65.ITCで本業力の活性化

65.ITCで本業力の活性化

-創業フォーラムin Kawasakiに参加して-

 

2012年7月28日(土)13:30~16:30に川崎市産業振興会館 9階第3研修室にて,創業に関心を持つ方を対象とする「2012創業フォーラム iin Kawasaki ―創業するためのインターネット活用―」というセミナー が行われました。  このフォーラムでは、創業にあたり、本業についての技術を徹底的に磨くことの重要性と、 それをマーケットするための最新のIT技術の利用方法について、事例をベースにご説明いただきました。  以下その報告です。

「小資本で始めるIT経営」

第1部は株式会社:スプラム(ホームページ::http://www.spram.co.jpホームページ::http: //www.spram.co.jp/の代表取締役で中小企業診断士の竹内幸次様による講演「小資本で始めるIT経営」でした。

竹内氏のプレゼンの様子
図1 竹内氏のプレゼンの様子


講演ではITというよりITC、しかもその代表的な機能であるインターネットをマーケッティングに使うとどのような事が可能になるかの お話を頂きました。  ご自身のホームページを使って自己紹介されただけでなく、ご自身のインターネットシステム使用方法をもとにお話をされました。

写真はその様子です。 プレゼンツールもよく使われるPowerpointではなく、PDF化したファイルに マウスで自由に文字や直線、曲線を描き込んでいく方法でした。  またPDFファイルのコピーは参加者に配られ、参加者はその上に自分に必要と思われることを描き込んでいくという方法でした。  私もPDFファイルを利用して、プレゼンを行うことがあるので、何か参考になるものは無いかと興味津々で聞きました。


お話の内容は以下のようなものでした。
1. 変化するインターネット環境
  (1) インターネット普及率
  (2) スマートデバイスの普及状況
    ①スマートフォン
    ②タブレット
2. Webマーケティングツールの特徴
  (1)ホームページ
  (2)ビジネスプログ
  (3)ツイッター
  (4)SNS(Social Networking Service)
3. フェイスプックの概要
  (1)基本は「自宅近くのカフェサロン」
  (2)フェイスブックとFacebookページの違い
  (3)プライバシー設定
  (4)フェイスブックの基本的な操作

この後は竹内氏のご説明のうち興味を引いた部分をまとめてあります。


インターネット普及率

人口に対するインターネット普及率
図2 人口に対するインターネット普及率(色が濃いほど普及率が高い)

欧米、アメリカ、日本等はインターネットの普及率は高いが、各国の人口が違うのでマーケットサイズに関係しそうなインターネット利 用者で統計を取ると、日本は中国(4.04億人、普及率30.3%、2010年)、アメリカ(2.34億人、普及率76.3%、2009年)に次いで世界 で3番目(0.96億人、普及率75.5%、2009年)となるそうです。  また世界人口約70億人の約26%となる約18億人がインターネットを利用しているとのことです。

IMFの統計によれば日本の世界のGDPに占める割合は米ドル換算5.9%で、ピーク時の1994年の17.8%に比べれて急激に減少 している。  更に本年度の成長率予測も世界は3.9%、それに対して日本のGDP成長率は1.5%である。 日本企業は自分の付加価値を利用して、世界に出て 行く時期かもしれないとのお話でした。

幸い、日本はインターネットの普及率では世界的にも進んでいるほうです。  ここで鍛えられた技術を世界に出て行くときに使わない手は無い。  この時、役にたちそうなものに、次に記した機能をもったGoogleグローバルマーケット ファインダー というのがあるので使ってみたらどうですかとの紹介がありました。

ホームページはネットで翻訳

グローバル マーケット ファインダーでは、商品やサービスを表すキーワードを入力し、開拓しようとしている市場や地域を選択するとキーワードが各地域の言語に 自動翻訳され、各地域名から収益の公算の高い順に表示される。 この順位は、翻訳後の各キーワードの検索ボリュームや現地での推奨入札単価、競合状況に基づいており、その結果 から、地域間の需要の比較、新しい市場で広告掲載を開始した場合の費用、特定の市場の競合状況などを分析できる。  地域はEU、G20などの地域区分や、南北アメリカなど国別から指定できる。  また、ツール提供にあわせて海外でのビジネス展開に役立つグーグルのツールをまとめた「Google海外進出企業向け広告サイト」を公開。 海外進出企業向けのGoogle AdWordsの活用方法、AdWordsを活用して海外進出に成功した企業の事例など、 海外進出に役立つさまざまなガイドやツールを利用できる(出典 google)。  とあるのでご興味ある方は詳細をホーム等で調べて役立ててください。

一方、国内のマーケットに目を向けると現在スマートフォンの利用者が最も多いのは25歳から34歳まででこのグループだけで全体の25%を占めている。  次いで多いのが35歳から44歳まで、両者を合わせると48%と役半数となる。  更に今後は65歳を過ぎた団塊の世代の退職とともにシニア層のネット ワーク利用が増えそうである。  その時の使用例として画像通信が電話に代わって増えてくるかもしれないと、聴衆を巻き込んでiPADを使った実演もおこなわれました。

Webマーケティングツールの特徴

次の図はマーケティングツールとしてホームページ、ブログ、ツイッター、フェイスブック等を使った時の位置づけを、竹内氏が画面に書か れたものを参考に、私がメモったものです。 

ホームページ、ブログ、ツイッター、フェイスブックの役割
図3 ホームページ、ブログ、ツイッター、フェイスブックの役割

配布された資料ではこの部分はブランクのままとなっており、講演参加者は画面を見ながら自分で書き込んでいくようになっていました。  参加意識を高める面白い方法と感心しました。 よくこんな細かいものをマウスで書けるけるものだと感心しながら、配布資料に描き込みました。 そのためいく分間違いがあるかも知れません。

ホームページの働きは、売り買いの立場は逆ではあるが、セールスマンが訪れるのを待っているお客の家に似ている。 この絵でホームページは、誰か訪れてくれなければ何も始まらないところが同じだということを表現しようとしています。 一方フェースブックは自宅のそばで開業しているカフェサロン(ホームページの入り口)のようなものである。 そこにブログを設けるのはカフェサロンに小売の棚を設けるようなものである。 これにより顧客数を10倍あるいは100倍に増やす可能性があるなどというお話をしながら、図や文字を描き込んでいかれました。 大変な操作スキルです。よほど慣れていないと、お話を中断させないで描き込むことなど出来ません。

更に、話はフェースブックに移りました。 世界のフェースブック利用者は9億人と、世界のインターネット利用者18億人の約半分、地球人口70億人の 10%以上に達しているのに、日本のフェースブック利用者はインターネット人口の2%くらいで世界の50%に比べると非常に少ない。 そのためか、日本では、まだフェースブックの重要性があまり認識されていないかもしれないが、 外国人向けのビジネスをやるなら、採用したほうがよさそうですとのお話でした(フェー スブックに注目しよう)。

特に、個人用のファースブックに加えて、会社用のfacebookページというのもあるそうで、こちらを使うとgoogle検索の対象になるほか、国別閲 覧制限、固定表示、予約接続機能もありますよと言われ、その実演も頂きました。

その他にも、音声によるデータ入力も見せて頂きました。  あまりにも多くのことをお話頂いたので、どれがどのアプリの機能かでさえ定かでなくなってしまいましたが、インターネット(Web)を 使って出来ることがいろいろあることだけは分かりました。  いずれにしても、現在のインターネット(Web)は機能が多くなりどんどん変わっていことけをひしひし感じさせられた講演でした。  その上インターネットのアプリケーション費用は無料か経費のあまりかからないものが多そうです。  それなら今後の創業にあたって使わない手はありません。 

問題は出来ることが多く、技術が更にあまりにも早く進歩していることです。  考え方としてはまず仕事を遂行する上で必要な機能を定義して、それを 最も簡単に満足させそうなアプリを選択 、そのアプリの現在利用可能な機能をベースとしてより深い使い方を考えるようにしないと限りがありません。

パネルディスカッション

第2部は「まわりと連携成功するための起業」 をテーマとした パネルディスカッションでした。

パネリストは基調講演を行った株式会社:スプラムの代表取締役 竹内 幸次氏、English Plus 代表の神野 新太氏 、株式会社ホワイトウルフ代表取締役社長の前畑 剛氏、コーディネータ は竹内 幸次氏でした。

パンフレットでの紹介によると 竹内 幸次氏は中小企業診断士、経営士、イベント業務管理者、1級販売士
大手企業広報部勤務を経て、32歳で中小企業診断士として独立。  以後全国の起業家、中小企業へのコンサルティングは1,500社、創業塾・創業セミナー、経営革新塾の公演、講師実績は全国で1,200回に及ぶ。  そのわかりやすい講義と受講生との人間味あふれるふれ合いには定評があり、高い受講者満足度を誇る。  テレビやラジオにも出演し、ブログではYahoo,Googleで常に全国で1位であり、週刊アクセス数20,000以上で注目度が高い

English Plus 代表 の神野 新太氏は英語講師 (TOEIC970点、TESL - 英語教授法資格) 2011年10月、東京・田町にて"英語を楽しめる"をコンセプトとした英語学校+英語環境カフェ+留学サポートのビジネスを スタート。  カナダでの語学留学・就職をきっかけに、英語講師の道を志す。  日本の大手英会話学校で教務主任、語学専門学校での講師などの経験を経て、30歳で独立。  生徒の実力を引き出すことをモットーとして独自のカリキュラムに基づくレッスンやサポートを提供。  2010年の川崎市商人デビュー塾受講の際に立ち上げた英語講師arataのブログも着実にアクセス数を伸ばしている

株式会社ホワイトウルフ 代表取締役社長の前畑 剛氏は2011年度かわさき起業家塾生。
 明治大学理工学部卒。縮小を続ける音楽CD市場を根源から活性化し、新しい音楽業界の創造と文化の普及に貢献するべく2007年に起業。  現在、川崎市内でレコード会社/芸能プロダクションを経営。  PRアイドル事業として「川崎純情小町☆」を立ち上げ、川崎市内の名産品やものづくりブランド製品、イベントや企業などのPRに力を注いでいる。  このPRアイドル事業は平成24年度川崎市イメージアップ事業に認定されている。  表現社(常に発信していく企業)として、この時代に生きる人々に大きな影響と感動を与えられる様な『唯一無二の企業』を目指していらっしゃるとのこと。

パネルディスカッションはまず3氏の起業に至るまでの経緯の話から始まりました。  お話は、創業のキーはあくまでも本業で競争相手に負けない、圧倒的な 実力をどのようにして確保したか、そのための苦労話が中心でした。  竹内氏はコンサルティングや講演にIT技術を使ったお話でIT技術は本業に直接役立ちそうですが、 その他の2人にとっては、TOEICスコアー970点とか、公的機関の認定事業にノミネートされるレベルのイベント演出力が本業の力のはずです。

フォーラムの後、英会話ビジネスの将来性はどのようなものかと、TOEICの成績を企業がどのように利用しているかを検索してみまし た。  その中からを750点以上に限って表1に転記しました。

表1 起業におけるTOEICテストの利用状況

900点  松下電器(国際広報担当)
サムスン(新入社員足切り点数)
860点  富士通(海 外出張が頻繁にある営業・技術者)
三菱商事(社内留学条件)
850点  NTTコミュニケーションズ(新卒採用)
800点  日立製作所 (経営幹部候補)
KDDI(事務職・技術職の配属・異動の基準スコア800点以上)
韓国HYUNDAI(新入社員足きり点数)
LG電子(新入社員足きり点数)
住友不動産(採用条件)
野村不動産(採用条件)
日本マクドナルド (海外赴任条件)
750点  三菱商事 (課長クラス昇格条件)
三井物産(入社3年以内に750点以上)
丸紅(入社5年以内に750点以上)
楽天(上級管理職昇格条件)

 出所@TOEIC(R)TestClub (http://www.toeicclub.net/requirement.html)

表1をみると、海外赴任の条件や、昇進条件以外に、新入社員の採用条件や足きり条件(上表赤文字)にTOEICの点数を取り入れている企業もある ことがわかりました。  その上に韓国のサムスン、LG電子、HYUNDAIと言った、グローバル社会で元気な企業がTOEIC800点やTOEIC900点を 新入社員の足切り条件にしているのが光ります。  日本でもNTTコュニケーション、住友不動産、野村不動産といった、グローバルビジネスを狙う会社では採用条件に高得点の英語能力を 条件とする企業もあります。  このような傾向が続けば、English Plusのような外国語学校には、今後ともビジネスチャンスがあることは確かです。

800点、900点を狙うスクール生を顧客とするのであれば、英会話学校の講師のスキルもそれなりのものでなければいけないのは 当然です。  こう考えると、神野氏のTOEIC970点も教師の資格としては当然なのかもしれません。  しかし、TOEICの満点は通常990点だったはず、私には夢のようなハイスコアーです。  そこで、TOEIC970点とはどれくらいすごいのかと調べてみました。   TOEIC公式データ(http://www.toeic.or.jp/toeic/data/data_avelist.html)の第171回 (2012年6月) 69,252人のケースではTOEI895点以上の方は2,046人 受験者の3.0%ということは分かりました。  しかしTOEIC970点のデータはありません。  同データの平均スコア 578.0点 標準偏差 166.8点を使って受験者の点数分布は標準分布に従うとして無理やり計算すると、 970点以上は全受験者の2%弱になりました。  先の985点以上3%のデータを考えると若干腑に落ちない数字ですが、いずれにしても英語に関心がある受験者の中で1~2%くらいであることは確かで す。  この実力を身につけるために、神野氏はカナダに留学、国内で語学学校での教師、 そしてもう一度留学してその後に起業したとお話をされていました。

こうなると起業準備の苦労は並大抵ではありません。 ロンドンオリンピックの出場選手と同じです。  起業資格(出場資格)は本業での才能と努力で 決まるようです。  そのような前提資格を手に入れた人にとって、競争力強化の手段の一つとしてIT技術が役に立つというのが今回の教訓でした。  今回のオリンピック女子バレーの佐々木監督が使ったiPADと同じかもしれません。

また、今回のフォーラムのテーマである「創業するためのインターネット活用」についても、 同社のホームページEnglish Plus(http://e-plusweb.com/)のトップページに以下のようなリンクが張られていました。  まさに今回の基調講演で竹内氏がお話されていたITCのすべてを実践されている会社です。  これからホームページを作成される方には大変参考になりそうです。
メール : info@e-plusweb.com
ブログ : http://blog.goo.ne.jp/artismart/
ツイッター : http://twitter.com/artismart
Facebook : http://www.facebook.com/englishplusjp

そして本業の力は、現業をこなす中で鍛えられるも のであることも3氏に共通の事項でした。  創業を目指すもの、まずは注力すべきは本業というところでしょうか。  昔の言葉でいえば、まずは丁稚奉公や武者修行で技量を磨くということになります。  IT技術もまた重要ですが、本業での競争力を手に入れた人が人脈の中 にITのプロを確保し、 適宜相談というほうがよさそうに思えました。

川崎市の創業支援

第3部は創業支援メニューのご案内ということで公益財団法人川崎市産業振興財団様 より川崎市の起業支援についての概要のご説明と 起業資金調達の援助等についての概要説明をいただきました。

そして、川崎市の中小企業の方々や創業を目指す方々へのサービスメニューのパンフレットの配布に加え、 創業じっくり相談窓口、創業支援式のご案内、借入申込書、川崎起業塾の案内も行われました。

今回のフォーラム参加者で、起業に自信を持った方をサポートする体制は十分整っていることをうかがわせるに十分です。  本業の力があって、起業したい人は川崎に集まればなんとかなりそうです。


なお、創業の一般的手続きの概要についてお知りになりたい方は 中小企業庁 「夢を実現する創業」 (http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sogyo/manyual_sogyo/18fy/index.htm)  もしくは日本政索金融公庫 「創業の手引き」 (http://www.jfc.go.jp/k/download/shinkikaigyo_110622.pdf) もご参照ください。 分かりやすい資料がダウンロードできます。


2012/08/14

文責 瀬領浩一