2016年11月09日に「麻生区の廃棄物減量指導員施設見学会」がおこなわれました。「廃棄物減量指導員」とは、川崎市の町内会、自治会などの住民組織団体から推薦を 受けて、川崎市長が委嘱し、地域で次の活動をしているボランティアリーダーです。
1.ごみ減量の普及啓発に関すること
ごみの減量の重要性とその効果、また、具体的な減量方法についての普及啓発。
2.リサイクル活動実践の指導に関すること
地域で行われている資源集団回収や、フリーマーケットなどのリサイクル活動の活性化に努める。
3.排出方法の順守指導に関すること
地域住民の皆さんに対し、ごみの分別方法や排出日の順守についての指導。
4.廃棄物行政に関する意見及び情報の提供に関すること
廃棄物減量指導員連絡協議会の会議への出席、地域住民の皆さんの廃棄物行政に関する意見・要望や地域環境美化に関する情報の提供。市のアンケートへの協力。
私は、「廃棄物減量指導員」ではないのですが、担当指導員の都合が悪く、今回は私が代理で出席しました。
ゴミ出しといえば以前は、家庭のいらないものを燃えるものと燃えないものそして時々出る大きいものの3種類にわけて指定された曜日に出すだけの簡単なものでした。 しかし最近はだんだん分類が細かくなり、たとえば私の住んでいる川崎市では、図1「資源物とゴミの分け方・出し方」にあるように8つとなりました。このため分ける 基準も複雑になってきました。それでも今までは「資源物とゴミの分け方・出し方」を参考に、家から出るゴミを、この本に書かれている指定された日に、きめられた場所に 持っていくだけで、あまり深く考えていませんでした。ただ、毎週出すような日用品以外の不用品を処分する時は「資源物とごみの分け方・出し方」を見ても、どの分類に 入るのが分からなくて、生活環境事務所に電話して、教えていただくこともありました。
しかし、廃棄物処理はものづくりプロセスの中で 資源→原料→製品→利用 のあとにくる最終プロセスです。この際その舞台裏がどうなっているのか見ておこうと 興味津々で参加しました。
最初に見学したのは「横浜市資源リサイクル事業協同組合」が運営する「リサイクルポート山の内」でした。この施設には横浜市内の家庭や事業所から出された古紙や 古布などが集められます。これを資源としてリユース(再使用)、リサイクル(再資源化)するための前準備として梱包を行う施設です。そのために、集められた古紙や 古布から、目的に合わない不純物を取り除き、資源にとして再利用できるところだけを取り出し梱包し、輸送に備えるのが主要な仕事です。
工場は中央市場前というバス停の近くにあり、海際で向こう側にはパシフィコ横浜や横浜グランドタワーが見える素晴らしく気持ちの良い場所にありました。古紙や 古布の振り分け梱包を行っているところを除けば整理整頓も行き届いた大変綺麗な工場です。
工場内には、持ち込み時と退出時にトラックの重さを図る重量計、古紙の中から不要なものの取り出しを機械や人で行うためのコンベア、よ り分けたものを圧縮 し梱包する機械。仕分けを行ったものを集積場所に運ぶパワーシャベルといったものが主な機械として使われていました。工場内で場所をとっているのはこうした機械で 仕分けされた古紙や古布が山積みされている在庫置き場とパワーシャベルやトラックが行き来する鉄板の敷かれた通路でした。
工場に持ち込まれた古紙のパッケージはパワーシャベルで図2の右奥にある青いケースの中に入れられます。ここに入れられた古紙は図2の奥の柵の中に入れられ ベルトコンベアで一番上に行きそこから分別用のコンベアに落とされます。それを人が見ており、自動分別に不適合なもの(異物)を取り出します。残された古紙から軽い ものは風で吹き飛ばし一箇所に集め、その他のものは別の場所に集められるといったことが行われます。こうして軽い紙と重い紙といったように品目毎に分けられた紙の山 出来ます。あとはそれぞれ別のところに持って行き積み上げておき、ある程度溜まった時に、プレス機で押し固め梱包します。
そして、図3のように用途ごとに纏めて、ひとかたまりの梱包として保管されます。後ほどそれらは下表のように分別されて用途に合わせて、必要な業者に向けて 出荷されます。
この組合は1992年に75社にて設立され平成5年から選別作業の受託を開始しました。さらに1994年からは自社製品の販売を開始しました。図4にあるように、現在は 横浜市内のリサイクルを事業とする会社(123社)で組織されています。ホームページからはブログ、月間情報誌、日記、出前講師申し込み、フォーラム等各種の情報を 見ることができます。ご興味のある方は図4をクリックして覗いてください。
この組合は、横浜型地域貢献起業(再上位)認定、ISO14012004認証取得、官公需適格組合認証取得、プライバシーマーク取得といった各種の資格や認定をとって おります。このため、各事業者は自分でこのような資格をすべて取っていなくても必要なときには組合名で仕事を進めれば良いわけです。このあたりは「ミニ起業家」を 目指す人には参考になる方法です。
現場見学のあと「始めよう3R夢(読ガナ:スリム)な暮らし」の お話をお聞きしました。3Rとは見学で見た「古布」のリユース(Reuse:再使用)、「紙」のリサイクル(Recycle:再資源化)にリデュース(Reduce)を加えたものですと、 一般的な説明から始まりました。
ところがそのあとは、単にお話をするだけでなく、横浜の分別ルールに合わせた廃棄ボックスを前の机の上に並べ、多くの参加者にごみのサンプルを渡し、各参加者に 適切と思う廃棄ボックスに入れさせました。その後各廃棄ボックスの中に入れられているごみを見せながら、ここにこれを入れるのは正しいとか、これは間違いですが 正しい入れ方はこうですと済まされるところを、話を聴いている人に自分で考えさせ、行動を起こさせ、ほかの人の部分も含めて検証しながら廃棄物減量の面倒くささと、 そのための知識不足を体験させる良い方法と感心しました。ただ、川崎市では図1にあるように8区分に分けて出すのに対して、横浜市では9区分でした。そのために戸惑った 人もいたようです。リサイクル、リユースについては、市で決められた区分や処理基準に従ってきちんと出す必要がありますが、基本はあまり変りがないことも わかりましたので地域の「資源物とゴミの分け方・出し方」等に合わせていけば良さそうです。まさに「廃棄物減量指導員」が当然知っていなければならないことを、 皆で体験し・共有する素晴らしいお話のすすめかたでした。
しかしながらもっとも大切なのは、皆さんが今回見学した「リサイクル」ではなく「リデュース」すなわちゴミを減らす事です話が飛びました。頂いたパンフレット 「始めよう3R夢(スリム)な暮らし」には、「リデュース」のためには、 横浜らしくかっこよく、
1.お気にいりを大切に長く使う。
2.必要なものを必要なだけ買う。
3.最後まで無駄なく使う。
4.ゴミを出す前に他の使い道を考える。
5.繰り返し使えるものを選ぶ。
6.すぐゴミになるものは受け取らない。
といった工夫をしながら、自分なりの「もったいない」を楽しむ暮らしをめざし、「出来るところから少しずつ広げていくことが大切です」。と具体的な3R行動の例を 16ケースばかり上げてありました。さらに自分が取りたい行動にチェックを入れて、どれだけゴミを減らせるか計算してみてくださいとなっていました。これにより、自分は 1日何グラムゴミを減らせるか計算できます。
といった工夫をしながら、自分なりの「もったいない」を楽しむ暮らしをめざし、「出来るところから少しずつ広げていくことが大切です」。具体的な3R行動の例を 16ケースばかり上げてありました。さらに自分が取りたい行動にチェックを入れて、どれだけゴミを減らせるか計算してみてくださいとなっていました。これにより、 自分は1日何グラムゴミを減らせるか計算できます。
基本は不必要なものは使わないということです。
さらには、経済産業省の「資源循環ハンドブック2016法制度と3Rの動向」(p31)に よると、これらのリユースやリサイクル作業にかかる費用は、リユースやリサイクルによって得られる収入だけではカバーできない方が多いようです。
面倒なリサイクル処理の現場を見せ、ごみを分別して出すことの大切さを認識してもらい、その上で市民として本当に大切なことは、ゴミになるようなものは使 わないすなわち買わないことと言ったわけです。ほかの多くの人が持っているものは自分も持ちたいが、自分だけしか持っていないものも沢山持っていることが幸せだ という考え方をやめようと言っている感じです。まさに「大量生産大量消費時代の終り」が始まってきている ように感じました。ここまでは紙を中心にしたリサイクルです。
つぎに見学したのは日本で数少ないケミカルリサイクルによりペットボトルからペットボトルの原料を製造する、川崎市にある「 ペットリファイリングテクノロジー社」です。
ペットリファイリングテクノロジー社はペットボトルを化学的に分解し、異物や色素を取り除き、従来のペットボトル用樹脂と同等の品質を有する樹脂を製造します。 図5の写真はこの会社を原料搬入口から撮っていますが、見てお分かりのように通常の化学プラントと何ら変わるところがありません。違いは原料が石油ではなく、 ペットボトルであることだけです。化学プラントとして、技術が確立し、設備がそろえられると残る問題は原料となるペットボトルが採算の取れる価格で必要な量だけ (設備費の回収ができるだけ)入手出来でき、採算がとれる価格以上でペットボトルの材料やペットボトルといった自社の製品を購入する会社があるかどうかです。
同社の前身は2001年に株式会社ペットリバースとして設立され、2004年に事業資金100億円で創業を開始したが2005年には民事再生法の申請、2006年に再生手続は 終了しました。同年はペットボトルの再生樹脂を製造したが2008年には破産宣告を受けました。同年東洋製罐株式会社に事業継承され「ペットリファインテクノロジー 株式会社」という名前で設立され、2009年から操業を開始し現在に至っています。この例が示すとおり、リサイクル会社の経営は、熱意と、技術があっても何らかの支援が 無いと、商品の販売収入だけでは、費用をまかなうことが難しい事業のようです。起業を考えるときは、事業計画をきちんとたて柔軟な対策を打つ必要がありそうな業界です。 うまくこのような環境ができ上がれば、そことの協業でもしくはチームでスタートする「ミニ起業」から始めるのも一案です。
同社はリサイクルの種類を「マテリアルリサイクリング」と「ケミカルリサイクリング」に分けています。マテリアルリサイクルとは、回収した使用済みPETボトルを 細かく砕いたフレークを様々な製品に再商品化する企業に向け原料として販売する方法です。一方、ペットリファインテクノロジーのケミカルリサイクルは、使用済み ペットボトルを原料にして再びペットボトルを製造する方法です。この方法は真の循環型リサイクルとして、限りある地球資源の節減に貢献すると言われています。
この会社は主にペットボトルのケミカルリサイクルを行っている数少ない会社です。(同社は国内唯一と言っています)
この会社では、家庭(市公認のリサイクル業者を経由して)もしくは飲料水販売事業者(たとえば自動販売機の横に置いてあるペットボトル回収箱)から、ペットボトル を購入し、リサイクルを行っています。
購入したペットボトルは、パッケージに保管された状態に応じて次の3つに分類されます。
A:ペットボトルに再生出来る品質を持つもの
B:細かく砕いて、食品トレーや作業着、カーぺット、シャツ等の原料にできるもの
C:再利用できなくて廃棄するもの
図6の「回収されリサイクルを待つペットボトル」の右側にあるパッケージはAレベルです。集められたペットボトルには、キャップやボディについていたラベルが ありません。そのために離れたところから見ると、図6の右側のパッケージはほとんど透明です。これならペットボトルの原料として使えます(ケミカルリサイクル)。
一方中程にあるパックは、ペットボトルのキャップが付いたままとか、ラベルがはがされていないものがはいっています。このためパッケージはかなり色が付いて 見えます。このままでは透明なペットボトルの原料とはなりにくいので、ワイシャツ、衣服やカーペット等の繊維製品の原料としてリサイクルされます(マテリアル リサイクル)。川崎市の家庭から回収されるペットボトルはほとんどBクラスだそうです。私なりに考えたその理由は「川崎市では空き缶とペットボトルは同じビニール袋に 入れて出すように決めているため、ペットボトルの蓋やラベルがはずさているかがはっきりわからないことと、追加で分けてチェックする体制を作るのも難しいため」です。 私はこれまでペットボトルの首についているプラスチックも蓋と同じたと思い、手間をかけて取り外して出していましたが、これは裁断したあと水に入れると浮いてくるので、 付いていても問題はないとのことでした。これからは外さないことに決めました。
Dグループはペットボトルの中にまだ液体が残っていたとか、缶詰と一緒に梱包されていたために缶詰の汁がペットボトルについているなどで、リサイクルできないもの です。このように色がついていたリ、匂いがついていると再利用できずに、廃棄処分となります。産業用と言われる公共の場所にある飲料水の自動販売 機の横にあるゴミ箱から回収されたものにこのクラスが多いとのことでした。
「麻生区の廃棄物減量指導員施設見学会」に出かける前は、家の前から資源物が回収されたあとどのようにして、資源物にしているのか知っておくのも面白そうだ、 見てこようと思っていました。
「紙と」「古紙」のリサイクルの現場に行った時は、いよいよ工場に入るのだ、中の様子を見てもっといい方法を提案するヒントが得られれば面白いことになると 期待しながら見学をしていました。その実態は廃棄物の選別と分別に大変な手間が掛かっていたのでした。もっと機械化が進んでいて、コンベアの一方に収集された ビニールパックを乗せると、ビニールパックが破られ、中から出てきた資源物から自動的に次々と不要な部分が取り除かれ、残った回収物が分別されてコンベヤから 下りてくるのだと思っていましたが、少し違いました。特定の工程を除けばシャベルカーやトラックが、原料を載せて資源物の分離機械や梱包機械の間を走り回り、 最後に性質の同じ物質ごとに集めるというステップが連なっている状況でした。原材料をあちこち運び原材料の種類に応じて不要物が取り除かれ、再生対象の物質が種類 ごとにまとめられて出てくる仕組みです。自動化できるほど原料となる回収物の品質が保証され、将来にわた設備投資費を回収するに足りる原料の回収量が確保できない限り、 これも仕方がないと納得したしだいです。
「古布」のリユースもほとんど分別だけで、海外輸出に回すと聞いておどろきました。どうも古布を洗うとか染めるとか、分解すると言った工程は無いようでした。 その上濡れたものは持ち込み禁止とか、要は工場のなかではほとんど加工に近いことは行われないようです。これでは、まもなく特定のもの以外は、海外マーケットでも 不要になるのではないかと感じました。
この時までは、廃棄物回収・処理の世界で何か新しいやり方はないか、もし見つけることができたら、ベンチャーとして対応するにはどんな方法が考えられるだろうか とあれこれ考えながら見学していました。
ところが、最後のペットボトルのリサイクルプロセスでは、分別と移動のプロセスは、原理的には紙の時と変わりませんが、ケミカルのところの設備投資は高額です。 普通の製品プラントと同じです。一方原料のペットボトルは市民から集めるわけですから、ペットボトル販売先の要求が変わってもそれに応じた最適な原料を選ぶことは 許されません。いわばプロダクトアウトの化学プラントです。これではこれから迎えるであろう変化の時代に対応することが難しくなります。このままでは変化への対応が 求められる起業家志向に適した事業では無いと感じました。原料を変えられないのであれば、せめて商品は変えられるような柔軟性を持たせるビジネスモデルが必要です。
ここまでは、「廃棄物減量」という言葉を廃棄物をどう処理するかという立場で見てきました。これに対して市民がお役に立てることは、処理しやすいように 分別して出すことぐらいで、これには限界があります。結局最終的な解決策は「横浜3R夢(読ガナ:スリム)プラン」の時にお聞きした「リデュース」(ゴミを減らす もしくは出さない)というところ落ち着きそうです。
そう思って「はじめに」に書いた川崎市の「廃棄物減量指導員」の4つの役割を読み直して見ると「リデュース」で考えることとよく似ています。「ゴミをどうやって 出すか」ではなく、まず「ゴミを出さないで済ます方法やゴミを出すなら処理の簡単なごみで済ませる方法」を考えるべきだったのです。そのために使う 「家庭のごみダイエット・チェックシート」 が川崎市のホームページにありますので、ご参照ください。
そういえば、ずいぶん昔の話ですが、エコを考える会で「太陽光発電設備」を見学に行った時のことです。ツアーバスから降りてサービスエリアで昼食を 食べることになりました。ツアーの取りまとめをやっていた人が、サービスエリアの定食屋さんの前で、ここで昼食を食べましょうと提案した時、エコのリーダーを やっていた人が言った一言が「私は嫌だ、プラスチックパックに盛られた食事はエコでない」だったのを思いだしました。日常生活の中でもこんなことを言える人が本当の 「廃棄物減量指導員」ではないかと。
また、「廃棄物減量指導員」として、町内会の皆さんに役立つ仕事をやっていると、「リデュースの指導員」とも言えるスキルが身につき、いざという時には 独立して働く「ミニ起業家」の道が開けそうです。「情けは人のためならず」です。こんなことを次々と考えさせる今回の見学会は素晴らしいと思うと同時に、そこまで 思いが行くように、今回の企画が仕組まれていたことに驚きました。
代理としてでしたが、いい見学会に参加でき面白い体験をできたと感謝しています。
2016/11/18
文責 瀬領浩一