2018年2月13日サイボウズ社の本社で、「会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。」の出版記念のイベン トが開かれました。イベントの形式は、著者のサイボウズ代表取締役の青野社長と、カイシャをおもしろくしたいと思う若手企業人が集まる対話でした。
参加対象者は①会社など所属している組織でプロジェクトや組織を立ち上げた経験がある人、②大企業を出て起業された人、③現在複(副) 業している人、④これからの「新しいカイシャ」の在り方に興味がある人でした。出席の条件を満たしているか心配でしたが、オブザーバーの位置付けでもいいからと参加を申し込んだところ、抽選の結果無事出席可能との通知がきました。
50人くらいは入れる会場は開催者も入れると満員で、熱気むんむんのイベントでした。今回はこの雰囲気をお伝えしたいと思います。
1.1本社ビル入り口の広場
本社に入ると目前に見えるのが図2にあるようなキリンやその後ろに見える大木がある広間です。この空間は緑色が多いのが特徴です。あたかも緑と青空に囲まれている感じです。この図2の左にはサイボウズを利用しているお客様が使い方などを相談するカフェスペースがあります。その手前にいるのが図1のサイボウズの社名を表すスーパーマンにも見える像「ボウズマン」です。社名のいわれは「電脳」を意味する「cyber」と、親しみを込めた「子供」の呼び方「坊主(bozu)」の造語によるもので、「電脳社会の未来を担う者達」という意味も込めているそうです(社名の由来、2018)。アイコンに使われるのも「ボウスマン」ですもっとかわいくなっています。 あたかも幼稚園や保育所に来たような雰囲気です。このあたりの様子はサイボウズ式の(カフェにBARに公園も!、2018)や(サイボウズ本社がすごすぎる!2018)に詳細が載っています。
1.2 セミナー会場と進め方
セミナーが開かれたのは入り口のすぐ近くの会議室です。こちらは、入口広場とは違い、通常の会議室に似ています。大きな違いは、周りの壁がガラスであり広場や通路で何が行われているかを見えるようにでき、逆に外から部屋の中で何が行われているかも見えるようにもできるということです。しかし今回はカーテンを閉めて、通路を通る人や外の様子に惑わされることもなく対話に集中できる環境でセミナーが行われました。オープンであると同時にクローズにもできるという多様な演出ができる会議室です。
図3 対話会場(発言者)
図4 セミナー会場(主催者)
図4には、セミナーの始まったばかりの会場で、マイクを持った野村ファシリテーター(司会者)がその右に小さく見える青野社長と話し合っている様子が映っています。スクリーンの右に映っているのが青野社長の写真ですが。セミナー参加者はこの二人を取り囲むようにして話を聞いていることがお分かりかと思います。
図5 レイアウト
図4を図3の発言者側の写真と組み合わせて簡略化したのが図5レイアウトです。図5を見ればわかるように、この会場の椅子は仮想の楕円上に配置されています。話をする人は、会場の最も内側の椅子に座って順番を待ち、意見を言います。話し終わると、発言した人は後ろに戻り、空いた椅子には 関連した、新しいことを話したい人が座り発言の順番を待つという方式です。言い換えれば、メンバーが入れ替わるが5人くらいのサークルとの意見交換のよう な雰囲気で対話が行われました。それまでの人が話した内容を参考にしながら雰囲気に合った自分の1番大事な意見(言いたいこと)を言うことになります。自分の言いたいと思っていることに関連した対話が始まったことを見計らって、(人に言われる前に)それまでの対話にあわせて的確に発言するゲームという感覚 でした。結果として、多くの多様な意見が出てくることになりました。面白いやり方と感心いたしました。
しかし、このように対話が進んだのは、ファシリテーターの軽快な対話内容の纒め方とガイドのやり方が素晴らしいだけではありません。参加者に挙手をしていただき確認した時に、まえがきに記したような参加者対象者条件の4つのいくつかを満たした人達であり、もともとテーマに深い関心を持って集まっていたのが確認されています。そのうえ参加者は、事前に配布された出版誌の一部を読み、それに関連する意見を纏めていました。これを参加者がセミナーの準備活動と意図したかどうかは別として、資料配布の目的は準備活動であったようです。参加する場所の雰囲気、主催者の準備、参加者の意気込み、参加者の準備が整った素晴らしいイベントでした。
2.1対話の進め方
青野社長の話の切り出しは、2015年に「チームのことだけ、考えた(青野、2015)」を出版したあと、出版は大変。今後10年は本を書かないと思っていたのに、この時書き残した「会社」のことが気になりこの本を書くことになったといういきさつでした。今は皆さん「会社」というものが存在するのは当たり前といっているが、一体「会社」とは何なのという疑問です。「会社」のためとか「サイボウズ」のためといっているが、「サイボウズ」と いう会社はどれなの・誰なのという疑問です。これが「会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。」を書くことになったいきさつです、とお話されました。
そして、参加者が次の2つの項目について、順次発言をされました。
① 参加者のこれまでの経緯 40人くらいの方々が、それぞれ自分の、これまでの活動の経緯にてその経験を話され、
② 参加者がこれからの日本の会社のあるべき姿を考え、1枚の紙に書き出した後、日本から世界に向けて発信していく会社にどんなものであるべきかについて発表しました。
2.2対話の内容のまとめ
このように今回の対話は、とりあえず集まった人たちがどんな人であるかをお互いに知り合うために、立場の違う自分の考えを述べることと、何をやりたいと思っているのかというアイデア交換の場で特定の結論を出す場ではありません。
そこで今回は対話で聞き取れたキーワードをもとに短文を作り、私にて図6現在の仕事とめざす会社記入フォーム(マンダラ図)に記入しました。
図6 現在の仕事とめざす会社の記入フォーム
このフォームでは、①左下から右上の時間軸には現在行っている仕事を左下に記入し、右上に日本初の新しい会社の内容を記入します。②左上から右下の空間軸には左上の人材供給のメカニズムには社会で起きている一般的状況を示し、右下には今のやろうとしていることについて自分の立ち位置の説明を記入します。 同様にして資源の利用方法を記述する仕組み軸と心の動きを記入する仕掛軸を並べてあります。こうして4つの軸をもとに、その中央に今現在やろうとしていることを書き込む4次元のマンダラ記入フォームです。また、この図の青枠で囲まれた部分が会社の状況を、赤枠で囲まれた部分が個人の状況を、黒枠部分が活動に関する状況を示しています。
図7 現在の仕事とめざす 会社の記入例
クリックすると拡大図が見られます。
図6はこの記入フォームに書き込んだものです。各人が話された内容はそれぞれ独立したこと事柄ですから、記入された短文には一貫したストーリーとなっているわ けではありませんし、後ろの方で聞き取れた内容だけを使っているので、まだすべての人の情報にもなっていません。会場には、会議の様子をどんどん記入されていた方もいらっしゃいましたからそれらの情報をも参考に完成させることができればもっと充実したものになるかと思います。図6はあくまでも記入フォーム の記入事例(FBE:Framework By Example)として示したものです。
この図は大体このような対話がされたことを思いだすための記録として役立ちます。
セミナーが終わった後は、交流会。入口広場からセミナー会場の反対側にある図8のようなレストランで皆さん自由にお話をしたり、名詞交換を行ったり、食事をしたりの楽しい1時間でした。
楽しくてにぎやかな交流会が終わった22時、セミナーのフォローアップとしてFacebookに「Cybozu旅人の会」という会ができたので、ご案内しますと発表されました。そしてその翌日には案内のメールが来ました。まことに素早い対応と驚いた次第です。3月30日には、サイボウズ社の株主総会が開かれ、それに先立ち堀江氏をゲストに迎えた「チームワーク経営シンポジウム」にメンバーはご招待を受けました。チームワーク経営シンポ ジウムでの堀江氏のお話の様子は長田氏の「新しいカイシャについて、ホリエモンと、語ろう」や園田氏の『「個人が会社を使うという働き方はおもしろい」 ─ホリエモンと新しいカイシャを議論したら、生き方の話になった』で報告されています。
そして4月26日に行われたCybozu旅人の会の「緩い飲み会」では、旅人としての参加者自身の活動の話を語り合いました。そのほかにもセミナーに参加した時の感想、経営シンポジウムが株主総会の前に行われた理由、株主でない人が株主総会に参加された理由などを話し合う楽しい会でした。
参考文献
社名の由来 https://cybozu.co.jp/company/origin/ (最終アクセス2018.02.20)
カフェにBARに公園も! https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001002.html (最終ア クセス2018.02.20)
サイボウズ本社がすごすぎる!https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001002.html (最終 アクセス2018.02.20) 青野慶久 「チームのことだけ考えた」、ダイヤモンド社、2015 https://www.amazon.co.jp/dp/B019DFSTIC/ (最終アクセス2018.02.27)
青野慶久 「会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。」、PHP研究所、2018. https://www.amazon.co.jp/dp/4569837263/ (最終アクセス2018.02.27)
長田 涼、「新しいカイシャ について、ホリエモンと、語ろう」、https://note.mu/community_naga/n/n668fabc9640b(最終アクセス 2018.15.17)
園田菜々,『「個人が会社を使うという働き方はおもしろい」─ホリエモンと新しいカイシャを議論したら、生き方の話になった』、https: //cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001448.html (最終アクセス2018.05.20)
2018/05/21
文責 瀬領 浩一