この度、VBLの支援をいただき、今回より連載させていただくことになりました。恐縮ではありますが、金沢大学出身の起業家として体験してきた"リアル"なところを発信 することで、起業を志す学生の参考になればと思い連載させていただきます。悪文多くお読みになりづらい点も多いかと思いますがお許しください。
私は1月に株式会社HeartLanguage(本社:石川県金沢市武蔵町、以下「当社」)を設立し、2月には金沢のキュレーションメディア「SHUKIN(シューキン)」のサービスを開始
しました(http://shu-kin.com)。本サービスは「金沢をもっと楽しく、もっと楽しめるように」というコンセプトのもと、金沢に暮らす人々が
知りたい、イベント・グルメ・おでかけ・ライフスタイルなどに関する地元情報を集めています。「スマホからサイトひとつ見るだけで、この街の楽しそうなことが発見できれば
いいのにな」と思って作りました(笑)
ほかにも、VBL主催アントレプレナーコンテストで受賞させていただいた、スマートフォンアプリの開発もおこなっております。
金沢のキュレーションメディアや現在開発中のスマートフォンアプリをはじめからやりたかったか、といえばそうではありません。起業家になる人は「その事業をやりたかった人」
と「単に起業したかった人」がいると思いますが、私の場合は後者でした。
起業を決意したのは、遡ること5年前の浪人していた時になります。「過去より今が一番良いと思いたい」私にとっては、まさに人生の一時停止をくらった気分。そこで人生と
職業について一度考えてみた時に、創造をカタチにする起業家が魅力的に見えました。バブル崩壊後に生まれた世代であり、ITバブルで興隆したインターネット企業の起業家たちが
当時カッコよく見えたのが原因かもしれません(笑)。ともあれ、どうせ努力して目指すならコレだと思えたのが起業家でした。そんな感じで起業を決意し、当社では
「DREAM and INNOVATION」をビジョンに掲げて、夢をカタチにすることで「今が一番良い」と思える社会をつくろうとしています。
起業をすることはすごく簡単です。個人事業の場合「起業しました」と事業届を提出するか、法人でも登記に必要な費用20万円ほどあれば、すぐにでも起業できます。
でも私は起業を決意してから実際に会社を設立するまでに5年かかりました。それまでに紆余曲折がありました。多くの起業志望の人にも会ってきましたが、私以外に起業した人は
今のところほぼいません。
「なぜ起業を決意してから5年かかったのか」「なぜ実際に起業した人はこれほどまでに少ないのか」ということについて話すことが、これから起業を志す人の参考になるのでは
ないかと思います。
理由を一言でいえば「起業してもどうすればいいかわからなかった」ので5年も起業できずにいました。起業を決意してからは、経営哲学、マネジメント、ファイナンス、
マーケティング、労務・法務・税務などの学習、さらには事業ドメインが決まれば、業界知識とビジネスモデル、実際のスキルといった具合に、起業するのに必要と思われる知識や経験を
獲得するのにかかった期間が5年間でした。
でも「5年間は十分条件であり必要条件ではない」というのが私の経験から言えることです。実際のところ5年間ひたすら起業家になるためのノウハウを詰めてきましたが、
どう経営していいのかいまだにわかりません(笑)。経験においては起業してみないことには身につくことはまずありません。そんな私が起業を決意してから、実際の起業準備に
入れたのは周りの勢いのおかげです。周りが起業を応援してくれたのがきっかけです。
起業家になる人には「その事業をやりたかった人」と「単に起業したかった人」がいると述べました。やりたい事業が具体的な人ほど、簡単に起業しています。一方で、事業より
起業したい意志の方が強い人は、まず起業のための学習に時間を費やしてしまい、頓挫する人が多いと思いました。
ここで「起業するのに一番大切なことは何ですか?」と問われれば、知識や経験、事業内容でもなく、私は「勢い」と答えます。この勢いってどうやってついたのかと振り返れば、
私は周りに「起業したい」と言っていました。言葉は言霊、あまりに多くの方に言い過ぎて引っ込みがつかなくなったからかもしれません(笑)ともかく、周りが勢いをもたらしてくれた
ことで、実際に起業することができました。
私は起業するまでにも本当にたくさんの方から応援してもらい、人の思いやりを感じました。それが何より起業して良かったと思えることです。そして、そんな方々の「毎日を
良くするサービスをつくりたい」といつしか思うようになりました。
起業はあくまでプロセスです。起業して成し遂げたいことは人それぞれ異なります。
起業を志していてもまだ紆余曲折している人は、周りに「起業したい」という意志を伝えることをオススメします。そうすれば、周りが起業に必要な知識や事業の可能性もアドバイス
してくれるはずですので。気がつけば、起業せずにはいられなくなっているはず(笑)この時代を良くしてくれる起業家がもっと増えると良いですね。
2016/2/22
文責 田中 瑞規