人と地域のWEBマガジン ISHIKAWA DRAWER

Takayuki Kondo

会宝産業株式会社 代表取締役社長
近藤 高行

Credo
#09
2017.07.25

Introduction

会宝産業株式会社は、世界87カ国に中古車や中古部品を輸出する自動車リサイクル業を行なうほか、解体の工程で得られる廃油を活用した農業活動にも取り組んでいます。快活な表情で業界の未来を語る、近藤社長の「クレド」をお伺いしました。

Q.1

御社のクレド(信条・行動規範)、教えてください。

掲げている言葉はたくさんあるのですが、私が一番大切にしているのは「相手の喜びを自分の喜びとする」。2015年に、先代からこの会社と共に受け継いだ言葉です。実は、先代が社長を務めていた2014年までは右肩上がりだった業績が、私に代わってから一時期落ち込んでしまって。社長を交代するということで4,5年をかけて自分なりに準備をしてきていましたから、会社全体のことを把握して動かしていける自信があったのに、すごくショックでした。そこで、なんとかして業績を上げなければいけないと数字を追うことに集中すると、信条がだんだん薄れていく。「どうすればお客様に喜んでいただけるか」ではなく「どうすれば売り上げが上がるか」ばかり考えているものだから、何も返ってこないんです。当然ですよね。当時は毎日のように自分を責めて、「やはり先代がもう一度社長になった方がいいのではないか」と考えたりもしました。だけど、ずっとそんなことを言っていても仕方がないので、考え方を変えることにしたんです。この状況はきっと今の自分に必要なことだから起こったのだと考えるようにしました。そして「相手が喜ぶことをする」という信条に立ち返ったのです。自分たちはお客様に何ができるかということを社員みんなで意識し始めて動いた結果、数字も順調に伸びてきて、今はV字回復に向かっています。言葉をもらったときは頭でしか理解していなかったけれど、このようなことが起こって、本当の意味を実感しましたね。 もう一つは、「あいさつ日本一」。あいさつを意識している会社は多いと思いますが、うちは事務所だけではなく現場でも徹底的にあいさつをするようにしています。見学に来られる方が非常に多いのですが、皆さん口を揃えて「どうして現場の人がそんなにきちんとあいさつできるんですか」とおっしゃってくださいます。普通は作業中にお客様が来られたら、作業をしながら「いらっしゃいませ」と言う程度ですよね。それでは良くないということで社員が自ら考えて、お客様が来られたら作業の手を止めてあいさつをする。フォークリフトに乗っていたら、一度降りてあいさつをする。それも全て「どうしたら喜んでいただけるか」を考えた結果なんです。営業や事務のスタッフも同じで、一度電話をかけてくださった方がいたら、電話番号と名前まで登録します。そして次にかかってきたときは「〇〇会社の〇〇さんですね」と名前で呼ぶんです。どうしてそこまでサービスに力を入れるかというと、うちが「解体屋」だから。今はリサイクル業とか静脈産業という言い方をしていますが、世間の人のイメージは「解体屋」のまま。汚いなあとかやんちゃそうだなあって思われていると思うんですよね。それを変えていきたいという気持ちが常にあります。

Q.2

「働く」って、なんですか?

「働く」って、「はた(傍)をらく(楽)にする」とよく言うじゃないですか。本当にその通りだと思います。周りの人たちを楽にするというのが働くことの根本かなと。うちではいろいろな試みを行っていて、まず社員同士のコミュニケーションが「ありがとうカード」。誰かに何かを手伝ってもらったりしたとき、その場では「ありがとう」と言えるんですけれど、そこに本人がいないと忘れてしまったり表現できないことが多い。それをきちんと表現しましょうねというものです。同じことをしていても人によって見ているポイントが違ったりもするので、「ありがとうカード」をもらった人も、誰にどんなことをしたら喜ばれるかということがわかるんですよね。そして、私から社員へが「いいね報告」。先ほどもお話ししたのですが、外部からお客様が見学に来られると、「あいさつがすごいですね」とお褒めの言葉をいただくことが多いんです。そうすると私は鼻高々になるわけなんですけれど(笑)、よくよく考えたらそれっておかしいなと。私ではなくて社員が褒められているわけですから、きちんと社員に伝えないといけない。それでFacebookのいいね!をもじって始めたのが「いいね報告」です。お客様に褒めていただいたら、翌朝の朝礼時にみんなの前で発表することにしています。そうすると社員はまたいいね!を獲得したいので、もっと頑張ってあいさつをしようというモチベーションにつながる。誰かが自分を見ていてくれる、ということだけで頑張れたりしますからね。

Q.3

いしかわで働く意義って、なんですか?

石川にこだわっていることはなくて、たまたま生まれたところが石川だったというくらいです。ただ客観的に考えると、田舎だけどほどよくいろんなものがある。食にも恵まれていますし。私には子どもがいるのですが、子どもにとっても良い環境だなあと思っています。自然から学ぶことってたくさんありますし。会社としても、「自然」は一つのキーワードです。人口が増えてきて何が起こるのかというと、みんな自分の生活を楽にしたいから車が売れます。メーカー側はそこで一生懸命売ろうとします。そして売れます。では売れてからどうなっていくかというと、後始末が必要になるんですよ。でもみんなそこはあまり考えないんですよね。「誰かがやってくれているだろう」と思って見ないようにしているし、ほとんどの人はきれいな新しいものを作っている会社を「良い会社」だと思っている。だけどメーカー側だけが「良い会社」なのではなくて、我々のような業種のイメージを同じところまで引き上げていかないといけません。それが私たちの使命だと思っているんです。だから私たちなりに伝え方を考えてアプローチしようと、毎年8月の第一日曜日に「リサイクルまつり」という催しを行っています。メインは車の解体ショー。マグロみたいでしょう(笑)なかなか目にする機会もないですし、小さい男の子なんかすごく喜んでくれるんですよ。子ども向けのイベントとして、そのほかにも縁日やスーパーボールすくいなどいろいろなことをしていますね。社員が先生となって「リサイクル教室」も行っています。ヘッドレストのカバーをはがして、シートベルトを付けてトートバックを作ったりとか。今年はホイルキャップに時計の針を付けて置き時計を作る予定です。夏休みの工作になるので、親御さん達にもすごく好評ですよ。たくさんの方に参加していただけるとこちらも嬉しいですし、そうやって少しずつ、私たちの行っていることを世間の人たちに知ってもらえたらいいなと思っています。

Q.4

休日の過ごし方、教えてください。

朝はジムに行って、帰ってきて家族と外出することが多いです。休日も頭の中はずっと会社のことなのですが、頭だけではダメで体も鍛えていかないと。「運動」という字も「運を動かす」と書くじゃないですか。体を動かすことによって運も動かすことができるんじゃないかと思いますし、家族ももちろん大切ですから。家で一緒にいるのも良いのですが、外へ出て見たものや体験したことを共有して思い出にしていきたいんですよね。

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  • 会宝農園で栽培中の「しあわせのトマト」。びっくりするほど甘いです。
  • 全員おそろいのツナギ。黄色が会宝産業のテーマカラーなのだそう。
  • リサイクルエンジンの品質を表すタグ。きれいな六角形をしています。
  • 普段は目にすることのない光景が、敷地内のあちこちに。
  • ある瞬間、絵になる後ろ姿が。現場って、かっこいいんです。