2014年11月12日から13日、簡保の宿「伊豆高原」にて金沢大学39年度機械科卒 同窓会(同期会)が行われました。今回は大学卒業後ちょうど50年目を記念して関東でやるということに なっていました。2013年の春からいろいろ相談しながらようやく実施にこぎつけた同窓会でした。2013年末に出席のお返事をいただいていたのは22人でそれに合わせて準備していたのですが、 同窓会の出席者は15人となりました。昭和39年の卒業生は60人くらいですから、出席率は約25%でした。
私は写真係として皆さんに金沢大学で働き始めた2003年春からこれまでの印象の深かった12枚の写真とその簡単な説明することになっていました。上記の状況を知り、話題提供として 小子高齢化社会どう過ごすかをベンチャー的視点でまとめ「70にして立つ(自業のすすめ)」と言う話を追加しました。今回はその時お話した「少子高齢化」とその対策を考えるため「自分の 立ち位置」をまとめたものです。
お返事を頂いた34人の欠席の理由は、9人が体調不良等、7人は都合が悪い・遠方です、3人が地域の役職・その他での欠席でした。これに連絡のつかない人、案内にお返事のない方を 含めると、同窓会のメンバーにとって小子高齢化の問題は次の2つです。
1.孤独:返事がない、都合が悪い
2.健康:体調不良
また、同窓会に参加されている1941年前後に生まれた人が大学に入学された1960年、それから55年後の2015年、さらにそれから10年後の2025年の人口構成は 平成26年度版高齢者白書概要版によると図2のようになります。
この図では同窓会に出席された人と同年代の1941年頃に生まれた人(図2の左のグラフの赤楕円)が1960年にどれくらいになるかを赤楕円で示しています。その人たちが全員生きていたら 2015年および2025年にはどれくらいなのかを示したのが、図2の中および右図赤楕円です。図2では同級生の約9割が55年後の2015年に活動していると推計しています。しかしながらさらに 10年後の2025年には2015年の約8割になるとも推計しています。ちなみに厚生労働省の「平成25年簡易生命表の概況」の主な 年齢の平均余命によると70歳男子の平均余命は15.28年、女子は19.59年です。
図2より、高年齢者が増加するにもかかわらず、高年齢者を支える生産年齢者が減少するので、生産年齢者が年金支出を支える現在の仕組みでは、年金を7割もしくはそれ以下に削減 しなくては成り立たないことも分かります。
こうなると現在の年金制度では第3の問題
3.貧困
が表に出てくると考えざるをえません。
これらに対しては、平成26年度版高齢者白書概要版の平成26年度の高齢社会対策 に図3のようなことが示されていますので、ご興味のある方はそちらを参考にしてください。
幸い今回の同窓会に参加されている人々は、同窓会の案内に応じて参加しているので少なくとも孤独ではありません(第1の問題)。さらに飲み会を含んだ宿泊の会にわざわざ参加する ために全国から集っているのですから健康の問題もない人です(第2の問題)。そして遠方から来られている方は交通費も含めると1人・1月分の食費に相当するくらいの費用を払って参加して いるわけですから貧困(第3の問題)というわけでもなさそうです。すなわち少子高年齢化で懸念されている3つの問題(孤独、健康、貧困)とは縁のない幸せな人達(アクティブシニア)でした。
しかしながら、最近は円安が進みドルベースで考えると年金基金や国民所得は少々増加しても追いつかないくらい減少しています。その減少傾向はTPP交渉が進む本格的なグローバル化 時代を迎えると円ベースの費用にも反映してくるはずです(インフレ)。そこに少子高齢化効果による年金減少が重なり、このまま円安が進むといろいろな対策をとったとしても実質年金は 相当減少すると考えざるをえません。
図3にはいろいろな高齢社会対策が示されていますが、今70代の人には間に合いそうもありません。今貧困でない人も含め自分で対応する方策を考えておいた方がよいかもしれません。
ということで、まだ生活に余裕がある同窓会に参加されたメンバーに高齢者ベンチャーの機会を探してみましょうと問いかけたのが、今回のタイトル「70にして立つ」です。なお ここでのベンチャーは経済活動事業ではなく、高齢者を元気にする活動を行っている人(未知の人生への探検家)のことです。そのためにベンチャービジネスとの違いをはっきりさせるために ベンチャービジネスの事業にあたるところには自業という言葉を使っています。(すなわちベンチャー自業です)
その準備として、皆さんにまず自分の立場を確認してみましょうと図4のアイデアプール(思いついたアイデアを書き込むためのフレームワーク)を提案し説明しました。
このアイデアプールは「魚眼マンダラで1枚に」で提案したマンダラ図法を 使って高齢者の向きの自分の立ち位置位置確認用のフレームワークにしたものです。9つの四角い枠の上部には分類、枠の中の赤文字はアイデアの内容、そして黒文字の部分には記入入する アイデアを抽象的(例として)に記述してあります。使うときはこの黒文字の部分を自分に当てはめて具体的に記述していけばよいわけです。
赤文字のアイデアの部分のもう少し詳しい説明を以下に示します。
作られた世の中
環境とは人間の認識できた外部状況のことですから、人の作りものです。解釈する人の立場や行いたいことによってどうにでも変わります。すなわち自分(記述する人)の作り物であると 割り切って素直に自業(自分のやりたいこと)に影響を及ぼしそうなことを書き出します。
共有可能な根拠
万人が認めている法則や従わないいと罪になる法律・規制や自分が正しいと思っている他人のアイデア等のうち、自分のやりたいことや夢の実現に役立つこと、もしくは反対に自分の 行動を制約すると思うことを書きます。
可能性を広げる
ここには自分の出来ること(可能性)の範囲を広げるアイデアを記述します。これまで出来なかった新しい可能性を見つけることができればそれだけ面白い自業ができるはずです。
他人の力を評価
自分の能力不足を補って目的達成に役立つものが外部資源です。そこでは使いやすさ(距離・時間)と使った効果(目的にあっているか)が大きくて、困った時に役立つ事(助けに来て くれるか)が重要です。特にシニアになってアクセス範囲が狭くなってくると下記に示した資源を十分吟味しておくことです。連絡をとるために特定の人のイメージできるものが重要です。 (人脈と呼んでもよさそうです)
家もしくは歩ける範囲で利用可能な資源
インターネット
近所の友人
近所にある公共機関、趣味の会
短時間で利用可能な資源
車や公共機関を使って会える友人
車や公共機関を使っていける公共機関のサービス
短時間で利用可能な資源
何かに貢献
ここには今すでにやっていることでやめられないことや今後もやりたいこと、さらには自分の可能性を広げるために活動したいことを記述します。
競争する関係というより、貢献するという立場(ほかの人に価値がある)で活動項目を記述しましょう。
あくまでも今やりたいと思っていることを記述することであり、良い結果が得られるかどうかは問いません。やってみて、将来よい結果が得られないと分かったら、その時に辞める とかやり方を変えればよいと割り切りましょう。その時幸い良い貢献が出来たことが分かれば、さらにその方法を改善するようにやることを変えるので、ここはあくまでも今限りの活動です。
リードする力
自分の参加する活動チームの人たちに役立ち必要に応じで参加者をリード出来る力のことです。
高齢者の多くは、物理的に残された時間は少ないのですが、年少者の場合は学習に使う時間や、生産年齢者の場合は収入を稼ぐために必要な労働や他人との関係でやらざるを得ない 時間があるため、その時に比べれば自分だけの時間はたくさん持っている方も多いはずです。その代り高齢者はその時間を生かすための健康維持を図り、活動を行うための体力を確保する 時間を十分にとっておく必要があります。
過去の仕事経験を通じて蓄積した知識や知恵のいくつかは、これからも役立ちます。これまでの経験の中から、今後も役立ちそうなものをピックアップしておくことです。その結果 得られた目に見える成果は実績として評価されますのでこれらも思いつくだけ挙げておきます。また活動の前提となるスキルや資格も書き出しておくことです。
今回の同窓会に参加された人の中にも、料理教室に通っている人や教えている人、毎週ゴルフやテニスやっている人もいました。これらも他人をリードできる程度に高めておくと、 多少無理をしても参加しようとして、自業遂行の前提条件である体力を保持しておく動機付けになります。
ありのままに受け入れる
現状は過去の蓄積ですが、ついつい過去の経験を自分の価値観で評価した結果を記述しがちですが、これらをすっかり忘れて、自分の関心のあることについて事実を事実のまま 第3者的立場で記述することです。
感情の源
シニア活動は、若者の仕事のような義務的な活動を続けるものとは異なり、自分のやりたいことを中心に行うので、情熱を失ったときは容易に挫折してしまいがちです。その意味では、 宗教や義理と人情、地域貢献、恩返しといった仕事とまったく関係ないことを基礎においておくことも役立ちます。時にはわがままといわれるかもしれませんが、これまでの経験をベースに した直観を働かせることも役立ちそうです。
活動の場作り
待っていても自分の活動の場は誰も作ってくれません。これら活動の場は若い時に企業に就職しその中で与えられる役割と異なり、外から与えられることは少ないと考えた方が よさそうです。従って自分で活動の場を創りそれをリードしく覚悟でいかなくてはなりません。これはベンチャー企業を作ろうとするアントレプレナーそのものです。若い人の アントレプレナーとの違いは、活動の成果の回収期間を短くせざるを得ないことが多いため、どうしても近所づきあい的な活動となり、家族が最初の協力者となることが多くなるかも しれません。活動の成果の回収期間を長くするためには体験を生かした起業提案で 報告した2013年度の金沢大学アントレプレナーコンテストで最優秀賞を受賞された「テクノアルタ」のように、グループ活動としてリーダーが卒業してもグループ活動は続くといった方法を 採用する方法もあります。余談ながら今回の同窓会の幹事長をされた堀河氏は活動の場づくりの名人のようでした。1年以上前から幹事グループの打合せを始め、皆の意見や情報を整理し皆に 伝えるとともに、合意を取り、会場となるホテルには事前に宿泊し調査し、同窓生の名簿を配り出欠の状況や近況を伝え、当日は出席者の心をつかむような進行役を務め、同窓会が終わった後 には事後報告をする。まさに活動の場づくりのケーススタディを見ているようでした。
一通り書き終わったら、次に挙げるようなベクトルで今やろうとしていることをチェックします。(多次元思考)
1.今やろうとしているこことは、将来の夢を実現するために現状を変える方策になっているだろうか。(時系列に無理はないか)
2.おかれている環境と立ち位置を考えると今やろうとしていることはそれらと矛盾しないだろうか。(実行環境に無理はないか)
3.自分の力や人脈でやりたいことは実施可能だろうか。(仕組みに無理はないか)
4.自分が信ずる理性や感性から見て十分やる気になることだろうか。(仕掛に納得出来るか)
図4を書き上げた時に矛盾を感ずるような記述や違和感があれば、修正して納得できるものにします。より正確な計画を立てようと立場の分析を精緻化する手法を探せばいくらでも 見つかると思います。しかし活動を始める前に仮説を立てて考えても、実施するまで、本当は何が必要で何が重要か分からないことが多いと思います。そこでしばらく実行してうまくいかない と分かった時に、それを正す方法を探して適用するという方針( リーン・スタートアップ)でとりあえず先に進めます。
ただこうして作成した、今自分が貢献したい事柄はあくまでも自分本位に考えたものです、これが社会に受け入れられるものであるかは不明です。しかしながら高齢者のほとんどは それほど多くの資金を持っている分けではありません。したがって受け入れ調査を十分行って、成功の保証があれば設備投資をして実行するという第2次産業的企画の考え方は使えません。 したがって調査の前に、まずは売り込みをかけて市場を探す活動を行うというベンチャー的発想を使うことになります。
こうして自分のやりたことがイメージできたら、次は活動でメリットを受ける人の合意を取る方法を考えなくてはいけません。すなわち次のステップは、何を売り込むかという商品企画 です。自分の能力を知り経験もあり人脈もあり、何をやりたいかも整理されているのですから。商品企画の前提の顧客は人脈のある所、売り込みたいものは自分が今やりたい事、営業担当は 自分となります。これらは図4自分の立ち位置の真ん中横1線(仕組み)そのものです。そして進めるにあたって検討すべき項目は 商品コンセプトの探索で説明した多次元思考図を使えばなんとか表現 できそうです。
幸い、多次元思考図は何を考慮すべきか(What is)を表現していますが、どうやって考えるべきか(How to)は表現していません。「70にして立つ」を実施しようとする経験豊富な高齢者の 方は、新たに方法論を学んであれこれ悩むよりすでに会得されている方法論をお使いになることをお勧めいたします。未経験の部分の方法論や不都合があらわとなった場合だけ、 インターネットの検索システム(Google、Yahoo検索等)や商品コンセプトの探索 に記された文献やリンク先を調べれば何かヒントを得れる思います。どのような方法論を適用するにしても、図4の中1線(仕組)が前提となっていることを忘れないことです。
今回は少子高年齢化社会で懸念されている3つの問題(孤独、健康、貧困)の中から、孤独を避ける方策の一つとして、「ベンチャー自業(生きがい)」を起こすため必要なことを 中心に纏めました。
ベンチャー自業を実践しようとすること自体が孤独から抜け出す事です。そのために健康を維持しなくていけないとか病気を治し健康になりたいとの動機付けになります。その うえ活動を続けるための体力づくりの動機付けになります。さらには他人に貢献する活動を見つけリーダーとして(率先して)実施していけば、その貢献度に応じた収入を得ることもできる はずです。こうして自活できる高齢者が増えていけば、同じ国家予算でも病気等で自活の難しい高齢者向けの支援を増やすことも可能になります。少子高齢化といわれるこれからの社会、 単に高齢者支援を増やすという考え方でなく、高齢者自ら生産的活動に携わるベンチャー自業を増やし、自活できる高齢者を増やしていきたいものです。
2014/12/11
文責 瀬領浩一