テクニカルショウ横浜2008より(2008.3.5)
以前の「 大学をどこで売り込むか 」 でご報告したように、「CIC東京研究発表会」のポスターセッションで広島大学のコーナで「テクニカルショウ横浜2008」のパンフレットが配布され、広島大学も参加と書かれていました。そこで、CICに入居しているどんな大学が首都圏の展示会でどのような活動をしているのかを見ようと、テクニカルショウ 横浜2008の会場「パシフィコ横浜」を訪れてみました。今展示会のテーマは「世界を目指したオンリーワン技術」ということで、中小企業やベンチャー企業に焦点を当てて、先端技術をどのように獲得してきたか、もしくは獲得すればよいかを展示・紹介していました。
このショウには321社が398小間出展していました。出展小間数の約4分の1が産学公連携のブースで、そのまた半分くらいが、産学連携コーナでした。出 展大学機関は14ありました。外にも大学の同窓会あり、共同研究企業の出展ありで展示と大学や公的機関の参加が多い展示会でした。
肝心の広島大学の展示は以下の通りでした。
・リグノセルロースのエタノール生産水処理
・ナノ空間での組織化された超分子集合体の構築
・パルスデトネーション技術を用いた新内燃機関の開発
・色素ぞうかん太陽電池による光エネルギー変換技術の開発
・植林、森林の保全・管理によるCO2吸収評価
・2千度以上の高融点を持つ物質の結晶育成技術
素人目には難しいタイトルでした。
そのほかにも首都圏以外の大学としては、静岡大学が参加されて、大学の取組みや共同研究センターの紹介を行っていました。
展示ブースを歩いていると、金箔を並べたブースを発見しました。なんだか見たような商品と見上げてみると、「夢らく」さんでした。 鈴木社長自ら商品の説 明をされていました。石川県の会社がなぜ横浜に出展とあたりを見回すと、石川県ニュービジネス創造化協会会長の森岡吉男氏がいらっしゃいました。
森岡氏によると、首都圏での出展はそれなりの効果があるので、毎年出展されているそうです。今回も石川県ニュービジネス創造化協会として7ブース出展したとのこと、かなりのものです。ちなみに7ブースの出展者は以下のとおりでした。
・石川県女性交流開発協会
・株式会社 アルボカンパニー
・株式会社 ダイセー
・海の宝石 蜂屋
・石川県エコ・カルチャー共同組合
・夢らく商事
・有限会社 九谷古臣窯
全体的な雰囲気として、伝統志向・エコ志向という感じで、落ち着いた雰囲気でした。
金沢大学発ベンチャー企業の中からも、こんなところに出品できる会社が出てくれば最高だなと感じながら、ブースを後にしました。
特別講演の一つに、日経BP社 編集委員の丸山 正明氏による「経営に利く!産学連携のススメ」がありました。大学の産学連携に携わるものにも参考になることが含まれていましたので、その概要を紹介させていただきます。
以前は「世界の工場」といわれていた日本の企業モデルは、中国をはじめとする東南アジアの国々にその席を譲ることになった。そのため、「世界の工場」を支えてきた中小企業の役割もまた東南アジアにその席を譲ることになった。
そのような環境変化に耐えて、収益を上げるには規模の利益を追求し、世界の工場を日本の国に持ってくる方法も考えられるが、莫大な投資資金が必要となり 中小企業のとれる戦略ではない。そこで、これからの中小企業は、少子化により人材確保が難しいにも係わらず、高付加価値製品や部品の販売を狙ってハイテク 化と短寿命化に対応する必要がある。さもないと原料費の高騰、エネルギーコストの上昇を吸収して、低価格化は更に進む世界市場に競争力のあるコストで商品 を供給するためには、人件費を東南アジアの人々より安くする以外に方法がなくなってしまう。資本的基盤が充実していない中小企業も「イノベーション志向 の企業」に脱皮していくためには、独自技術は欲しい。しかし、そのための研究費の調達や人材採用がままならない。中小企業の対策として大学や公的機関と親 しくなるのが早道だと説明されていました。具体的には、科学技術振興機構の新技術説明会や大学の技術シーズ公開セミナに参加する方法がある。こうした産学 連携を有効に活用したらどうかというのが本講演での丸山氏の提案でした。
具体的な産学連携の成功事例として以下の3つのケースについて紹介がありました。
東北大学の 金属ガラス が元となって並木精密宝石とともに マイクロギヤードモータおよび圧力センサの量産化 に成功した例、
東京工業大学の大竹准教授と大田区の中堅・中小企業による DLC技術の実用化 の例、
大阪大学と土山産業、ロータスアロイ社などとの ロータス発泡金属 の例、
写真を見せ、具体的な話でリアリテイを持たせる講演でした。話の仕方を聞き見るだけでも参考になる見事なもの講演でした。
また大学とお付き合いするにあたっては以下の点に注意すること(ポイント)との忠告もありました。大学のコーディネータの心がける仕事そのものですが、わざわざ企業の人への忠告として説明されるとは、大学人として耳の痛いとことろです。
大学や公的機関とは対等にお付き合いする(言うべきことは言うこと)
共同研究を管理運営するプロジェクト管理者を置くこと(大学に仕事を渡しぱなっし、お任せにしてはいけない)
テクノプロデューサーによる企画・管理・運営(技術の分かる管理者がいなければ成功しない)
技術シーズの独創性と事業が成立するようにバランスをとる(技術独創性があっても事業化できないものは役に立たない)
2008/03/05
文責 瀬領浩一