前回「157. 日本が生まれ変わるために 今何が起きているのか」では最近起きている社会的危機の中から、学生起業家の関心がありそうな次の4つのテーマについてどんなことが予想されるかをまとめました。
持続可能な環境 (空間)
コロナウイルス (仕掛)
日本の人口減少 (仕組)
命の危機 (時間)
この4つのテーマは、起業家から見ると外部の変化もしくは外部から求められることにより発生する危機です。前回お読みになった方には、ご自身の事業に関連する危機の中に上記の4つの分野に関連する危機が発生する可能性がありそうなものがあれば書き出してくださいとお願いいたしました。何かありましたでしょうか?無かった方はまったく危機感が無かったのでしょうか?それとも危機感を持っていたが、上記と関係が無かったのでしょうか?いずれにしても簡単で結構ですからも何か思うことがありましたらご自身の危機対策図のイメージを思い出しながら、今回の記事をお読みください。
例えば「持続可能な環境」は地球レベルの環境として全世界の人が考慮すべき項目をまとめたものです。これまでは人間の活動による大気や海水のような地球の環境変化についても、それらの原因を作った人たちが社会的負担として、それ相応の対策を行うべきであるといった考え方を元にしています。現在行っている起業活動のプロダクトや プロセスを変えて、エネルギーや大気の汚染を少なく出来ればそれらは利益の増加や顧客の高い評価や満足感や感謝を確保できることになります。そうであれば学生起業としても対応できるテーマです。ということで、一般的には危機と考えられる環境変化問題は、それらを解決する事業を始めることができれば学生起業家のビジネスチャンスになります。
同様なことがその他の危機についても言えそうです。すなわち危機対応はビジネスチャンスであるという考え方でどのようにして対処するかについてに4つの対策をまとめました。
図表1は前回まとめた危機対策図です。
図表1 危機対策
図面をクリックすると拡大図が見られます
「図表1 危機対策」では、前回の4つに危機の矢印(時間軸、空間軸、仕組軸、仕掛軸)の先に4つの対策を書いていますが、対策は必ずしも危機と1対1対応というわけではありません。一つの危機に対応する場合に複数の対策が必要な場合もあります。これを参考に皆さん一人一人のケースにあった対策を作成する時の参考にしていただければ幸いです。すなわち対策の事例図(FRB Framework By Example)と思って見てください。自分の起業に関連する対策を検討するための参考事例です。
ということで図表1では次の4つをとり上げます。
自分の立場を知る (空間) 自分は立場に合わせた準備を行う
どのように対応するか(仕掛) 例えば医療の危機はビジネスにも関係する
情報通信技術の利用 (仕組) 客の使いやすい仕組みを作る
政治と戦争 (時間) 対立により発生する命の危機を回避する
① 自分の立場を知る
「自分の立場を知る」は、個人事業家もしくは起業の経営者として事業を行う(マネージャー)の立場をまとめた部分です。マネージャーの立場については、「おわりに」の「図表6 6次元曼荼羅思考図」で説明しますので、後程ご確認ください。
これまでの第二次世界大戦後の日本の製造業は、西欧の先進国で売り上げが伸びている商品の生産を日本でやり始めたものです。すなわち機能も決まってお り性能も明確され売り上げもある程度予測される商品を生産する事業、すなわちすでに製品設計もマーケットも出来上がっている事業への挑戦でした。従って、さらに性能を上げたものを安い価格で生産できれば、ほぼ間違いなく成功する事業でした。このために必要な経営資産は製品の設計を行える技量と、生産機器もしくは道具を使って決められた作業を間違いなく行える能力を持っていることでした。一口で言えば西欧の前例を改善して行う生産でした。以前から几帳面に長らく農業で働いてきた日本人の基本的な能力を製造業に適応する方式でした。こうした日本人の強みを生かした事業は成功し、それを模範としていろいろ な製造業が日本で発達しました。また、この時代は内燃機関を使った生産用の機器のみならず、自動車や船のような運搬機器も生産され全世界に普及する時代となり、それまでの人間や動物による物の運搬が自動車や船で運べるようになりました。こうして高性能な日本製品は世界中で使っていただけるようになり、グローバルな市場で販売もできるようになりました。こうしたグローバルな流通環境にも支えられて、大量生産型事業が日本の得意分野となり企業の活動を効率化してきました。その後、人口減少とともに若者の少なくなった日本は、いくつかの部品の生産は東南アジアを中心とした人件費の安い地域に移すことにより、生産社員が少なくなる工場では自動化機械を採用することで低価格で大量に生産を続けることができ、大量に販売することでGDPの増大を実現しました。
ところが こうしてモノづくりの普及と同時に、新しい情報機器の製造も発達し、情報機器を使った新しい仕事の進め方が普及し始めました。こうして販売活動に加えて新しいサービスの仕組みが普及し始めました。このためこれまでのやり方を踏襲して低コストでつくる製造業単独では、世界の変化に対応できなくなってきました。
たまたま、図書館で本を見ていたら、出川通著、2008/06/10「『理科少年』が仕事を変える、会社を救う 『人性』をイノベーションする新思考法」(翔泳社)がありました。面白いことが書いてありましたのでさらりとまとめます。出川通氏は ここでは理科少年というタイトルを使っていますが、男性だけではなく理系少女にも呼び掛けている本ですと言っています。男女にかかわらず女性の方もお読みくださいと言っているわけです(男女平等との立場)。この本で、 出川通氏は現在の日本の製造業は「決められたものを、いかに安く品質良く作るか」から「新しいものを人に先駆けて作り出す」というパラダイムシフトに対応する時代に変わったといっています。
日本がジャパンアズナンバーワンと言われていた時代の日本の製造業では 不確実性を避けるために 創造性のような不確実なものは除いて計画を立てることが普通になっていました。このため技術者に必要とされる資質は勤勉性、規則順守性、関連技術情報でした。一方マネジメントにはリスクを冒さないリスクマネジメントが重要とされました。このために数値による管理(目標値)のための経験値についての統計処理やその結果予測される成果(達成値)目標が重要とされ各企業の生産管理も普及しました。すなわち統計的で計算できる数値でモノの管理することになりました。この結果従来と同じ機能で十分な物については、日本のモノづくり能力は高品質でばらつきの少ない優れた製品を供給することにより、世界中に広まったわけです。
またその考え方の基本はPDCA(Plan、Do、Check、Action)であり「カイゼン」と呼ばれ世界に普及していきました。新しいことを始めるときには十分に検討し計画を立て、その計画にもとづいて実行し、その結果をチェックし、必要な改善をおこなって行動を再開する手法として、世界に広がって行きました。このため技術者が本来持っている好奇心、探究心、創造性、冒険心、挑戦性は改善活動に使われ、新しいことに挑戦するチャンスはあまりありませんでした。
ところが今や多くの国で生きていくために必要な物は何とか調達できるようになりました。このためジャパンアズナンバーワンの考え方に加え「新しいものを人に先駆けて作り出す」すなわちターゲット(顧客のニーズ)に合わせたモノ作理の時代に入ってきました。
ところが、ジャパンアズナンバーワンに慣れてしまった日本の製造業は、素早く新しいニーズについていけず、新しい強みを生かせないために落ちこぼれが始まりました。さらにこのような状況に対応するためには自分の力を強くするとともに、自分の持つ資源だけでなく他者(ステークホルダー)の資源をうまく使いこなすオープン型のイノベーション起こすことが必要となったのです。
これは、理科少年と言われ少年が子供のころ持っていた常に新しいものに挑戦するという理科少年的な思いの元となるもので、学生時代に起業したいという思いとも重なります。ということで、最近のマネージャーに求められているのはターゲットが決まっているモノづくりの「プロセス・イノベーション」から新しいターゲット決めてからものを作る「プロダクト・イノベーション」への転換でした。
しかしながら、これまであまりにも製造過程のプロセス・イノベーションの徹底を図ってきたために、経営としてのプロダクト・イノベーションに乗り遅れた日本企業は当初持っていた世界最先端の通信技術を他社にまねをされないように公開できなかったり、公開活動が不十分であったり、タイミングが遅れ折角開発した 世界の最新の通信技術もすでに世界標準が決まってしまうと採用されないことにもなり、時代の進歩から取り残される状況が始まりました。
技術者の立場から言うと「言われたことをきちんとやりながら確実な改善点を明確にし、着実に実行していく」から現在は「自分自身でどんどん実行して(仕上げて)いく時代」になったわけです。このためには技術者は工場に閉じこもっているだけではなく、顧客の現場をみては顧客ニーズをしっかり把握したうえで、新し い世界へジャンプすることが必要になりました。すなわちベンチャー起業者になることでした。
似たようなことは「120. アクティブ・シニアの貢献 幼児期記憶を活用しよう」にも書いていますので、参考にしてください。ここで書かれていることは、幼児教育で学んだことはその人の大人になってからの活動に間接的に(意識することなしに)関係するので幼児時代に何を学んだかが重要であるという考え方です。さらに幼児教育の責任者はその幼児の両親であったと述べています。
すなわちこの記事の読者の学生さんに直接責任はないかもしれませんが、大学入試を目的とした知識を記憶することを中心とした教育だけでなく、いかに考えるかという教育の本質を義務教育に含めておくべき時代に変わったのです。私が大学に通学して1960年頃は、大学に入って最初の2年間は教養課程で後半の2年は専門課程でした。この教養課程の2年間には義務教育で学べなかった一般教養科目の「外国語科目」としての第二外国語としてドイツ語やフランス語、「保健体育」ではスポーツや健康に関する知識でだけでなく実践する講座を楽しむことができました。そこで所定の科目を取ると、キャンバスを移り「専門科目」の基礎を学ぶことができる段階に入りました。「専門科目」の実施は大学院大 学院で行われる方式でした。ところが、企業からの大学への要求として「専門教育」の強化を求められると政府は、一般教養科目は、大学の目指す「専門教育」 の時間を減らすことになるとして、「教養課程」しての2年の期間制限は解除されました。一方最近に至るまで大学に入るまでの基礎教育では教養教育が増えることはありませんでした、ということで今や幼児時代の活動で不足すると感ずる人は自分で時間を作り、人文系の他の学部の科目や外部セミナーを選び学ぶことになりました。そのような準備が十分にできなかった技術者は「教養課程」で学んでいた能力が不足することになってしまい、ますます言われたことしかできな いイノベーションの役に立たない専門家になってしましました。
これまでの日本の製造業は、組み立てから製造まですべてのプロセスをピラミッドとして自分のコントロールの元においてきました(垂直統合)。しかし「70. 内需不振をチャンスに ITpro EXPO 2012に参加して」に書いたように当時のサムソンは部品を世界中から集めていました。一方インテルはCPUだけ作っていましたし、アップルは製品を中国や韓国で作っているといった構造で自分の得意分野を絞っていました。そのために部品関係の綱がりは、世界標準を作ることにより複数企業の間で連携できる構 造を目指すようになったのです。この世界標準のリーダーシップを取った会社が、今後の製品アーキテクチャーを制し自分の得意エリアを活かし世界のリーダーとなったわけです。そのためビジネスモデルには垂直統合だけでなく水平モデルの部分も必要となりました。
私はこの時こそ学生起業家のチャンスと思っていたのですが、残念ながら日本ではこのような起業家を増やすことはできませんでした。この頃の日本の製造業は、あくまでも製造(社内活動)に中心をおき、材料や部品の海外調達 の場合も自社内システムで使える自社仕様にこだわり、世界標準化を図らなかったために製品の販売や部品の調達時にはその都度他者と交渉し依頼する対応が必 要となり、市場から廃除されリーダーシップを取れなくなりました。こうして日本の製造業の苦労、いいかえれば衰退が始まりました。
このような状態から抜け出すために、今後は自分の顧客や見込み客を逃さないように、世界標準の元で関連するサービスを行いながら(コンサルティングやシステム変更の相談に乗ることにより)、新規ビジネスエリアに参入する体制や対策が必要となります。学生起業家としては、自分の持っている技術だけにとらわれることなく世界標準となる技術に移行する方法やその使い方を取り込むこととそれを世界に広げることにより自分のシステムの利用可能エリアを広げておくことが重要になったわけです。
このあたりについては「151. 学生起業の道 自分への備え」に学生起業を行う時の準備事項目として、「図表6 自分への備え・学生起業」に起承転結の4つのステップで書いていますので参考にしてください。
こうして人類の幸福のためと思って、構築してきた人類のための市場経済の仕組みが、いつの間にか人類が生きる地球環境を破壊しない世界標準に基づきどのように対応するかを自分の立場から考えることが必要な時代となったのです。
② どのように対応するか
ここでは日本でコロナウイルスの蔓延にたいしてどのような対応をしてきたか、さらにはこれを契機に利用されることが多くなったいくつかの対策も纏めます。
日本でもコロナが広がり始めたころ、コロナウイルスの拡散を防ぐために、人が集まるスポーツサークルや市民活動が休止となりました。このため日常生活に変化 が出てきたので、新聞やホームページに掲載されている情報を参考にして「132. コロナ後のベンチャー -ITとOODAの有効利用-」を纏めました。「図表2 ITで世界はどう変わるか」はその時作成したビジネスの仕組みと仕掛けを考慮したテクノロジーの構図をITの利用とOODAによる柔軟な対応をとして考えるための曼荼羅図です。
図表2 ITで世界はどう変わるか
たとえば、コロナの蔓延を避けるために会社等で行われた、外出の制限、出勤の制限、自宅待機等により、これまで出勤してやってきた活動が不便になりました。このために自宅で仕事をできる仕組みを作りや、1か所に集まらないでも行えるネットワーク会議、印鑑の利用を止めてネットワークを使うことで会場に行かなくても済むといったような対応等が行われました。その結果、学校の授業もオンラインで行うものが多くなり、ほとんどの学生はインターネットにつながる環境で学ぶことになりました。
これらのやり方は業務の効率が上げるということで、海外の教育期間ではMOOC (Massive Open Online Course)のように以前から行われていたことでしたが、人と人との体面的なおつきあいを重視してきた日本ではあまり行われてきませんでした。そのため当初日本ではオンライン教育は業務改善ではなくコロナのための政府による強制的な施策であり、コロナ問題が解決したら元のやり方に戻すという前提で対策が行われました。このため当初は無理やり変更させられることで、面倒くさいし、間違いなく行えるか心配を抱える人もいました。しかし実際にオンライン教育を実施しているうちに、その利便の良さを知ることにもなり、その後多くの人が日本の生活習慣を変える引き金として使えることを理解するようになってきました。
同様に海外の多くの国で通常行われていた在宅勤務やネットワーク会議、キャシュカードによる支払いが、コロナ感染防止策として日本でも広がり始めました。たとえばコロナ対策としてやむなく始めた在宅勤務の採用により、設備費用としてパソコンやネットワーク費用がかかりますが、最近は多くの大学生は携帯パソコンもしくは携帯端末を持ち、家もしくはその近くにネットワーク接続を持つ設備を持っている時代ですからそれほど大きな問題にはなりませんでした。その結果、通勤時間は少なくすることができ、オンライン会議のおかげで会場まで行くための時間や費用も 少なく出来るようになりました。これらの効果は時間やお金の節約だけでなく交通に必要とするエネルギーの消費も減らすことには役立つと同時に、働く人の時間も少なくしました。人によっては育児の時間を増やすことにも可能になりました。
ということは、在宅宅勤務やネットワーク会議、キャッシュカードによる支払いは、業務改善として個人事業のマネージャーが行っても、そことお付き合いのある働く人や学ぶ人(ステークホルダー)には感謝されるような活動になったのです。少なくとも働く人や学ぶ人からクレームを受け、必要な対策費を国が支払うべきだといった議論にはならない時代が始まろうとしています。その実施も結果緊急時の対策として素早く行えたわけですから、技術的な問題もあまりなかったわけです。即ちコロナウイルスの問題として、外的災害として大騒ぎすることなく、国の責任者や企業のマネージャーが「①の自分の立場を知る」で考えるべき「普段から行うべきことがら」であったことが分かってきたわけです。
さらに飲食業のようにお客様が減って、大変と騒いでいる業種のマネージャーも単にウイルスへの感染者が減るのを待つだけでなく、ネットワークやオンライン化の普及をチャンスに、相談・注文はオンラインで行い配達は、専門業者にお願いする様なビジネスに変更するところがでてきました。こうして、既存のサービス業においても、顧客の負担を減らす活動や、業務の生産性向上により状業員の仕事の時間を減らすことにより、顧客だけでなく社員の家族の間のコミュニケ―ジョン時間を増やし、①のテーマとしていたエネルギー不足の削減にも役立つためのサービスに考えたサービス方式に切り替える必要が出てきます。すなわち、コロナ後も今の客がそれほど増えないという前提でお店でのサービスの在り方の改革を進めていかなければなりません。
こうした様々の変革活動の結果、今から5年後の2027年頃までにはどこにいてもオンライン会議やSNSによるコミュニケーションが普通になっていそうです。仕事の打ち合わせや情報の伝達のために東京から大阪まで1時間もかけて出かける必要性は無くなります。こうなるとリニア新幹線等は仕事ではあまり使われることも無くなりどちらかというと遊びやスポーツといった体を動かす活動を中心とした用途になりそうです。こうして乗客がスピードアップによる利益をあまり感じなくなるとリニア新幹線のような高速新幹線であっても距離当たりの乗車料金はほぼ同じということにせざるを得なくなるかもしれません(ただそれでは、設備投資の回収が出来るのか心配ですが利用者側から見るとどうなるか楽しみですね)。
その上、業務のオンライン化により、出張の必要性も少なくなるわけですから交通関係の事業者の収入は少なくなると、従業員を減らすために解雇や配置転換といった終身雇用制度の元では予定していなっかった雇用問題を発生させることになります。今から交通機関の役割をどうするのかといった事業目的の見直し行うといった対策を取っておく必要があるわけです。このような状況を実現する新規業務は、既存交通機関でなく、収入減を心配することなく事業開発を行える学生起業家のビジネスチャンスとなります。
一方コロナウイルスの診断・治療のために、検査の手続き、検査結果の報告、必要な対策(治療、自宅待機、入院)行うのであれは、工数が増えこれまでの設備や人員では大変なことになったのは当然です。しかも終身雇用制度の元では、コロナの場合のように急に逼迫が収まることを期待している場合には危機が収まると不要になる仕事を担当する社員は正社員として採用できません。その代わり高給の非正規社員の制度が必要となるわけです。
たまたま、これまでは日本ではコロナウイルスによるこのような大量の検査が集中したことはなく、今回のような医療体制の緊迫状況なことはなかったので、諸外国のように緊急対応の仕組みの検討は十分おこなわれてきませんでした。これを機会に将来のリスク対策として柔軟に対応できる仕組みを作っておく必要がありそうです。
例えば、新しい仕事が増えた医療の場合は、検査・治療体制のひっ迫も発生しました。この場合検査資料の取り方、手配報告のやり方を大幅に省力化できる仕組みを作りながら、対応するべきです。このためにはあたらしい検査・治療方法、検査報告 の仕組みを早急に開発することと、すでにどこかで行った診断を繰り返すことをしなくて済む医療情報の共通化が必要となります。米国の病院に行ったときに特 定の医療グループがそのような仕組みを作り、そのグループの全国地域で情報の共有化することにより検査の場所が変わった場合も以前の他の機関での検査情報を共有することにより適切な対応が出来るわけです。患者としては助かる仕組みと感じたしだいです。即ち不足する資源を増やす方法だけでなく、「新しいやり方を開発する」必要があるわけです。これらは学生発ベンチャーの目指す大きなエリアであることは間違いありません。
このような状況を見ていると、感染した患者さんには申し訳ありませんが、コロナウイルスは日本の物質輸送主義のやり方から情報交換時代のやりかたへの変革の遅れを取り返すチャンスとなったと考えることもできます。危機を変じて機会となったのです。ただこの時には、現在の日本の医療システムでの情報伝達や情報共有の方法により、患者さんの不都合が発生しない取り組みを用意しておくことが必要となります。
外国でおこなわれていることを取り込んだり、さらにそれを改善したり、医療現場の改善は人間移動中心の生活を大きく変える機会として、十分挑戦する価値があります。総合大学では、学内で学部間共通のプロジェクトですからすでに始まっているでしょうが、それ以外の大学でも、すでに、2022年8月9日発表の「国立大学法 人東京工業大学と国立大学法人東京医科歯科大学の統合に向けた協議を開始」といったことが始まっています。新しい事業の開発を期待したいこと思います。
ということを考えて①持続可能な環境で取り上げている地球の将来を考え、将来を考えるSDGsの取り組みについては「SDGグローバル指標(SDG Indicators)」(外務省)に表示される17個のロゴをクリックするとSDGsの説明を見ることができます。
図表3 SDGs目標3 すべての人に健康と福祉
出典:SDGグローバル指標(外務省)2020/02
「すべての起業が持続的に発展するために―持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド 資料編 第2班」を参考に作製
スペースの関係で字句は変更したものがあります
これを見ると「目標 3. すべての人に健康と福祉」あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。」がその候補となります。
その中に「ターゲット3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。 (https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal3.html)」があります。そのグローバル指標としては「指標3.3.1 非感染者1,000人当りのHIV新規感染者数」「指標3.3.2 10万人当たりの結核感染者数」 「指標.3.3.3 1,000人当たりのマラリア感染者数」「指標3.3.4 10万人当たりのB型肝炎感染者数」「指標3.3.5 顧みられない熱帯病(NTDs)にたいして介入を必要としている人々の数」といったものが挙げられています。この中にはコロナウイルスは入っていませんが HIVの一つと考えて対策を練ることになります。
また「ターゲット3.b 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する」があり、そのための「指標3.b.1 各国の国家計画に含まれる全てのワクチンによってカバーされている対象人口の割合」その他にも指標「3.6.2」薬学研究や基礎的な保険部門への純ODAの合計値があります。「指標3.6.3」持続可能な水準で、関連必須薬品コアセットが入手可能かつその価格が手ごろである保健施設の割合等が挙げられています。これらは新しい時代の仕事の進め方を考えるうえで、大変参考になります。これ等の多くは「今回のレポートの個人事業主による起業」の範囲に該当しないかと思いますので説明は省きます。興味のある方は「ターゲット3.3」のホームページをご覧ください。
主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への 医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものです。
3.c 開発途上国における保健に関する財政・人材・能力を拡大させる
3.d 健康危険因子の早期警告、緩和・管理能力を強化する
すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、
危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する
「指標3,d,1」国際保健規則(IHR)キャパシティと健康危機への備え
「指標3,d,2」選択抗菌役体制金による血液感染の割合
といったことが書かれており、何が必要かはよくわかります。
更に、直接コロナウイルスに関連することではなくても、皆さんが考えているもしくは行っている起業活動に関連することでコロナウイルスの蔓延により不安を覚える目標には次の様なことも考えられるかもしれません。
「目標1:貧困を無くそう」コロナウイルスによって、学校の状業が影響を受けることが難しくなることによる
「目標4:質の高い教育をみんなに」や、子育て中の母が学校お休みになったために出勤できなくなる
「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」、クラウドを無くすために発生するお客の現象による競業を強いられる
「目標8:働き甲斐も経済成長も」しよう
「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」
「目標10:人や国の不平等をなくそう」
「目標12:つくる責任つかう責任 持続可能な生産消費形態を確保する」
等も重要となってきます。更に、直接コロナウイルスに関連することではなくても、皆さんが考えているもしくは行っている起業活動に関連することでコロナウイルスの蔓延により不安を覚える目標には次の様なことも考えられるかもしれません。
ここでは、コロナウイルスという危機について考えていたはずですが、SDGsからヒントの得られる対策も沢山あるとわかっていただければと思います。ほかにも内閣官房から出されている新型コロナウイルス感染症対策、基礎資料:SDGsの概要及び達成に向けた日本の取組 にコロナに関連しそうな起業を行っていらっしゃる方はぜひご参照ください。
以上、世界では数千万人の死者を出してきたコロナウイルスでしたが、島国日本では起きないであろうと思ってか十分準備してこなかった日本でのコロナウイルス危機についての対策事例です。
③少子高齢化社会を乗り切るための情報通信技術の利用
少子高齢化はすでに起きてしまった未来で、今から変えることができません。
これからできる対策は生産性を上げることにより少ない人口でもこれまでと同じか、できればそれ以外の成果をあげる体制を創るために
1. 海外からの若者の移民による働く人を増やす
2. 世界的につながった情報システムのもとで、国内のサービスを行う
3. 高齢化世代の人も女性も差別なく働ける環境(ツール、教育制度、情報交換、物の移動)を作る
といったことを実現することです。
ここでは1.の海外からの若者の移民については、学生起業で対応するのは難しいので話を2.3.の情報システムに絞ってまとめました。
まず日本の情報通信についての資料は、参考資料にあります「情報通信白書 HP 紹介」をアクセスすれば、令和4年情報通信に関する現状報告の概要、本編(全体図)さらには資料編の3つのPDFを参照できます。一度目を通していただけると幸いです。ただしこの資料は、情報通信の運営を担当する総務省から出され たもので、情報通信を提供・監督する人の立場から書かれています。詳細な内容が書かれていますが、この本では情報通信システムはどのような機能の組み合わせで出来上がっているかを説明しています。このため情報システムを設計する人や情報システムを作製する人たちには参考になりますが、どのような目的に対してどのように使えばいいかといった利用者の視線から見たものではありませんので、ご注意ください。
また令和2年度版情報通信白書の第一部には「2019年9月末時点では携帯電話の契約数は1億8千万以上に達し、人口普及率は142%となっている」と書かれています。このように携帯電話の普及度合いは人口数を超えていても高齢者や病院等での患者さんのように携帯電話を使えない人もいらっしゃいますので全面的に携帯電話に頼ることはできませんが、90%位の人に役立ち、マーケットは十分期待できますから。固定電話をビジネスのも とにしている活動されていらっしゃる方々には申し訳ありませんが、学生起業家には携帯電話そのうちでもスマートフォンの有効利用を考えた仕組みを築き上げるようにしていくように考えるのがよさそうです。また、現在はエネルギーの元となる燃料の輸入価格も高くなりがちですから、今後は情報通信技術を生かした地産地消のエネルギー革命にも期待が寄せられています。
このような中国や韓国で普及しており効果的で未来志向のスマートフォンを使った情報通信技術がなぜ、日本普及しなかったのかについても考えてみます。
企業の投資対象は過去に利益を上げた実績があるものに向かいやすく、たとえば次の様な傾向があります。
情報処理会社では蓄電池、風力発電のビジネス実績はほとんどない。
固定電話のサービスを行っている会社としては、過去に固定電話回線に投資したまだ十分利益を上げるまで行っていないところもあるので固定電話システムの廃棄になるような新規アプリケーションの活動には積極的には参入したくない。さらに固定電話であれば電話回線を持つ現行固定電話の接続をすべて取り仕切っており、集中大量生産で効率を上げている。ということでできればスマートフォンによる情報システムに移行したくない。
一方、「図表2. ITで世界はどう変わるか」の中上の枠内にあるように以下の7つの大変化は次の様になっています。
1.データがすべての価値の源泉となる
2.あらゆる企業がサービス業になる
3.すべてのデバイスが「箱」になる
4.大企業の優位性が失われる
5.収益はどこから得てもOKで、業界の壁が消える。
6.職種という概念がなくなる
7.経済学が変わっていく。
このリストを書いた2020年の6月ころは、日本ではテレワークの効率は悪いが66.2%、満足していると答えているは57.2%と書かれています。
何度も、書いてきていますが、これから使う基本ソフトは世界標準で、ステークホルダーと交渉しながら必要機能をマネージャー自身でも作れるような機能を持ったものを選ぶことです。いわば自動車教習所に行けば1か月くらいで免許が取れるようになりどこのメーカーの自動車でも運転できるようになるのと同じことです。特定のメーカの自動車は、性能がいいが従来の操縦方法では運転できなくて大型トラックやブルドーザーのように新たに教習所に通わなくてはだめとなったら、一般の自動車利用者はそのような自動車を選ばないと思います。このように全員に共通した知識や訓練で利用できるソフトを選ようになります。こうして自分も共通したソフトの使い方が分かれば、新しい危機が発生した時でも容易に対応可能になるわけです。このようなソフトを選び学ぶことは「①の自分の立場を知る」の実施項目の「自分への備え」の一つとなります。
図表4 新型コロナ時代のIT技術
と同時に、これ等の機能を使いこなす能力も必要です。個人事業者が自分でこれらの機能を使うことができない時には、「事業を委託(外注)」する必要があるが、 少なくとも経営者として、事業のどの場面でどの技術を使えるかを知っておく必要があります。即ちサービス業の中でも手続きのような同じことを繰り返す仕事は IT、IoTや,AIを利用することで自動化していくのはいかがでしょうか。この図の青色の6角形は情報システムですが、楕円部分は人材もしくは組織 能力です。個人事業としてこれらを手配し使いこなせない場合には、必要な機能については学習してから始めるか、フランチャイズでスタートすることで補うことも考えたらよさそうです。
こうして必要な新システム機能を明確にして、使える能力を磨きつつ目的達成を目指してシステムを構築していきます。システムを導入することは目的ではありませんので、使える能力を見ながら導入していくことにしましょう。このようにシステムを分割して導入していくとなると、その仕組みは汎用的・もしくは標準的な物を使わないと、途中で互組み合わせることができなくなることがありますので注意ください。こうした標準的なツールや仕組みを組み合わせながら、自分の起業(事業)の独自性を発揮できるような形で導入していくという考え方です。
ここまででお判りのように「新しい時代に素早く対応出来るためには」ソフトウエアはグローバルスタンダードな物を使用し、顧客の要求に柔軟に対応するには自分もしくは自社の社員で構築して修正や再編成ができるモノを使はないとこれからの時代を生き続けることは難しいのです。
④ 経営・政治・戦争
こうして、顧客の要求に柔軟に対応し自社の強みを発揮できるような体制をつくって、前回とり上げましたが、危機が発生した時に対応しながら、利害関係者(ステークホルダー)の満足度を維持していくための目的(パーパス)を実現していくのが起業家(マネージャー)の役割です。通常はこのような対策は経営と呼ばれますが、目的の対象によっては戦争と呼ばれることもあります。
国際警備会社の代表取締役小山内秀友氏の書いた「安倍氏警護の批判に『的外れ』が多い理由、SP(Security Police)の人数や銃声後の反応は真因とずれ」には要人警備業務は次の3つからなるといっています。
① 事前対策 :警備対象者に起こりうる脅威を事前予測し、その脅威が起こらないようにし、脅威が起きた時の警備対象者が被害にあわないようにする準備
② 発生時対応:事前対策を行っても事件が起きてしまう危険は10%くらい起きるそうです。その時に警備員が取る行動が即時介入です。
③ 事後対処 :しかしそれでも危険が起きてしまった時には、被害を最小限にするための行動が事後対応です。応急処置、安全な場所への非難、警察・救急等への手配、逃げ遅れ者の確認などがあります。
まさに、戦時体制の即戦力を重視したOODAの計画に似ています。小山内氏は2022年7月6日の安倍元首相の事件の警備では、この3つのどれもできていなかったといっています。
一方、ロシアのウクライナ対策のようなことが日本の周りで発生しないようにといろいろとられている対策の一つがが日本の次期戦闘機の開発パートナーづくりです。Yahoo Japan、ニュースの20220630「日本の次期戦闘機(仮称F3)の開発パートナーが、米国から英国に変更された理由―新『日英同盟』の時代」には次の様なことが書かれています。
ここでは、次期戦闘機とはなにか、なぜ共同開発なのから始まっております。当初は「日本主導の日米共同開発」が方針で、その下請けとして外国の軍事産業の協力を得ることにしていました。このため英自動車会社のエンジンや米航空会社の機体を使うことで進めていたが、英国の会社がロッキードマーティンの役割を担うことになり、日英共同開発と舵を切ることになりました。その理由は日本の次期戦闘機と米国の無人次期戦闘機の基本構想が異なっていたことではないかと述べています。軍事産業もシステム統合と言われフラット化する時代となってきている事例の一つです。ただ軍事産業が完全に分かれたということでもなく、相互の了解を得ているという記事です。
「103. 夢と悪夢は表裏一体 失敗の本質に学ぶ」では100年くらい前の第1次世界大戦から第2時世界大戦その後の日本の成長の状況をまとめ、どんな時に失敗したかを学び、作成した今の自分についてまとめたマンダ ラ図に鈴木博毅氏の「『超』入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ」を重ね合わせることによる、戦略検討の方法を提案してい ます。
「122. 過去の中に未来を見る アクティブ・シニアにチャンス」では西国立志編で取り上げている活動をマンダラ図に描き出しており、その学習の部分に次の様なことが書いています。この中では株主資本主義的経営と日本型経営において売り手よし、買い手良し、世間よしの「3方よし」の項目の比較とともに、IoT時代の生産性については「人間をじっくり育て、創造力、意欲、チームワーク力を延ばせば数倍、数十倍の働きをする。」と述べています、現在このような力を有効に育成しているか不安を感じざるを得ません。行動項目については次の様なことが書かれています。
1-10 偉人の伝記をひもとく
1-20 勤勉に励み続けることで成功を勝ち取る
1-34 自ら助くる人となる
2-2 労働は最善の教育の場である
4-6 反復こそが技術習得の最短距離である
5-20 前例にとらわれない思考が大きな成果を生む
5-26 メモをとることの重要性
6-3 自ら時間を作り出して学習に励む
8-3 つまらない骨折り仕事こそ最善の教育の場である
9-6 自分自身の力で自立する方法を見つけよう
9-10 自らの非は素直に認めよう
11-33 苦難は最善の学校である
11-12 書物は目的を持って読む
12-15 良書から偉人の心を学ぶ
12-16 伝記を読むと人生が変わる
12-17 偉人の功績というバトンを受け取る
11-22 自己修養が自らを幸福にする
11-29 困難は最善の教師である
11-30 知恵は失敗から学ぶ
11-32 逆境は人を天に導く階段である
出典:「122.過去の中に未来を見るーアクティブ・シニアにチャンスー」図表6
クリックすると拡大図が見られます
この各行は西国立志編の目次を書き出したものです。例えば最初の行は「1-10 偉人の伝記をひもとく」ですがその最初の数字「1」は編番号、次の数字「10」は編の中の項目番号、その次の「偉人の伝記をひもとく」が項目のタイトルです。またこの記事のサブタイトルは「ーアクティブ・シニアにチャンスー」となっていますが、参考にする情報は自分の過去の経験と「西国立志編」ですので、学生起業の場合にも十分使えます。ぜひ目を通していただければと思います。
1992年(平成4年)と言えば、学生起業を考えている皆さんには随分昔の話ですがこの時に大前研一氏・田原総一郎氏によって書かれた「日本大改造案」にはこれからは 日本が大きく変わらなければいけないということを書いています。昭和憲法とアメリカのおかげでこれまで、日本は一人当たりのGNPが1万ドルを超えるという国家繁栄のために邁進できました。しかしそれも期限切れとなりつつある。お金については政治献金や権力に、権力の維持には小選挙区制、国民に対するお金のバラマキシステム、政治家の間では派閥抗争がはびこり、基本的なところに問題が発生している。このような仕組みを自分たちのことは自分の責任で行うといった考え方で改革する必要があると述べ、現状を細かくまとめています。そのうえでこれを促進するために日本を変えようという有志集団「平成維新の会」を作って日本を変えようという有志の集団を作りましたという話です。
2012年に第2次安倍内閣をスタートされた安倍晋三氏は、2006年に発行した「美しい国」を改定して、2013年に「新しい国へ 美しい国へ 完全版」を発行されました。その間にも景気低迷、迫りくる外交・安全保障上の危機といった日本を取り巻く環境の下で、どのように政治を行うつもりかをまとめたものです。自分の 政治家としていた時の原点をまとめた後、自立する国家とは何か、ナショナリズムとは何か、日米同盟の構図はどのようなものか、アジアと中国との関係の中で の日本、さらに少子国家としての日本、その対策としての教育、新しい国へどのように向かうかを書いています。
2016/09/25、武田邦彦氏が書かれた「原発と日本の核武装 原子力事業のタブーを明かす」では、マスコミでは議論されていない、「原子力発電」に関わる、隠れた事実を筆者の経験をもとに書いています。
まずは福島県の原発事故の裏でどのようなことが行われていたのかに始まり、原発を再開したい人達の考えていることを整理し、それに対して政府、マスコミ、専門家は無責任体質の元でどのように対処してきたかが書かれています。その結果福島の住民は還ることができるのか、なぜ日本では原発と核武装が必要なのか?
このような状態を乗り越えるには次のような非常識的なことが起きない体制を創る必要があるといっています。
・もともと被爆はすぐには症状が現れないのに「被爆してもただちに健康影響はない」という官房長官の発言といった。言い訳ができればウソをついてもいいという考え方。
・被爆限度は1年1シーベルトと日本の法令を決めたのに日本政府や自治体はICRP(国際放射線防護委員会)が1年20ミリシーベルまでよいと言っていると回答しているくらい避難時の訓練ができていない体制。
・薄っぺらいプラスチックの上っ張りのようなものを「放射線防護服」と言っているあきれるほど非科学的な社会。
このような状態を乗り越えるには次のような非常識的なことが起きない体制を創る必要があるといっています。
岡留康文著、2010/10/01「非核三原則と核密約論議~反核と核の傘のはざま~ 外交防衛委員会調査室 岡留 康文」(立法と調査 No309、8)には「非核3原則 持たず 作らず 持ち込ませず」が書かれてかれており、「持たず 作らず」は昭和30 (1955)年12月の議員立法で制定されています。
朝日新聞、2022/0818「なぜ戦争するのか 永遠 の問い 『自分ごと』として向き合う時」(17面)の戦後77年の記事の中で、戦後日本は奇跡的な経済成長を遂げたために敗戦国として苦悩する時間はあまり長く続かず、「戦争が終ったあとはどうするか」といった問題に十分付き合わずに過ぎてしまいました。といことで養老孟司さんは「一人ひとりが厳し い選択を迫られる状況におかれなくては、この国は変りません」と言っています。
亡くなられた安倍晋三元首相の書かれた「新しい国へ 美しい国へ 完全版」のあちこちに「戦争を避けるには、相手国に 得るものより失うものが多いことを、知っていただくことです。常日頃、そのための情報を集め、わかりやすい説明を続けることが外交と言えるのかもしれません。」といったことが書かれています。
私はこの本を読みながら、戦争で考えるべきことで一番重要なものが「人の命」と思いました。戦争時に相手の兵士を狙うのは、兵士が一番味方の人の命を奪うからです。さらに兵士の力を大きくするのが兵器で、その兵器の性能を向上させるのが情報機器とそれらを開発する技術者や工員です。一般住民もこれらの力を助 けている人は、兵士の一部のようなものです。となると兵士を支援している住民を殺害するのも戦争の戦略の一つになるのは仕方がありません。
自国の兵士に加担していない人はそれを相手国に伝えない限り安全ではないということです。ただこれを自国の政府に伝えると、非国民として政府から罰を受けることになるかもしれません。このように交渉力は相手だけでなく自国にも納得をいただく必要がある一筋縄ではいかない「信頼される力」の一つです。起業運営 の場合と同じく競争相手の立場も十分考える必要があります。
ところが、最近の日本の新聞を読んでいると、現在の戦争はロシ アのウクライナへの侵攻を非難するという立場から書かれています。あたかもプーチン大統領が悪者のような感じの記事が目立ちます。どうしてプーチン大統領はこんなにウクライナにこだわるのだろうかと思って調べていると、東洋経済オンラインのHPに的場 昭弘氏が書いた「ロシアとウクライナが『こじれた』複雑すぎる経緯 歴史で紐解く『ウクライナは民族国家なのか』」という記事がありました。そこには次の様に書かれています。
長い歴史の中、ウクライナは、ヨーロッパの主権争いに巻き込まれてきました。1991年にソビエト連邦が崩壊し、ロシアと独立国家共同体(CIS)とになりました。ウクライナはこの独立共同体の一つです。2014年2月22日ロシアが支援するウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ氏が失脚。この親ロシア政権の崩壊を機に、ロシアはただちにクリミア半島に侵攻し、翌3月には併合。ウクライナ各地で親ロシアの分離主義勢力が抗議行動を起こしました。ウクライナは2022年6月23日にEU加盟国候補になりましたが、いつEU加盟国になるかは決まっていません。こうした経緯が、現在の戦争に至っていると、多くのウクライナ人は認識しているようです。
歴史を振り返ってみると、ロシアとウクライナのどちらのやっていることが正しいかを考えても答えは出ません。安倍晋三氏の言っていた、外交の重要性を思い起させる戦争です。ということで、学生起業でどのような貢献ができるか明確にできそうもないので、政治活動についてはITシステムを有効利用する以外はあまり深入りしない方がよさそうです。
いかがでしょうか、今回は4つの危機のうち現在自分の起業に影響をもたらしている危機を回避するために役立ちそうな対応方法を中心に、まとめました。
このあとは4つの危機のうち現在自分の起業に一番影響をもたらしている危機を回避することを選び出し、その中から最も効果のありそうな対応を一つに絞り、検討を進めていくことになります。
例えば石川県で原発攻撃を受けるかもと考えた時。志賀原子力発電所で発生した場合は避難者の当事者として対策を考える必要があるでしょうし、福井県の志賀原子力発電所で発生した場合には避難者の受け入れをどのように行うかといった具合に発生する危機とその発生した場所と自分の居場所によって、対応項目はそれぞれ異なってきます。
このようにこれ等4つの危機に限ったとしてもそのうち、自分の起業に一番影響をもたらしてい危機を回避するのに役立つ対応方法を探し出し、それを中心に検討を進め、その結果をステークホルダーに知っていただくために、図表6にあげたような6次元曼荼羅を作製しておくことをお勧めします。
図表6 6次元曼荼羅思考
出典:「136. IT時代のコロナ後対応ー6次元曼荼羅思考ー」図表4
「図表6 6次元思考」に書いた左上の「グループ楕円」に書かれた3つの枠内(外部、外部資源、やりたいアイデア)に対する活動を行うグループのマネージャーの役割は学生起業家の役割になります。これまで多くの学生さんが卒業後就職することになった時の自分の役割は図表6の「個人の楕円」に書かれた感性、資源、立ち位置の役割もまた学生起業家が担い、これ等を統合した「時間の楕円」である過去、現在、未来の方針や活動も学生起業家が行うというすべての責任は学生起業家が行います。すなわち学生起業家は曼荼羅思考のすべてを行うわけです。
一旦自分に関係する6次元曼荼羅を作製しておけば、危機と感ずるようなことが発生したら、危機に対応するために変更するべき事業プロセスの修正候補を書き出し、その中からどれがこの中から自分が対応でき重要と思えることに集中して対応しましょう。
また今回の「日本が生まれ変わるために」は基本的には大学発ベンチャーの約20%を占める学生ベンチャーを中心に考えています。
大学発ベンチャーの60%弱を占めると言われている研究成果ベンチャーについては外部への責任者は大学の先生となり、学生は「個人の楕円」の立場になります、この場合は「時間の楕円」の責任者は大学の先生となりますが、学生さんはその補助をしながらその精神を行うこともできるかもしれません。
このように学生起業者は学問の学習生活以外に個人事業の「マネージャー」と「個人ワーカー」の2人分の仕事を行うわけですから、その大変さを知っていただければ幸いです。過去の学生起業家の成功事例を見ていても、労働時間は1日8時間、土日はお休みといったサラーリーマンのルールはとても守られていません。いわば将来はオリンピックで優勝したいと頑張っているスポーツ選手や、世界で活躍する芸術家や、自分の思いを文書に残したいと考えている小説家のような生活です。体や心が壊れないように注意しながら、できることを増やしながら、学生起業をやってみませんか。現在の多くの大企業もイノベーションを起こすために、そのような経験を持っている人を採用したいと思っているはずですから、企業活動を中止することになってもそのような大企業での新規事業開発の仕事を探すこともできるような能力をつけることはできそうです。ということですから、とりあえずやりたい学生起業に挑戦してみたらいかがでしょう。
2022年9月10日の朝日新聞第1面のトップ記事「非課税1600世帯5万円給付 ガソリン補助減額せず延長」のように悪い結果にたいする対策を出すものの、その原因を正す対策とはならないような政府の対策を見ていると、これから日本が生まれ変わることは難しいような気がします。その場しのぎの補助金給付は、国民の人気取りとしてやってるのかもしれませんが、それでは効果は限定的で早めに切り上げる活動を生み出す考える経費節減動機 (施策の改善動機)は生まれません。補助金が必要となる原因を無くするような施策を考えることに力を注ぎそれまでの時間稼ぎとしての対策(期限条件付き対策)と考える必要があります。時々有効期限付きの補助金政策が発表されることがありますが、その時はなぜその時までなのかを明確に述べるべきです。さもないとそれより良い施策を考える動機(施策の改善動機)は生まれません。
今回得られた教訓を簡単に纏めると次の通りになります。
① 正しい技術革新も時には悪になる
② 発生が分かっている危機には早く応策案を作製しておく
③ 相手の要求の変化を早く知り対策を取る
④ 正悪は結果次第の場合は生き残ることを優先
皆さん、何が正しのか、何がいつ起こるかを予測できない時代が始まったようです。日本が生まれ変われるために、起業家精神をもって新しい事業を起こしてみませんか?
参照資料
Yahoo Japan、20220630、「日本本の次期戦闘機(仮称F3)の開発パートナーが、米国から英国に変更された理由」
https://news.yahoo.co.jp/articles/843af5e759d0b9403c7dbf97d52dafd2f568dd40?page=1、(アクセス 2022/07/08)
朝日新聞、2022/0818「なぜ戦争するのか 永遠の問い 『自分ごと』として向き合う時」
安倍晋三、2013/01/20「新しい国へ 美しい国へ 完全版」(文芸春秋)
大前研一・田原総一郎、1992/11/30「日本大改造案」(徳間書店)
岡留康文、2010/10/01「非核三原則と核密約論議 ~反核と核の傘のはざま~」「立法と調査」掲載
https: //www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/20101001.html (アクセス 2022/08/28)
外務省、2020/02「すべての起業が持続的に発展するために―持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイドー 資料編 第2版」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal3.html(アクセス2022/07/20)
外務省、「SDGグローバル指標(SDG Indicators)」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/index.html (アクセス2022/08/28)
小山内秀友、2022/07/28「安倍氏警護の批判に『的外れ』が多い理由、SPの人数や銃声後の反応は真因とずれ」
https: //diamond.jp/articles/-/307054?utm_source=wknd_dol02&utm_medium=email& utm_campaign=20220731(アクセス 2022/08/28)
財務省、2022「令和4年 情報通信に関する現状報告の資料編PDF」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/pdf/01siryou.pdf(アクセス 2022/08/29)
令和2年度版情報通信白書の第一部
財務相 令和3年版情報通信白書 情報通信機器の保有状況
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd111100.html
財務省、2022「情報通信白書 HP 紹介」(アクセス 2022/08/29)
財務省、2022「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要PDF」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000822128.pdf(アクセス 2022/08/29)
財務省、2022「令和4年 情報通信に関する現状報告の全体PDF」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/pdf/01honpen.pdf(アクセス 2022/08/29)
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瀬領浩一、2008/10/6「32. 個人プレー時代の終焉秘 「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」プログラム」https://o- fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/032.html(アクセス 02022/07/15)
瀬領浩一、2010/09/14「44. ベンチャーならどうする_マシンツールフェアOTAに出席して」
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瀬領浩一、2012/10/16「70. 内需不振をチャンスに ITpro EXPO 2012に参加して」
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瀬領浩一、2014/09/25「89. ベンチャーマインド教育について 第11回 全国VBLフォーラムより」
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瀬領浩一、2020/07/28「134. ジョブ型自業への道 -ニューノーマルの雇用型」
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/134.html(アクセス 02022/07/15)
領浩一、2021/01/13「139. みんなで世界を良くしよう 起業家意識で組織を変える」
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/139.html(アクセス 02022/07/15)
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出川通、2008/06/10「『理科少年』が仕事を変える、会社を救う 『人性』をイノベーションする新思考法」(翔泳社)
内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策」
https://corona.go.jp/(アクセス 2022/08/28)
基礎資料:「SDGsの概要及び達成に向けた日本の取組 」
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_gaiyou_202206.pdf) と
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「ターゲット3.3のホームページ」
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal3.html)(アクセス 2022/09/07)
東京工業大学、2022/08/09「国立大学法人東京工業大学と国立大学法人東京医科歯科大学の統合に向けた協議を開始」https://www.titech.ac.jp/news/2022/064662(アクセス 2022/09//09)
的場昭弘、2022/02/25「ロシアとウクライナが『こじれた』複雑すぎる経緯 歴史で紐解く『ウクライナは民族国家なのか』」(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/514936(アクセス 2022/09/10)
2022/09/13
文責 瀬領浩一