2007年7月25-26日国際フォーラムにて日経ビジネス主催のイノベーションサミット2007が開催され、以下の講演がなされた。
「イノベーション25の実現に向けて」
イノベーション担当大臣 高市 早苗 氏
「構造改革 激動の5年半を振り返って」
慶応義塾大学教授 竹中 平蔵 氏
「危機を乗り越える経営」
吉野家ディー・アンド・シー 代表取締役社長 安部 修仁 氏
「JR東日本のイノベーション」
東日本旅客鉄道元会長 山之内 秀一郎 氏
「これが私の発想法」
岡野工業 代表取締役 岡野 雅行 氏
それぞれに面白く印象に残る講演ではあったが、ここではベンチャーに役立ということで、岡野工業様のお話から印象に残ったところを纏めました。
岡野工業 代表取締役 岡野 雅行 氏
岡野工業様は従業員わずか6人の会社です。しかしながら、携帯電話の小型化に貢献したリチュームイオン電池のケースから世界一細い「痛くない針」を開発するなど、数々のイノベーションを起こしてきました。世界的な技術力を誇る同社には名だたる大企業からの依頼が今も殺到してるようです。URL http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20060420/101500/?cd=ad&M=busi&KW=010519 で小泉純一郎首相、奥田碩日本経団連会長、米4大ネットワークの1つCNN、そしてイタリアの中小企業経営者。この4者に共通するものは何かというイントロで始まる記事でこの岡野工業が紹介されています。
痛くない針の実演を行う岡野社長
たとえば、痛くない針はと言って写真のように自分の腕に差し込む実演を行った。そしてその針の開発に至る経緯の説明があった。それまでに 痛くない針を考えたテルモはすでに、 1年かけて100社を回って製作依頼していたが、作れないと断られていた。テルモはたまたまトヨタ(江口)で相談をしているときに、岡野工業を紹介されたと言って、岡野を訪ねた。岡野社長は1時間話を聞いたあとで、出来ると答えた。
岡野工業が、このようなことが出来るのは、当社にはまだ「雑貨を作る技術」が残っているからだと説明されました。たとえば、大企業には「技能オリンピック」で優勝した人がいるがこの人たちでも出来ない能力が当社にある。それは技能オリンピックでは各々の技能が単独で競われている。しかし新しいものの開発は、複数の技能の組み合わせである。これは当社しかできない。これが当社の強みである・・と。
生産が成功したとき、テルモは特許をとってくれと言ってきたが、当社(岡野)には世界特許をとる費用はない。そこで費用はすべてテルモ持ち、権利は半々と言うことした。このあたりは大学の研究者の特許を大学で取ると現在大学のやり方に近いものがある。
開発は、針の形を作るのに半年かかり、漏れをなくするために1年かかった。このような仕事はスタートしたらやめられない。と言うことで製造を依頼しようと図面を渡しコーチしたが、なかなかものができない。さらに ものができても歩留まりが悪すぎて、ビジネスにならないとの事で、いまだに自社で製造している。ここも大学発ベンチャーが真似ていいやり方のひとつであろう。特許は持つ、同時にそれを実現するノウハウも持つ
7月26日には同一会場で日立ユーザー会の論文発表会がありました。
写真は、そこでの発表会の様子です。大会場での表彰、当選者にとってはさぞかし、晴れがましいイベントだと思います。
表彰のあと、本年の論文募集の要項が発表されました。3つの論文審査項目の3番目に、大学ではあまり、気にも留めないような表限度という項目がありました。以下に、その要綱から論文審査項目を帰しておきます。
独創度
最先端のIT技術を活用し、先進性が高いか。
新しい知見に富み、独創性が高いものか。
ユニークな構想またはアイデアで、多くの示唆に富むものか。
有効度
大きな効果または成果がえられたか。
応用性があり、他ユーザーへの参考度・適用性があるか。
将来大きな発展が期待できるか。
表現度
着眼点・論旨、起承転結が明快に記述されているか。
具体的かつ客観的で、読む人の立場でわかり易く、記述されているか。
論文として規定条件(枚数等)を満たしているか
大学の研究者には、そぐわない評価項目のようでもありますが、最終的には、企業の皆様との競争に耐えて、生きていかなくてはいけないとすれば、ベンチャー企業には避けて通れない関門です。出来るだけ早くこのような習慣(独創度・有効度・表現度)を身に付けていくことが重要と考えされた次第です。
2007/08/22 文責 瀬領浩一