44.ベンチャーならどうする

44.ベンチャーならどうする

-マシンツールフェアOTAに出席して-

マシーンツールフェアOTAとは

図1 マシツールフェア
マシツールフェア

今回は、9月8日(水)~10日(金)までの3日間、大田区産業プラザで開催された、「第15回マシンツールフェアOTA」(工作機械 関連産業総合展)に参加しての報告です。 

このフェアは財団法人大田区産業振興協会および日刊工業新聞社の共催によって行われました。主催者によれば本展示会の趣旨は、「わが国を代表する工作機械メーカー、関連機器メーカー、商社はじめ、大田区に拠点を持つ関連企業が集い、新鋭の加工機械、関連機器、ソフトなどを一同に展示します。また独創的な技術を誇る大田区内企業も新製品、新技術を展示します。全国でも有数のものづくり産業の集積地である大田区から、最新技術や新製品などを紹介・発信し、産業振興に寄与していこうというのが狙いであり、工作機械関係者はもちろん、地元の中堅・中小企業関係者らが多く集う展示会ですので、出展者、来場者が相互に情報を交換し、密度の濃い商談が活発に行われることを願っております。」とのことです。

会場の大田区産業プラザ(通称PIO)は、東京都大田区の京浜急行蒲田駅のすぐ近くです。建物は国道15号線(通称第一京浜)に面しており、その大きな道から見えるように、図1のような看板が立っていました。

展示会場の様子

図2 会場 

会場

図2 は展示会場の様子です。ここに参加されている企業及び組織は
●工作機械及び関連製品
●機械器具・部品・材料
●金型及び関連製品
●自動化・省力化(FA)機器
●制御機器及び関連製品
●検査・測定機器
●工場内環境設備機器
●そのほか機械関連機器及び関連情報
です。

これらの会社は、ブースで自慢の商品を展示されると同時に会場の各所に設けられた商談コーナー(手前の赤絨毯)で商品のご説明をされていたり、別途4階の商談会場でブースを訪れられた方々との商談をされていました。この不況の折、マシーンツールのような地味な展示会、どれくらいの人が訪れられるのかと思っていましたが、そんな心配をするまでもなく、各ブースは図2のように盛況のようでした。

他にも、次のような併設イベントが開催されました。
9月9日には環境セミナー「環境経営システム構築のすすめ」~ムリ・ムダ・ムラを無くしコストダウン環境経営でサービス品質・経営品質を改善し業績向上を~、
9月10日には 知財セミナー 「守りと攻めの知的財産法入門、 
9月8日には記念講演会 「機械安全の取り組み強化で競争力を」 ~ 揺るぎないものづくり安全への提言~ 等が開催されました。

記念講演会「地球環境に対応した"ものづくり"のあり方」

図3 自動車の環境対応策

自動車の環境対応策

9月9日に行われた記念講演会は 吉村 博仁 氏を講師とする「地球環境に対応した"ものづくり"のあり方」 ~ 自動車・部品メーカーの技術課題について~ でした。志村氏は大手自動車メーカー勤務などを経て現在の新潟大学大学院技術経営研究科教授をされています。 大学では地球環境に配慮した加工法の研究に従事されているとのことです。講演の随所で、略歴を生かした、自動車の将来動向や製造方法の説明をいただきました。

講演のの概要は次の通りでした。
1 製造業の地球環境への対応
  1.1 地球環境に対する社会的な要求
  1.2 循環社会のためのライフサイクル設計
  1.3 自動車メーカーの地球環境対応
2 自動車・部品メーカーの課題
  2.1 自動車メーカーのグローバル競争
  2.2 部品メーカーの対応と戦略

お話は、世界のGDPに占める日本の役割の低下からはじまり、日本の製造業の置かれた立場、自動車産業が環境にどんな影響を与えているかそしてそこで発生する課題と部品業界の対応と、だんだんと具体的な話へ進んで行きました。中でも私の印象に残り、面白かったのは次の2点です。

第1は「自動車メーカーの地球環境対応」の中にありました。図3は自動車技術会のテスティングツールに載っている石油代替エネルギーの比較図とのこと、これは天然ガス、合成液体燃料、バイオ燃料、電気、水素の各燃料を航続距離、CO2排出量、供給量の3点から評価したものです。 この図を見る限り将来は電気自動車に移行というようにも見えません。講師によれば、まだどこに向かうかは確定的ではないと のことです。

第2は、部品メーカーの対応と戦略」の中にありました。 講師はこのセミナーには大田区の中堅中小企業からの参加者参が多いと の前提でとくに部品メーカーを取り上げ次の5つの点 について説明されたものと思われます。
1 自動車メーカーとの関係については、部品メーカーが今後も大企業の下請けで行くのか。もし、自立するつもりなら、そのための提案力をどのように磨くのか。
2 イノベーション戦略では最近は「プロダクトイノベーション」が重要だとの風潮が多いが、中堅・中小企業にとっては「プロセスイノベーション」を考慮し た「プロダクトイノベーション」を考えないと競争力を保てない。
3 コア技術戦略について、経営資源の限られた中堅・中小企業では過去の強みを生かし重点志向を目指さないといけない。
4 アライアンス戦略では、今後は資本力を中心としたアライアンスから技術力を中心としたアライアンスへ変っていくだろう。
5 そして、最期に意識の変った大学と上手に付き合っていく産学連携も有効に利用すべきだ
とお話をされました。

参考にされた文献たくさんありましたが、部品メーカーに参考になるものとしては
中小企業の技術経営(MOT)と人材育成」中小公庫レポート2005-6( URL http://www.c.jfc.go.jp/jpn/result/c2_0506.pdf)や
大手自動車 メーカーの中国進出と中小部品メーカーへの影響と対応」中小公庫レポート2002-2(URL  http://www.c.jfc.go.jp/jpn/result/c2_0202.pdf)
にはこのあたりの詳細が事例を交えて報告されています。ともすれば、大企業の成功物語に陥りがちの、「イノベーション論議」が多いなかで、積極的な合理化路線を走る大企業に振り回され勝ちな中小企業はどのように対応するべきかを、お話されていたように思われました。


ベンチャー起業の立ち場で考えてみよう

図4 ベンチャーならどうする

ベンチャーならどうする

こうした制約の多い中で、部品メーカーがの自動車メーカーとの付き合うためののアドバイスを聞きながら感じたことは次の通りです。現在のようなこんな不確定な状況であれば、ベンチャー企業でも 既存中小企業と渡り合えるチャンスがあるかもしれない。そこで、講演の中で強調されていたアドバイスを参考に、次のような方針でベンチャー型部品企業について、考えてみました。
①既存の部品企業が変わるために努力しなければならないことは、初めからベンチャーの強みと捉える。
②中小企業の過去からの強みとして持ってきたコア技術戦略の部分は ベンチャーのアライアンス先として活用する。
③大企業ですら読み切れない技術動向の部分はセグメント化したマーケットのベンチャーの狙い目と考える
④大企業 の特徴を生かし切れないモジュラー設計を基本に考える。

取りあえずこの段階で整理出来たポイントは図4に示した次の8点です。

ファブレス
重要部品以外は、自社では製作しないことで、資本負担の少ないベンチャー向きの、組織を柔軟に変更できる会社構造とする。

電気自動車
いろんな、燃料の可能性を検討したり、どの方式が主流になるかわからない中で、大企業のように、これまでの自社資産を守りながら新しい可能性を追求する必要がないベンチャーは、 取りあえず電気自動車に集中する。
技術的参入障壁の低い構造の簡単な電気自動車から始める
性能は悪くても、容易に入手可能な原材料を使う(資源戦争に巻き込まれないこと)

輪廻
新しく事業を興す自動車のイメージを一言で表してみました。
初めからライフサイクル設計を行い、一度に全体を捨てるようなことのないようにする。
古い自動車の部品は次の自動車の一部として生き返る。(合体ロボットのイメージ)
性能と効能の分離

モジュラー設計
基本構想に従ってアーキテクチャー設計を行う
ある程度形がついたらオープン化
標準化を目指す

人材ネットワーク
卒業生等に誘いをかけ、経験者の技能を有効利用しコア技術を補強する

どこと組むか
人材と技術情報が最大の資産であるので、産学連携に力を入れている大学と
自動車を取り扱ったことのない流通業と組む

デザイン&マーケティング
ユーザーを限定して、最適設計を行う。
現行の自動車でなく、移動要求を満足させるビジネスとする。

大学発ベンチャー
基本技術は大学にベンチャーはその応用に特化する。
ニーズを明確にして大学のシーズを利用。
移動ビジネス業界に新規参入。

図4は、マシンツールフェアOTAに出席して、吉村氏の講演を聞いての私の感想です。こうして、展示会や、講演をお聞きした後、 感想を整理しておくのも、何かの役に立つかと思い、魚眼曼荼羅風に1枚の絵にまとめています(ダウンロード)。ご興味ある方はご参考までに。こうして整理してみるとひょっとしたらやってみる 価値があるのではと思えてくるから不思議です。思いついたことは見える化しておくのもいいかもしれませんね。 

2010/09/14
文責 瀬領浩一