152.起業の準備

152.起業の準備

-狙いを決める-

はじめに

 このシリーズの第1回目「学生起業の道―自分への備えー」は変わりゆく世の中で、自分の立場を整理し、今やりたいことを整理し、それに起業家としてどのように備えるべきかをまとめました。

 今回はこのやりたいことを実現するために「学生起業家としての狙いを決め実現するための準備をまとめます。

 最近の学生さんはアルバイトを行っている人も多く、仕事をやるうえでの問題をお分かりの方も多いとは思いますが、事業を本職として継続的におこなう経験をされている方は少なく資本の蓄積も少ないことでしょう。 またフランチャイズ方式の起業もあり安心度の高い起業が期待できると言われていますが、これから何が起こるかわからない新時代に対応しようという意気込みのある若者にとっては自由度が少ないのでここでは取り上げていません。

 ということで、今回は学生の立場で起業するための準備事項を「図表1 実現可能な起業の道を探す」にあるように6W2Hにまとめました。

vbl01101.jpg図表1 実現可能な起業の道を探す

 6W2Hとは図表1に描かれているように、ビジネスの戦略作りの際に使われるWhy、Who、Where、What、When、Whom の6つのW項目とHow、How muchの2つのH項目のことです。図表1では1から8までの6W2Hでまとめた結果を、9.先輩やプロの方に評価して もらいます。その結果がOKであれば起業開始に入りますが、不十分判定された場合、最初に戻りもう一度6W2Hを見直し、その結果をもう一度見てもらいOKとなれば起業開始、さもなければまたもう一度6W2Hをみなおします。

1.何のために起業するのか(Why)

 起業をする学生の立場で考えれば『学生起業の道ー自分への備えー』の「図表3 人生100年時代を生きる計画」に書いたように、現在は卒業したあとは就職する道だけでなく、起業、さらに学び続 ける、(転職)といった道のどれかを選ぶ時代に入りつつあります。

 学生がこの中の起業を選ぶとき起業家すなわち事業リーダーとして最初に考えるべきことは、何のために起業するのか?です。すなわち起業により直接的または間接的に影響を受ける利害関係者(ステークホルダー)に対してどんな価値を提供するのか(Purpose・狙い・目的とも呼ばれています)を明確することです。

 この時まず考えるべきことは、金儲けのような短期的な目標ではありません。「図表2 経営者の夢」にあげるように、起業する事業に関係するすべての人々(今後この人達をステークホルダーと呼びます)すなわち、お客様、利用者、事業委託先、社員、事業に関わる資金の提供者、社会 環境の維持管理者等の人たちのさまざまな欲求に対応できることが必要です。ステークホルダーの生きる可能性を増やせる狙いを実現できれば、そのステークホルダーに支持され感謝されることになり、幸せを感じることができます。このように感謝されることが仕事の狙いに入っていて、お客様に感じていただけるようになれば、結果として売上を増大させることが可能になるわけです。

vbl01102.jpg図表2 経営者の夢

2.誰が起業するのか(Who):

 ここでは、学生さんが起業を進める方法を考えているわけですから、「図表3 だれが起業するのか」にあるように学生さんが起業する人です。図表3では自分のできることをリーダーとしての能力、プレーヤーとしての能力、ワーカーとしての能力の3つのタイプに分けています。リーダーとしての能力はいわば経営者能力で、ビジョン・もしくは狙い、目標を設定して、組織(ここではチーム)としてビジョンに向かって行動する動機付けを行い結果責任をまっとうするということです。複数の人が起業に参加しておればこれらの能力はそれぞれの人に割り振ることはできますが、個人事業主の場合はこれらをすべて自分でやることを求められます。

 同じテーマを他の人や他のチーム(営利会社やボランティアや非営利団体)もやっているかもしれないのでこの図で出てきたキーワードをもとに検索し、参考になりそうなことが見つかった場合はメモに残しながら結果責任・専門的知恵・実行スキルの三つの能力を具体的に書いたものを作成してください。

vbl01103.jpg図表3 誰が起業するのか

 このように整理し記録しておけば、将来「学生時代の自分がやりたいことに貢献したこと」を振り返るときの情報としても使えます。

3.どこで起業するのか(Where)

 学生時代の起業ですからまずは学校の近くとか現在の居住地の近くが良さそうです。キーパーソンが別のところに住んでいる時にはそちらに近いところとか、想定している顧客の多いところで始めるのも候補に上りますが多くの人は、まず学業を優先することが必要なので、最初は学校の近くもしくは現在の居住地の近くを選ぶことが多くなります。

4.何をするのか(What)

 この記事をお読みの方は、すでに何かやりたい案をお持ちかと思います。多くの人は、なぜやりたいかはきまっていなくても、世の中で進んでいる変化に対応する何かをやってみたいと思っていると思います。
 このような場合には、何をやりたいのかをメモとして書き出して(形式知化)ください。

 そのうえで、なぜそれをやりたいのかを書きます。

 例えば第1回目「学生起業の道ー自分への備えー」の「図表2 世の中は変わりつつある」にあげられた世の中の変化を先取りし思いついた「図表4 世の中の変化への対策」をやってみたいと考えているかもしれません。ただそれらのすべてをやるわけにもいかないので、この中からできることを起業の対象として選びます。

vbl01104.jpg図表4 世の中の変化への対策

 自動車ライターの鈴木 ケンイ氏は『ソニーのEV参入は大歓迎 小型EVの雄、田嶋氏が描く事業の縄張り』の中で、大手が躍進するEV事業が行われている中での、EVベンチャーの存在意義をどう捉えればよいのだろうかという質問に対して、レーシングドライバーで実業家の田嶋 伸博氏は「マスの部分を大手自動車メーカーがやればいい。EVベンチャーのようなところはピンとキリといったところをやればいい」言っている、と答えています。ここでピンというのは少量生産の超高性能EVで、キリはげたの代わりとなる軽自動車未満の超小型EVのことです。すなわち大手企業が重点を置いて生産げたしている大量生産能力を競うのではなくピンとかキリと言われている少量生産事業に参入するわけです。

 このような業態の一つとして「コンサルタントをやりたい」などという場合もあるかもしれません。コンサルタントのサービスの内容は会計と営業とか生産技術とかいろいろあり何をするかというよりもどうやってやるか(HOW)に近いかもしれません。このような時にはあまり悩むことなく自分の思いのまま必要なことをメモ帳に書きこんでください。その後自分のやりたいことをキーワードにして、インターネットで検索して参考情報を手に入れることができます。

 中小企業診断士 滝岡 幸子氏の『マイペースではたらく!自宅でひとり起業仕事図鑑』では、ひとり起業とは「たった一人で起業し、ビジネスを継続していくこと」。そして「社長・事業主自身のスキルや知識を売る商売」、つまり「社長自身が商品」としています。たとえアルバイトや家族がいても、社長自身がいないと商売が成り立たなければ「ひとり起業」としていると書いています。今回の自業と似た考え方です。この本の中では「絵手紙、押し花、筆文字教室から個人向けファッションスタイリスト等40を超える職種について、仕事の概要・長所・短所、収入と初期費用の例、起業のポイントを短くまとめた資料が描かれています。何をやろうか迷っている人の参考になる本です。 

 何度か全体の見直しを行っているうちにどこかに落ち着きます。ここでやろうとしているのは学校で普段から行われている正解を見つけることではありません。可能性がある狙いを見受けることです。後程出てくる「図表8 学生起業の6W2H」を見ればわかるように目的達成に関係のありそうなキーワードがどこかに記述されておればいいと考えて気軽に記入してくださ い。

5.いつ起業するのか

 学生起業のですから起業開始は在学中であるというのは当たり前ですが、起業準備の進捗状況によっては若干遅れることもありそうです。

 しかし学生は、いずれ卒業することになるわけですからやるならできるだけ学生のうちに起業してしまうようにスケジュールしましょう。

 この学生時代に行う起業には、「図表5 学生起業のメリットとデメリット」にあげたような特徴があります。

vbl01105.jpg図表5 学生起業のメリットとデメリット

出典 https: //willfu.jp/willfulab-4/startup-14 を参考に作成

 このため、何をするかで候補にあがった業務の中から「図表5 学生起業することのメリット・デメリット」にあげられている①リスクが少ない・②若くて体力がある・③社会人より自由な時間がある・④失敗してもやり直せる・⑤就職する場合にもプラスになるといったメリットを生かすことができる起業を選ぶのがよさそうです。
 ただメリットを生かすにしても、①その業務に対する知識や経験がすくない、②学業との両立が困難、③遊ぶ時間が減るといったデメリットを避ける形で起業する 案を選択することも必要です。となると医学部や薬学部工学部の学生は学んだことに関係しそうな業界、文系の学生は日常生活で利用している小売り業や、バイトやインターンでなじみの深い人材業界を選ばれることが多くなりそうです。

6.だれと起業するのか(Whom)

 起業を行うためには業種・業務によってそれぞれ必要な資格やスキルやマナーがあります。このため「学生起業の道ー自分への備えー」の「図表7 自分のやりかた」を作る時には、自分のスキルも整理しました。しかしこの時準備出来ていた資格やスキルだけでは起業には不足する場合もあります。不足する資格を自分で取ったりスキルをつけたりすることでは起業の開始時期までに間に合わない場合も出てきます。このような時には必要な資格やスキルを持った人とチームを組むことになります。 

 会社組織であれば正社員もしくは非正規社員とする案もあるでしょうが、個人事業主であればとりあえず業務委託もしくは外注ということになります。これらをスムーズに行うには「図表3 誰が起業するのか」にあげた自分は何ができるのかと言った資格やスキルを整理しておくこと同時に、連絡ができ、お付き合いのできる人を「図表6 外部資源」に整理しておきます。

vbl01106.jpg 図表6 外部資源

 この外部資源を見てお分かりのように、外部資源は多種多様です。この中の誰が最も適切かなどかは、起業の当初は見当もつきません。ということで、起業の当初は個人事業で始めるとことにしたわけです。

7.どのように起業するか(How)

 具体的なサービスのプロセスを明確にするためには、自分がやることだけではなくて、その前後左右にあるかかわりのある事業との調整が欠かせません。このためには自分の行うモノやサービスのライフサイクルを明確する「図表7 プロダクトライフサイクルチャート」を作り、それらの組織との間で発生するかもしれない具体的な作業とその作業の目標を明確にしておきましょう。流通プロセスにある販売店がこんなことがわかっていれば、例えば商品の在庫が入ってこない時に流通業者に確認し、交通事故が発生して商品壊れてしまったと分かった時に、その前の製造業者に在庫状況を尋ねて対策を練るといったことができるようになり、顧客サービスの向上に貢献できるわけです。

vbl01107.jpg図表7 プロダクトライフサイクルチャート

 このようなライフサイクル関連図を作成していると、これまでの製造業を中心とした日本においては図表7の破線で囲まれたリサイクル、リユース、リデュースといった処理はあまり注目されてきませんでしたが、SDGsのようにな環境問題が重要な問題として取り上げたれるようになると、消費者に対するこれ等のサービスも重要になって来ることがわかります。こうなると公共機関や地域の町内会やそこに住む人達を対象とした新しいサービス業にチャンスが来てい ることが理解できるようになります。

8.続けられるか(How much)

 お金を払えなくなるとその事業は破産して継続することはできません。このためお金は学生起業の目標ではないかもしれませんが、必要条件であることは確かです。十分注意する必要があります。
 このためには、見込んでいるモノやサービスの単価はどれくらいで、顧客候補は誰でどれくらいいて、そのうちどれくらいを自分の事業に呼び込むことができ、どれくらいの人に売ることができるかをとりあえず決め売上高の見込みを作ります。そのうえで材料費・加工代・郵送代などの経費を見込んで営業利益として、そこから固定費を引き純利益の見込みを作ります。起業当初は、ものが売れてもサービスを行ってもその収入はすぐに入ってこないのが普通ですので、当初は赤字でスタートします。この赤字がどれくらいの金額か、期間で回収できるかを知る必要があります。他にも必要に応じて次のようなことに対応する方法を纏めておきます。

 顧客は集めることができるか
 顧客の必要としているモノやコトは対応できているか
 自分の役期は残っているか
  SDGsの何を中心とするか
 必要資源は確保できそうか
  人、モノ、金、情報
  関係者の支持は受かられるか
 特に資金の不足は事業継続にあたり致命的になるので起業当初は必要経費の半年分くらいの余裕資金を見込んでおくことが必要と考えておきましょう。

9.結果を先輩やプロフェッショナルに評価してもらう

 そのうえでこうして作った計画を「図表8学生起業の6W2H」のように一つにまとめ、全体の状況をながめ、おかしなところがあれば作成した時のメモを見ながら修正し、この図の中央に成功の可能性をあるかどうかをできるだけ具体的にかつ定量的に記入してみましょう。そのうえでこの図を基に、プレゼンテーション用の資料を作り、興味を感じていただける方の前で起業の目的や内容についてプレゼンテーションを行い評価していただきます。

vbl01108.jpg図表8 学生起業の6W2H

この図表をクリックすると詳細図を見ることができます。

10.6W2Hのやり方の見直しを何度か行う

 これ等のサイクルを明確にしている例には巻末の参考文献に取り上げている東京大学のアントレプレナー道場や、WIFFUのようなオープンな仕組みがありますので、この様な見直しを行う方は、それらをご利用できそうです。

 学内にこのような仕組みがない場合は東京大学のような仕組みを持っている国内の大学や海外の大学の起業家支援システムやWIFFUのようなオープンな仕組みを利用することを考えて見る方法もあります。

 このような先進的なプロフェショナルは安全でしょうが、身近な知り合いにサポートをいただくときは、過去に学んだことや成功事例を体系化・整理して、それ等の豊富な体験をベースにガイドすることがあるかもしれません。このような場合はどうしても過去の法則を使ってしまいがち で、イノベーティブなガイドに至らないこともあるかと思いますのでしばらくお付き合いをして、信頼できることを確認してからお願いするのが良さそうです。

 このような準備が難しい場合は、新しいことをやっている人に相談するとか、自分で自分を見直してみるのも良さそうです。このために使える教科書は沢山出版されています。たとえば、『10歳から始める!起業家になるための「7つのレッスン」』船ヶ山 哲(辰巳出版)を参照して自分の小さい時からやっていたことを参考に起業家レッスンとして次の7つのレッスンをとり上げています。

「好き」を見つける!
親の背中を見せる
教えるのではなくイメージさせる
現場で体験させる
客観的に判断させる
観察させる
実践させる

 これら7つは、子供に起業家教育を行う上で(すなわち親の立場から)子供に学ばせるためのタイトルとして書かれています。大変参考になりますから、読者の方はこのようなレッスンを自分の幼児時代に受けて今があるのだと考えて、この本を読みながら自分の幼児時代にやったこと(学んだこと)を思い出して、それを実行する立場で書き出してみましょう。意外と自分の暗黙知を知ることができます。こうして得られたことを暗黙知として意識し、ここまで書き出してきた「図表8 学生起業の6W2H」の自分のやり方を見直しましょう。

 ということでこのシリーズでは、次回以降に示す方法を行いながら、起業を自業としてシュミレートし、必要なら大学等の支援をお願いするといった考え方とし ます。ここで自業は、活動することを、記述しながら、実際の活動に近いことを行いながら、その結果得られる状況を自分で観察する進め方です。 

 指摘いただいたもしくは自分で見つけた問題点をもとに「図表8 学生起業の6W2H」に書かれた1から8までのプロセスの 問題点を探し出してその対策を考えます。この時先輩やプロの視点は学生の視点と異なり、やり方も異なっているため直接1から8の間に書かれた項目が指摘されないこともあります。この時には自分で問題点の解決の役立つと考える1から8の項目で対応するにはすればよいかをどうすればよいか検討し修正し、それでも十分でない時は検討事項を追加して対応します。

11.うまくいきそうな道が見つかった場合はいよいよ起業の開始となります

 また今回は「図表8学生起業の6W2H」の結果を先輩やプロ評価してもらうことが難しい場合を想定すると、学生起業の開始をはじめから行うのは難しいと思いますので、自分で図表8の学生起業の6W2Hについての修正がある程度めどがついた状況になった時には事業ではなくて自業の開始から始めることとします。

 起業を始める前に予備知識として、1回目のシリーズ「起業の準備」の9つのホームページを「図表9 起業の準備のデータ関連例」にまとめました。  

vbl01109.jpg図表9 起業の準備のデータ関連例

この図表をクリックすると詳細図を見ることができます。


 この図で各ホームページごとに図表8に1マスを描いています。9つの各マスの中の四角い枠の中の記述はそのホームページで述べた内容のキーワード示しています。その枠の外に書かれている言葉はそこで使われる情報と得られる情報を示しています。図中の矢印は、そこで必要とする情報がどこで作られ、どこで使われかを示しています。この図からお分かりのように、何かをやろうとすると、そのために必要な情報をいろいろなとこらから集める必要があります。この矢印がマスの中を行き来しているのはお判りかと思います。従って一直線に作業がすすむわけではありません。ただ必要な情報がどこから得られるがわかりますので、必要情報が作られるマスに戻りホームページを参照して作成してください。

 このホームページにかかれていることは起業の時にどのようなことが必要かをひととおり例として描いたものです。この図を参考にして自分のケースについて情報を纏めてください。 

 不明なことや疑問事項があれば、それをメモに残しながら読んでいってください。そのうえで、今後も起業を続けたいと思う方は、起業活動を行いましょう。 
 まだ、次回から始まる起業活動は一度で成功するかどうかは解りません。 


 こうしてやることが決まったのでいよいよ実際に起業方法を決める段階に入ります。この時起業の具体的な事業規模はまだ決まっていないので「143. 起業の種類と事業形態」の「図表1  個人と法人でどう違うか」を参考にして特別理由がない限り最初は個人事業として起業準備 を始めることで準備をします。実行しながら、法人の方が実現の可能性が高いことが分かった時には、改めて法人でやる方法に方向転換をします。この方向 転換のやり方はこの後の起業継続の中で考えます。

業務手続の確立と学習

 ここまで述べてきたように、今後の仕事の最初は「図表10 仮想現実での学生起業」を行います。この図は「学生起業の道ー自分への備えー」の「図表1 学生起業の道」から図中央の4つの枠を取り出したものです。(起業の準備の部分は削除してあります。「10 6W2Hのやり方の見直しを何度か行う」で述べたように、専門家の十分な支援を受け入れるごとにやり方が変わることを考慮して、当初は現実の世界で起業を行うのは危険かと思い、当初は仮想現実のもとで最初に取り上げるモデル事業は「個人事業でスタートします。

vbl01110.jpg図表10 仮想現実での学生起業

 例えば、税務署への個人事業開始の届出は個人事業の開始・廃業届出書を税務署のホームページからダウンロードし、新たに事業を始めた時の届出という税務署のホームページを読みながら、その指示にあった形で起業ビジネスを行う納税地、氏名、生年月日という具合に記入して完成させ税務署と書いた封筒に収めるといった具合です。プロモーションの配布資料を作成するのであれば、Power point等を使って配布資料を作成します。売上高を推測する時には、販売地域の人口のうちどれくらいの人が自社製品もしくはサービスを購買してくれるかを予測し平均製品価格を乗じて書き出すといった具合です。同様にそのために必要な原価を計算して平均費用を計算して利益を予測するといったことも行います。

 これ等の仮想現実から現実に至るまでの詳細は次回の起業の開始以降で説明いたします。

 このシリーズの次回からはこのフリーランス起業を仮想現実のもとでの起業開始の手順・ステークホルダーとの関係・生き残りのための利益・事業の見直し・新しい条件での起業開始といった具合に手順を踏んで行います。このサイクルを回している間に、個人事業より会社事業の方がよさそうとなったら、会社経営で必要となる手続の追加と修正行いもう1サイクルします。こうして仮想現実の中で仕事のやり方にめどがついたら、仮想現実ではなく現実の世界で起業を始めます。この時に起業費用が必要となったら、事業計画を作成し資金の調達を図って事業を始めることになります。

おわりに

 今回は、仮想現実などというITの世界で使われることが多い言葉を使いましたが、内容は起業する世界を想定して、その中で起業活動を行うつもりで想定され る活動を行ってみることにより発生しそうな結果を予測して必要な準備を行うということです。いろいろな調査書類作成は行うが実際に官庁に申請書を提出するとか、商品やサービスを顧客に売りに行くといった社会にトラブルを起こしそうな作業行わないということです。

 こうして、何回か仮想現実の下で学生起業を続け、問題点を修正して起業結果の成果が予定に近いものになりそうと思えて来てから、実際の起業を開始すれば、学生起業の成功確率も何倍か高くなるはずです。

 この方法は、当初は仮想現実で、最後は現実に行う概念実証(PoC:Proof of Concept)の一種と考えて良さそうです。

 最近は新型コロナウイルの発生もあり、儲からない企業をどのように救うかの議論とか、失業した労働者をいかに援助するかが、テレビや新聞で報道されています。ここに起業の発想を入れれば、企業で働いている人の人生の選択肢(この場合は起業というより学び続ける、(転職)が増えてきます。そのような未確定の将来に自分で狙いを決めて活動するのが、一般的な起業活動であることを理解していただければ幸いです。

 参考資料の後に学生起業で成功事例を上げてあります。ご興味なある方はアクセスして読んでみてください。

参考資料
鈴木 ケンイチ、2022「ソニーのEV参入は大歓迎 小型EVの雄、田嶋氏が描く事業の縄張り」日経XTEC、
https: //xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01757/00006/?n_cid=nbpnxt_mled_dm(アクセス 2022/02/01)

瀬領浩一、2021「起業の準備ー自分への備えー」
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/151.html(アクセス 2022/01/30)

瀬領浩一、2021「100. 自業の夢を描く」
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/100.html(アクセス2022/01/30)

滝岡幸子、2016『マイペースではたらく!自宅でひとり起業仕事図鑑』同分社出版株式会社
東京大学、2021「2021年度東京大学アントレプレナー道場(第17期)」
https://www.ducr.u- tokyo.ac.jp/activity/venture/education/dojo.html(アクセス 2022/02/08)
Willfu、2021「学生起業したい人のための、学生起業のやり方まとめ」

https://willfu.jp /willfulab-4/startup-14 (アクセス 20220208)
船ヶ山哲、2020『10歳から始める!起業家になるための「7つのレッスン」』辰巳出版 
TECH CAMP、2022「学生が起業する方法!大学生のうちにビジネスを始めるメリット・デメリトとは」
https://tech- camp.in/note/pickup/38180/(アクセス2022/02/01)

学生起業の成功事例
 以下のような学生起業家で素晴らしい成果をあげている先輩起業家の資料もありました。これを読んで感じたことは共通しているのは、有名な人はどなたも大変 な苦労をされていることです。今回対象としている起業家は、こんな素晴らしい人になれれば幸せですが、普通の人が起業するという時代の起業家を考えています。

① 孫 正義
 学生時代にやったこと https://willfu.jp/willfulab-4/softbank_son_gakusei/
 ・学生食堂の運営
 ・音声付き電子翻訳機を開発しシャープに売却
 ・アメリカでインベーダーゲーム機の設置ビジネス
② 堀江 貴文 https://willfu.jp/willfulab-4/mr_horie_kigyou_hint/
 ・有限会社オン・ザ・エッジを立ち上げ  学校で学んだ専門知識や技術をビジネスに生かす受託開発が多い
③ 福島 良典 https://kigyotv.jp/news/special134/ 
 ・3年生の時にデジタルサイネージを主軸の事業MYHTEMを立ち上げ破産
 ・Gunosyを設立
④ 江副 浩正 https://www.dekirunin.com/media/job-story/6842
 ・リクルート
⑤ 村上 太一 https://kigyotv.jp/news/special173/ 
 ・リブセンス(インターネットメディア事業)
⑥ ビル・ゲイツ https://bookmeter.com/books/167159
 ・帝王ビル・ゲイツの誕生〈上〉学生起業家篇 (中公文庫) 
 ・マイクロソフト
⑦マークザッカ―バーク https://kigyotv.jp/news/special62/  
 ・Facebook


2022/02/04
  文責 瀬領 浩一