の全員がお礼を言ってくれると喜んでいました。人間、人に受け入れられて感謝されれば、その人のために頑張ろうと思うのは自然のことです。
彼女のように多くの会社をまわってサービスを提供する人こそ、「いい会社」かどうかを知る人です。決して口にはしないでしょうが、きっと同じビルでも「いい会社」と「ダメな会社」を見極めているはずです。その決め手はいかに多くの「ありがとう」が飛び交う会社かどうか、だと思います。
社内に「ありがとう」が飛び交う「いい会社」であり続けようではありませんか。
2020/02/07
文責 米川 達也