8.ベンチャーへの取り組みの問題点

8.ベンチャーへの取り組みの問題点

第4回全国VBLフォーラムに出席して

地図を持たずに無免許で車を運転か

 去る7月17日18日の両日、京都大学桂キャンバス ローム記念館(建物をロームから寄贈を受けたとのことでこのような名前がついているそうです)にて、全国のVBLの関係者約100人が参加して第4回VBLフォーラムが行われました(下図)。

 京都大学副学長 松重 和義 氏が開会の挨拶をされ、VBLは「次世代の産業の種となる先端技術の推進とベンチャー精神に富んだ大学の若手研究者を育てる」ために設置され、現在その総数は45大学になっていると現状を説明され。当VBLフォーラムは「各大学の現状や、大学発ベンチャーの紹介、今後のVBLのあり方など、情報交換の場を提供することを目的としている」とのことでした。

基調講演

 基調講演は以下の三テーマで行われました。

  • 新しいビジネスの創造のために  元松下電器産業(株)副社長 水野 博之
  • 中国のベンチャーから学ぶもの  創業支援推進機構理事長 紺野 大介
  • 大学発ベンチャーに必要な環境  (株)ドリコム代表取締役 内藤 裕紀

 元松下電器産業(株)副社長 水野博之氏は、現在の日本の好調の源は大企業の繁栄であり、このままでは新しい発想による事業展開が抑制され、日本の将来が思いやられる事態になる心 配されていました。また、現在国家戦略となっているイノベーションを「今あるものの新しい結合から成り立つ」(シュペンターの新結合理論)との立場から 下図のような例をいくつか取り上げ、ご自身の松下電器での経験と合わせ具体的に「イノベーション」について説明されていました。

 創業支援推進機構理事長 紺野大介氏は、中国のベンチャーの事業収入は2002年で日本の50倍であり、平均人件費が日本より低いことを考慮すると実質1250倍にも達する経済効果(雇用効果)があるとの説明をされ、日本のベンチャーの遅れに警鐘をならされていました。特に、事業の成果についての評価を第三者機関が行っていており、それを関係者が有効に利用しているところが効果を上げている理由ではないかとの指摘は、ともすれば評価が定量化されないでその上、内部もしくは関係者が行いがちな日本の文化に対する警告と受け止められました。どっちみち産学連携の成果は最終的には産業界の尺度で測られるのであれば、上流過程の産学連携の研究においても同様な仕組みを構築しておく中国方式の方が理にかなっていそうです。

 (株)ドリコム 代表取締役 内藤 裕紀 氏は、京都大学発のベンチャーであり、いまや産学連携を超えて、産学一体体制が必要とのプレゼンをされていました。その新鮮さとバイタリティーあるプレゼンは、出席者に感銘を与えていました。

パネル討論

 翌日(18日)は、

  • 文部科学省からの イノベーション創出に向けた大学発ベンチャーの新たな課題
  • 大学発VBのビジネスモデルの紹介
  • ベンチャーマインド教育

とプログラムが進みました。最後のパネル討論は、
横浜国立大学大学院環境情報研究院技術開発学 近藤 正幸 教授 がコーディネータをされ、
パネリストとして

㈱ヒューマン・キャピタル・マネジメント 代表取締役社長 土井 尚人 氏、
㈱トランスサイエンス 代表取締役社長 井上 潔 氏、
㈲生物振動研究所 代表取締役 桜井 直樹 氏、
日本新事業支援機関協議会(JANBO) 事務局長代理 梶川 義美 氏 、
(株)プロジェクトラボ 代表取締役 荻野 慎太郎 氏

が出席されました。

 コーディネータの横浜国立大学 近藤 正幸 氏より、大学発ベンチャーの設立は最近始まった現象である(1999年ころから増加)が、新聞記事の件数から見るとピークを過ぎており(2004年 から日経の記事数は減少している)一時のブームの時代は終わった。これからは実質的な活動が中心となるべきであろう(もはや研究もしくは運転資金と研究 もしくは営業スタッフ不足等については、自分たちで努力するようにと言っているのかもしれない)との状況説明がありました。その後パネリストからの報告 ならびに討論があった。

 報告と討論の印象をまとめると「ビジネスプランの検討が不十分であることと、それをこなすマネジメント人材の不足が根本的な原因で、そこからさまざまな問題が発生している」との指摘に尽きるように思いました。

 いわば地図を持たずに無免許で車を運転しているようなものである(これは筆者の感じたことであり、パネリストは誰も直接このようなことを言っているわけではありません:念のため)と言われている感じでした。目的地に到達できたら奇跡だとも取れる議論で耳の痛い話です。

2007/08/08 文責 瀬領浩一