128.新時代の組織構築

128.新時代の組織構築


- ビジネス・リエンジニアリング -

はじめに


 ODSG 2019年9月定例会にて大井 貴氏(NTTビズリンク株式会社 代表取締役社長)(ODSG正会員)より「組織のダイナミズムに対する思い」というテーマでお話をお聞きしました。
今の日本企業の苦しみと、置かれた立場を学んだいい機会でした。講演の後で調べたことも取り入れてこれまでのテクノロジーの変化と日本の産業競争力の推移、組織ゆえに直面する課題、ビジネス・リエンジニアリングとは、日本への提言をまとめました。

1 大井氏の略歴


 大井氏は「これが私の略歴です」とスライドに映しました。彼は1886年に大学の理学部物理学修士を終了し、1986年にNTTに入社しました。それはNTT民営化後の最初の採用となった入社の時期です。その後の1989~91年の米国ボストン大学MBAへの留学は「Japan As No.1」と言われていた時期であり、ベルリンの壁が崩壊し、ブッシュ政権からクリントン政権に移行した時期です、というようにご自身の経歴とともに、その時の社会情勢や会社の状況をセットにしてお話をいただきました。

 こうして、自分の履歴とこの環境の変化をセットした説明をお聞きしながら、これこそ社会情勢にどのように対処すべきかに重点を置くマネジメント型人生の発表方法だと感じました。私がこのシリーズの「原宿のイルミネーション」で書いた経歴を整理する方法は、自分の記憶に残ったイベントの意味を整理しながら従来の履歴書と組み合わせてみようというものでした。あくまでも個人の立ち位置で考えるものでした。大井氏の履歴をお聞きしながら、マネジメントを目指す人は、それだけではいけない。企業や会社といった社会の立場で考えることこそ重要と気づかされました。

 このような内容のため、自己紹介には時間はかかりましたが、聞いている私としては自分のやってきたことを思い出し、以前に自分にも似たようなこともあったななどと思い出しながらお話を聞くことができました。ほかの参加者も同じような感じを持たれたのか、参加者がつい意見を言ってしまうこととなり、参加者全員の意見交換のような雰囲気で進みました。

2 産業競争力とグローバル化の推移と葛藤


 最初のおはなしは、90年代以来のIT/情報産業の経緯から見る、産業競争力とグローバル化の推移と葛藤でした。

2.1 テクノロジーの進展


 ここでは、日本と米国のGDPの実質成長率の推移の表を見せていただき、1986年から1991年の間は日本の方がアメリカより成長率は高かったがその後は2008年と2009年を除きおおむねアメリカが日本を上回っていることを説明されました。

 また、3Gはともかく、4G・5Gの特許出願は、中国・韓国が1位と2位を占め、3位フィンランド・4位米国・5位スエーデンに続き日本は6位とかなり低いとのことでした。すなわち日本の経済成長は1992年以降アメリカより低くなり、今や通信系のテクノロジーへの投資は、中国・韓国・アメリカ以下になってしまったということです。

2.2 アメリカ式の導入


 世界は、このシリーズの119「自助の精神でニューエリートに」の図表1に示したように、「Japan as No.1」といわれた明治以降の日本が「自助精神を基盤」に欧米式の資本主義を導入して大発展したのを見て、世界は旧来の米国式を離れ新しい行動様式に進 路を変更し始めました。

 ところがちょうど「世界が新しい行動様式に進路変更を模索し始めた」この時、国内経済に行きづまりを感じた日本の多くの経営陣は、「対策として」米国のコンサルタントの指導をもとに当時の米国式の金融資本主義の成功事例の導入を始めました。

2.3 お国まかせ


 こうして、政府や行政機関も、既存企業の生きの残りに力を注ぐこととなりました。これでは、日本の強みであった「おもてなし」ともいわれた伝統を保存し、顧客第1主義やIT化・AI化といった長期間かかる組織改革の優先度が低くなってしまうのは当然です。

 例えば、「自助の精神」の自助は「主体性」にもつながると思いますが、朝日新聞の『「主体性」で合否評価導入に迷い(2019/10/22 朝日新聞)』という記事にあるように、こんなことまで文部科学省が統一しなければならないのが日本の現状です。さらに「主体性」教育が重要であるのなら、そのために必要な予算と人を増やすことを提案するか、必要な労働時間を確保するためならば削除してもよい優先順序の低い教育を提案するのもよいかもしれません。大学は明確にそれを条件とすることを通達することも必要です。また学生にはほかの科目の教育を強化することにより「主体性」の不足分を補うといった自由があってもいいかもしれません。そのために実行する人たちも含めた関係者が打ち合わせ、多様な実行案を検討するのはいかがでしょうか。お国と、関連する一部の人たちの意見を伝える、上意下達だけではうまくいかないのは仕方がない時代がきている例です。

2.4 90年代からの米国の逆襲"Soft Power"


 ソフトパワーとは、Wikipediaによれば国家が、軍事力や経済力などの他国を強制し得るハード・パワーと対置する概念であり、アメリカの対外政策のあり方・手法として生まれた概念です。この概念を提唱したのはクリントン政権時代にしたアメリカ・ハーバード大学大学院ケネディスクール教授ジョセフ・ナイ です。

 90年代からの米国の逆襲"リエンジニアリング革命"は別章にて説明しますが、漸進的な改善でなく抜本的なイノベーションであり、既存の現場の枠組みやルールの中での個々の業務の改善ではなく、枠組みやルールを捨てた上でのビジネス・プロセスのリエンジニアリングです。このためには、プロセス全体が顧客に対する実際の価値を生み出しているか・人間が自然に理解できるほどに簡明である必要があります。

 ここでは情報データベース・情報フロー・エキスパートシステムといった情報技術が決定的な役割をするでしょうから、そのための準備も怠るわけにはいきません。

3 「組織」のゆえに直面する日本の課題


 このように企業・政府・自治体にかかわらす「組織」ゆえに抱える問題はどこにでもあるが、日本の直面する課題をとりあげてご説明をいただきました。

3.1 これまでの組織化がもたらした分業の問題


 これまで多くの製造業は、需要が多く生産が追いつかない時代に確立された分業方式(機能を分割・階層化する方法)と少品種・大量生産で需要に対応してきました。顧客は企業の作ったものをそのまま受け入れるしかないのですから、それで十分でした。

 そこに日本は高品質という特徴を持った商品を、低価格で提供することで世界に進出してきたわけです。こうして日本の立場でグローバルを見て、リソースは十分あるという前提での護送船団方式をとってきました。

 これではオートメーション化は進むが、リエンジニアリングは進みにくい状況になります。ということで「NTTの組織対策」の例をご説明いただきました。

3.2 NW事業


 NW事業ではりクラウドとセットで企業のICTのTransformationを助けるNW Solutionを売りはじめました。閉域網・オープン網の物理構成は関係なしでインターネット活用できるシステムです。システムとソフトウエアを有効に使い実際の資産を待たないで、外部で生産・販売をする仮想的な資産を持つ、システムの自動化と人間のやる気を組み合わせた顧客満足度のKPIの設定が可能になりました。注1)注2)

3.3 Bizlinkを設立


 さらに、企業向けデータセンタサービスを提供する会社として平成13年7月にスタートし、その後NTTフェニックス通信網のテレビ会議多地点接続サービス事業、NTT-MEのデータセンタ事業統合により法人向けサービスを更に拡充し、コンサルティングやコンシェジェ・クレームにも対応、顧客への最前線にたち、統合的なICTアウトソーシングビジネスを展開しています。注3)

 といった、約25年前にアメリカの再生を目指して行われていたリエンジニアリングのNTTでの適用事例のお話をいただきました。

4.ビジネス・リエンジニアリングとは


 この時、参考文献として『M.ハマー&J.チャンピ―「リエンジニアリング革命_企業・根本から変える業務革新」を紹介いただきました。以下はその概略です。

4.1 リエンジニアリング革命


 図表1 リエンジニアリング革命はこの本に書かれている原則的情報を1枚にまとめたものです。(事例を除いてあります)

vbl-sjdnss01.jpg図表1 リエンジニアリング革命

出典 M.ハマー、リエンジニアリング革命、日本経済新聞社、1993を参考にして作成成
こちらから詳細図が見られます


 この本のプロローグには「200年以上前につく られた一連の原則が、19世紀、20世紀を通じてアメリカのビジネスの構造、マネジメント、パフォーマンスを形づくってきた。本書の主張は、この古い原則から離れて、新しい原則を取り入れるべき時がきたということである。さもなければ、アメリカ企業はその看板をおろし、ビジネス界から撤退することになる。」とかかれています。
 このためには業績の悪い部分を削って業績の良い部門に経営資材を集中させる「リストラ」ではなくて、既存の業務の流れを根本的に見直し、必要な機能だけに絞って業務を再設計する大胆な経営改善手法、すなわち「リエンジニアリング」が必要といっています。これならば、従来の部分的な改革では実現できなかった無駄を排除し、飛躍することも可能になります。

 リエンジニアリング変革への道は「はじめからやり直すことである」といっています。
 そのためには「すでにもっている知識と現代の技術の下で、もし今日この会社を再び創り上げるとしたら、それはどうなるか」と問いかけ、「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大な現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すことである」といっています。

 リエンジニアリング後のビジネス・プロセスには次のような共通点が
• 複数の仕事を一つにまとめる。
• 以前なら上司がやっていた意思決定を従業員が行う。
• プロセス内のステップを自然な順序で行う。
• プロセスには複数のパターンを用意する。
• 仕事は最も適当と思われる場所で行う。
• チェックと管理を減らす。調整は最小限に抑えられる。
• 仕事の集権化と分権化を合わせると効果的である。
 これらは過去のリエンジニアリングに共通する成果ですから、自社のリエンジニアリングを考えるときの課題設定を行うときに、見逃している課題がないかをチェックするときに使ってみる価値はあります。

 リエンジニアリアングで変わることは次のようなことです。
• 機能別部門からプロセス・チームへと仕事の単位が変わる
• 単純な業務から多次元にわたる職務へと変わる
• 人の役割が管理から権限移譲へと変わる
• トレーニングから教育へと職務教育が変わる
• 成果の測定と報酬の制度が活動重視から結果重視へ変わる
• 昇進の基準が成績から能力へ変わる
• 保護的から生産的へと価値が変わる
• マネージャーが監督からコーチへ変わる
• ヒエラルキーからフラットな組織へと組織構造が変わる
• エクゼクティブがスコア・キーパーからリーダーへ変わる
これは、リエンジニアリング活動を検討するときに不足しているものはないかチェックするときに使う価値があります。


 リエンジニアリングは現状を変える活動ですからどうしても既存の組織の中で快適な活動を行っている人からは、抵抗されるはずです。このような既存の権力者に打ち勝つために、以下のような役割を果たす人にリエンジニアリングに参加していただく必要があります。
 リーダー:リエンジニアリング全体についての権限を持ち、動機付けを行うシニア・エクゼクティブであり、プロセス・オーナーを任命する人です。
 プロセス・オーナー:あるプロセス、またはプロセスのリエンジニアリングに関する責任者であり、リエンジニアリング・チームを集めます。
 リエンジニアリング・チーム:あるプロセスのリエンジニアリングに携わる個人からなるグループ・現行のプロセスを診断し、そのデ ザインと改革を進めます。
 ステアリングコミッティ:リエンジニアリングに関する企業としての全体的な戦略を練り、進行状況を監督するシニア・マネージャーからなる意思決定グループ。

 エンジニアリング・ツアー: 企業内でリエンジニアリングの技術とツールを開発し、企業内の別々のリエンジニアリングの活動にシナジーをもたらす。

リエンジニアリングに着手する
 こうして、だれが、何のために、何をするのかのめどが立ったら、関係組織の人たちに対する活動準備です。まずは会社内に大きな変化への展望を持ってもらうためメッセージを出す必要があります。その内容は次の通りです
 改革綱領 : どうしても変化が必要であることを強く説得するものでなくてはならない
 ビジョン表明 :どういう会社にならなくてはいけないか

新情報技術の役割は
 新情報技術は業務改善の基本ツールであるがリエンジニアリングでの情報技術の役割は古いプロセスを改善ではなく、新しいやり方を創造することです。すなわち今やっていることを自動化するツールではなく、新しいやり方を実現するツールと考えて行って下さい。

 プロセスの目的を理解し、そのプロセスの問題点を認識していることが、新技術を見つけるための必要条件である。いい技術があるよと言われた時にはもう遅い。それは、誰かがすでにやっていることであり、それを採用して今からそれを学び実施するようでは、その時にはすでに時代遅れになっていることが多いのです。

リエンジニアリングを失敗に導くよくある過ち
 例えばプロセスを変革せずに修正しようするといったような19個の過ちがあげられています。自分のやろうとしていることが、これらに当てはまらないか十分注意する必要があります。すなわち実行する前に反面教師としてよく学んでおくことです。
• プロセスを変革せずに修正しようとする
• ビジネス・プロセスに焦点を当てない
• プロセスの再設計以外に何もしない
• 人々の価値観や深淵を無視する
• 小さな結果に満足する
• あまりに早くあきらめてしまう
• 問題の定義とリエンジニアリングの範囲をあらかじめ限定してしまう
• リエンジニアリングを阻止する既存の企業文化やマネジメント態度を許容する
• リエンジニアリングをボトムアップで起こそうとする
• リエンジニアリングを理解していない人をリーダーに任ずる
• リエンジニアリングに必要な資源を惜しむ
• 会社の課題の中にリエンジニアリングを組み込む:会社で一番の課題に挙げること
• たくさんのリエンジニアリング・プロジェクトにエネルギーを分散してしまう
• CEOがあと2年で退職というときにリエンジニアリングを試みる
• リエンジニアリングを他の事業改善プログラムと区別しない
• デザインのみに集中する:単に再設計することではなく、現実化させることが必要
• 不幸になる人がいないようにリエンジニアリングを起こそうとする
• リエンジニアリングによって起きた変革に人々が抵抗すると、それを撤回する:これでは前のものが生き続ける
• 努力を無理にたたき出す:プロセスをあまり長く続けると人々は我慢できなくなる:会社の改革綱領をはっきり述べてから現場で実行するまでに12か月あれば充分である。
ほかにもいろいろな事例があげられていますので、リエンジニアリングを行う時にチェックに使うのがよさそうな本です。

4.2 サムスンの例


 ちょうど「リエンジニアリング革命」を読んでいる時に、「サムスン・クライシス」なる本を見つけました。
 図表2 サムスン・クライシスは張 相秀のあとがきを参考に作成したものです。

vbl-sjdnss02.jpg図表2 サムスン・クライシス

出典 張 相秀 聞き手 片山 修,「サムスン・クライシス」、文芸春秋、2015を参考に作成

 サムスンは1990年代に日本の得意であった半導体産業でいまや世界のトップを走っている会社として知られています。サムスンはもともと貿易を中心とした商業会社でしたが、いまや製造業の分野で大活躍する会社です。まさにリンエンジニアリング経営に書かれていることを行って成功した会社です。 この本はサムソン経済研究所の専務(人事組織室長)などを経て、大学教授や学会の副会長などをされている「張 相秀」のお話を経済ジャーナリストの「片山 修」が聞き手となってまとめたものです。したがってサムスンの立ち位置から見たサムスンです。

 例えば、人材争奪戦は国際常識である。技術者のもつ先端技術を得るためには、高額の給与を払うのは当然だ、すなわち企業にとってその時必要な情報やスキルを持っている核心人材は優遇されるが、期間雇用が終った時に条件を満たさなくなれば解雇もあり得るという制度です。この制度と成果主義が組みあわされて、新規事業開発もうまくいったようです。成果主義には適切な評価制度と人事制度が必要であるといっています。こうして「完璧主義」 より「機会先取」が可能となり、リエンジニアリングが早く行えたようです。さらに「Japan as No1」の時代は日本のやり方を取り込み、日本のやり方がおかしくなると、米国方式を取り入れるという柔軟な考え方で、人材を育てられたことが、韓国の繁栄を支えてきたといっています。

 「地域専門家制度」は若手社員から希望者を募って、希望する国に1年間滞在させる制度です。この派遣先には昔は日本や米国が選ばれたが今は中国が多い。当初「地域専門家制度」では地域研究や調査を行っていたが、それくらいでは役に立たないので、派遣中の仕事は本人に任せることにし、自分の市場価値を高めるために現地生活も自分で決めて行うようにした。日本の場合はこの現地生活まで会社が面倒見ることが多く、自分で仕事を開発する習慣がついていない人が多いのが問題である。会社が面倒を見ることが多くなりすぎて既存権益の力が働き、新しいことが起こりにくくなっているのかもしれません。こうなると、費用は掛かるが成果は少ないという結果になるということです。
 「国家や企業に対するイメージや信頼は頭の中で作られる」という言葉がある。このため「これからの頭の中の派遣争い」には、ハード面だけでなく国家を巻き込むようなソフトパワーの強化が必要であるといっています。

 これらは、「リエンジニアリング」についてサムスンの人事にかかわっていた人が語った「サムスン・クライシス」に書かれたお話です。なるほど、グローバ ル ルールにのっとったリエンジニアリングの面白い事例と感心した次第です。

4.3 サムスン崩壊


 その1年後に、勝又 壽良 氏が書かれた「サムスン崩壊」という刺激的なタイトルの本が発行されました。

 図表3 サムスン崩壊は、この本の「はじめに」で勝又氏がお書きになっていることを、曼荼羅風に図表化したものです。

vbl-sjdnss03.jpg

図表3 サムスン崩壊

出典:勝又 壽良、「サムスン崩壊」、日本から「ギャラクシー」が消える日、宝島社、2016、はじめにを参考に作成

 この図を、「図表2 サムスン経営」と比べてみると、「サムソン崩壊」は、サムスンのこれまでの活動や業績をも とに、これまで行ってきたことと、これからどうなるであろうかを予測して書かれていることが分かります(評論家の立ち位置)。(『ただ、現在(2019年 10月)も日本におけるギャラクシーが崩壊しているわけではありません。』)

 これに対して図表2 サムスン経営は、起業からこれまで、サムスンのリーダーのそばにいた話し手が経営者は世の中の何に注意し、どういう考えで会社を経営してきたのかを書いているのが分かります(リーダーの立ち位置)。すなわちこのシリーズの「102 原宿のイルミネーション」に書いたように立ち位置が変わると、世の中は違って見える例です。

5 日本への提言


 「ビジネス・リエンジニアリング」について日本への提言ということで「国レベル」、「会社レベル」、「IT事業レベル」、「社会レベル」分けてお話がありました。ここでは会社を中心に述べてきたので、「会社レベル」について報告します。

 今こそ、トップによる「ビジネス・リエンジニアリング革命」を行う時期である。組織変革を行うのは、ビジネス・プロセスのリエンジニアリングを行ってから事業リーダーがビジネス・プロセスのリエンジニアリングの責任を持ち、チームリーダーとチームマネジメントを担当する課長が事業運営を行いチームのソ フト力を育成する。日本の会社の強みであった現地現場力を再生し、「和」をもったチームとしてイノベーションを行う。組織を守るだけのサリーマン意識を排 除し、自分の強みを生かす自己責任で仕事の目的の達成を目指す。人事部は「人だけでなく、人間関係」まで視野に入れて活動する。
ということでした。

おわりに


 以上、大井氏は、今回はトップからの組織改革すなわち「働かせ方改革」についてのお話でしたが、「日本の新しいあり方として」はこれを「 働 き方改革」と結びつけて考えることが必要とお話されました。これを私なりにまとめたのが、「図表4 働かせ方改革と働き方改革」のです。

vbl-sjdnss04.jpg図表4 働かせ改革と働き方改革

 図表4 働かせ改革と働き方改革の中ほどにあるリエンジニアリングプロセスにおいてにおいて取り組むべきことは
会社を元気にするためのトップの方針決定
トップをサポートするのは事業部長や部長といったマネジメントの仕事
この方針に従って現場が仕事を行うのは現場をよく知っている課長レベルの人の役割
といったことです。

 こうして、トップやリーダーが一体となって社員の仕事がうまくいく環境を用意できれば、右下にある社員の自主性を重要視した「働き方改革」が可能になります。

 多くの場合、実行する作業のほとんどは社員が行うわけです。今後、さらにグローバル化が進み日本の文化と整合性のある施策を設定し実施する必要が出てくれば、現在の社員に新しい資質や技術を学習させるだけでは間に合わないときには、必要な資質や技術を持った社員を随時採用する戦略も重要となります。さらにリエンジニアリングで撤退する事業で働いていた人たちが、社会から差別されることなく、転進をするか、退職するかを選べる社会の仕組みも必要となります。

 幸いなことに、ベンチャー企業は過去とのしがらみがないわけです。初めからここに述べたようなことを実施する前提でスタートし、組織化と人事を行うことができます。ベンチャー 企業の強みとして利用しない手はありません。ティール組織やホラクラシー組織も同じようなことを言っています。まずはベンチャーからやってみたらどうでしょうか?会社で働いている方は、社内ベンチャーとして。


注1)2011年から新WANサービス「Universal One」のサービスを開始しています。https: //businessnetwork.jp/tabid/65/artid/1224/page/1/Default.aspx(20191022 アク セス)
注2)テリジェント社は、米国の固定無線ローカルアクセス事業者です。NTTでは、同社に10%の出資を行い、有線部分のネットワークやネットワークマネ ジメントなどに関する技術者と役員を派遣している。都市において、1998年から24GHz周波数ライセンスを利用した固定無線のサービス提供を始めてい る。http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/panel/pdf/2_Gd_3_1-7.pdf(20191022 アクセス)
注3)NTTビズリンク株式会社は Communication & Collaboration Solutionsでは経営の効率化/迅速化/グローバル化の中で働き方に貢献する「ヴィジュアル コミュニケーション ソリューション」、人手不足の中 で現地・現場のオペレーション改善に貢献する「スマート グラスクラウド サービス」、採用環境の厳しさの中で顧客接点強化に貢献する「コンタクトセン ターソリューションサービス」と目まぐるしいICT技術の変化の中でICTインフラ基盤の刷新や運用に貢献する「トータル インフラストラクチャー ソリューション」を提供しています。 https://www.nttbiz.com/ (20191022 アクセス)」

参考文献

M.ハマー&J.チャンピ―、リエンジニアリング革命_企業・根本から変える業務革新、日本経済新聞社、1993 
張 相秀 聞き手 片山 修,「サムスン・クライシス」、文芸春秋、2015
勝又 壽良、「サムスン崩壊」、日本から「ギャラクシー」が消える日、宝島社、2016
NTTビズリンク概要 https://www.ntt.co.jp/journal/1807/files/JN20180740.pdf  (20191027 アクセス)


2019/11/11
文責 瀬領 浩一