人と地域のWEBマガジン ISHIKAWA DRAWER

Keigo KamideCreative director of Kutani pottery

上出惠悟上出長右衛門窯クリエイティブディレクター

多様性×可能性。広大無辺の九谷焼。

Person

#02

2016.05.18

記念すべき2010。

ただ、そういったプーマとか髑髏とかの活動は作家ではなくて長右衛門窯としてやってるんですけど、作家がやっていると思われてしまい。取材も受けるんですけど、長右衛門窯をフックアップしているのに「九谷焼作家の上出惠悟さんが」という書かれ方をしてしまって、それが空しいというか悲しいというか、いつも怒っていて。どうやったら長右衛門窯のことを知ってもらえるんだろうと思いながら、ハイメ・アジョンというスペインのアーティストとのコラボを2010年に発表しました。それまで自分はデザインもできるし、デザイナーと組んで何かやるということを全く考えてなかったんですけど、彼とだったら面白いことができるかもしれないと思って。ただ、その当時からハイメ・アジョンは有名人で、バカラやリアドロ、フリッツ・ハンセンとか、そういった大きなところと仕事をしている人だったので、ウチなんかお金も出せないし、やってもらえるわけがないと思ってたんですけど、とんとん拍子に話が進み、正式にオファーする前にデザインが届いて。
それで、実際に彼と制作することになったんですけど、その時にちゃんと父親に前に出てもらって、祖父も出たり家族でやっていることを丁寧に説明したりして、ようやくメーカーというか家業ととらえてもらえました。2010年以降ですね、長右衛門窯の名前を知ってもらえるようになったのは。その当時は上出惠悟に来る仕事をほとんど全部長右衛門窯で返していました。バナナを扱いたいというお店を断って、他にも面白い九谷焼ありますよ。笛吹はいかがでしょうか?って。今はもうそんな問い合わせはありませんが。

※バカラやリアドロ、フリッツ・ハンセン:左から、フランスのクリスタルガラス、スペインの磁器人形、デンマークの家具ブランド。

陶房の黒板に描かれた、ハイメ・アジョン氏による絵。撮影時間がバレますね。

地元のチャージャーな山。

僕は山が好きなので、小さい時からしょっちゅう山に一人で行って。別に何もしないんですけど、元気をもらうっていうか。何山と聞かれても山の名前が分からない。お気に入りの山があっちの方にあって。この辺は、温泉がいっぱいあるのがいいかな。銭湯が大体温泉ってのがいいですね。美川温泉ほんだっていうとこ。松任にも結構好きな温泉があって。すごい狭いんですけど。地元の人しか来ないような、そういうところが好きで。▲#!※の駅の近くに■?%$*っていう餃子屋さんがあって、友達を連れて行くと結構喜んでもらえたりしてるんですけど、取材がNGみたいです。カウンターしかなくって、真ん中で餃子を焼いてる無口なお父さんがいて、こっちではおばちゃんが餃子を作って、こっちではラーメンを作ってて、こっちにはおばちゃんがいて、みんな並んで作業をしていて、クラフトワークのライブみたいな。カウンターの前に溝があって、等間隔で蛇口が付いていて、そこからコップに水をシャーって。そういうのってあまりないので、餃子が嫌いな人でなければ、割とそこに一緒に行くことが多いです。

※あっちの方:鶴来とか、辰口の和気の方だそうです。
※クラフトワーク:ドイツのテクノグループ。40年以上も活躍しています。

ウルトラチャージ後っぽい表情の上出さん。指のしなり具合はさすが。

問題あれど、可能性もある九谷。

産地ってどこもそうですが、下の方から小さくなっていくっていうか。作家は脚光を浴びるので目立つんですけど、たとえば筆を作ってる職人さんですとか、釉薬(うわぐすり)を作っている職人さんはそうではない。九谷焼は絵が中心で、生地を作っている人の名前は出ず、最後に絵付けをした人がサインを書いて商品になるので、そこに脚光を浴びないっていうのが一番の問題だなと思います。どの産地もそうだと思いますが、一番目立つところはみんななりたくて来るけれど、「九谷の釉薬屋さんになりたいです」って来る人はいないですよね。
九谷焼って何でもありだし、節操がないっちゃ節操がなくて。九谷焼の店に行っても色んなものがあって、ほかの焼き物みたいに「これ」っていうものがないっていうか、それを見つけられない。唯一は絵があるってことくらい。俯瞰してみないと九谷焼っていうものが分からなくって、でもそれってどこか世界と似てて。九谷焼は世界を表現できるっていうか。絵の可能性って無限にあると思っていて、何て言ったらいいか分からないんですけど、絵で表現できないものってないじゃないですか。だから九谷焼は世界を表現できるっていうか、翻訳できるっていうか。そういう風に九谷焼の可能性を感じていて。黒人も白人もいて、僕らもいて、偉い人も悪い人も、今生まれたばかりの人もいるし、歌が上手い人も踊りが得意な人もいる。誰よりも早く走れる人もいるし、動けない病人もいるし、幸せな人や孤独な人もいる。あと犬や猫もいる、そんなような多様さ。食卓から世界を覗けるというか。まあ、たまには何も描いてない白い器も使いたくなると思いますけど。

プロフィール

上出長右衛門窯 クリエイティブディレクター 上出惠悟さん

 

1981年、能美市出身。九谷焼窯元「上出長右衛門窯」の6代目にあたる。東京芸術大学を卒業後は地元に戻り、すてきな企画や商品のデザインについて考えている。スペインのデザイナー、ハイメ・アジョンとのコラボや九谷焼の転写ブランド「KUTANI SEAL」を立ち上げるなど、若い層に九谷焼を知るきっかけを与えた立役者でもあります。

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上出長右衛門窯〒923-1123 石川県能美市吉光町ホ650761-57-3344