人と地域のWEBマガジン ISHIKAWA DRAWER

Kazuki ShimoyamaDirector

下山和希セコリ荘金沢 ディレクター

つなぎ、つむぐセコリ荘。ものづくりはいとをかし。

Person

#04

2016.08.08

足を運んでみるものだ。

工場を回って感じたのは、自分が想像しているよりも、本当に現場では手間ひまのかかる仕事をされているんだなっていうこと。取材活動を始めたばかりの頃は、初めて見る現場の景色に感動していただけだったのですが、足を運び続けると、この感動を他の人にも共有したいと強く感じるようになりました。まだまだものづくりの現場は閉鎖的なイメージが強いので、僕らはものづくりの背景から北陸産地の魅力をより多くの方に紹介していきたいと思っています。

 

合繊繊維は化学繊維でつくられた糸を使ってつくられた素材で、北陸地域で国内の6〜7割のシェアを占めています。その技術力と品質は確かなもので、国内の大手アパレルメーカーや海外のビックメゾンに素材が採用されているのですが、業界的にBtoBのやり取りが多いために一般の方に知られる機会が少ないのです。メーカーさんやデザイナーさんに素材を紹介したいという想いは強いですが、より多くの方に産地の魅力を紹介していきたいと思います。「セコリ荘金沢」で気軽にお茶を飲みながら産地や素材を話題にしつつ、この地域のものづくりを伝えていきたいと考えています。

 

※BtoB;Business to Business、企業間取引のこと。

変遷の只中にいる面白さ。

取材は、1年で5、60か所は回りました。商品の買い付けもしていたので、作家さんに会いに行ったり、クラフトマーケットにも積極的に行くようにしました。漆器や鋳物、ガラス、和紙、陶器、各地の文化に根付いたものづくりが北陸にはたくさんあって面白いですね。その中でも驚いたのが、福井の「ろくろ舎」です。鯖江の河和田地区というところで誕生した、ろくろ挽きの技術を活かして日用品をつくっているブランドです。杉の間伐材を使ってつくられたTIMBER POTという鉢が
インテリアライフスタイル展でYong Designer Awardを受賞したことをきっかけに、ドイツの展示会に出展するなど、土地のものづくりを海外に発信しています。

 

伝統工芸の取材では、何百年も前から使われている素材と受け継がれてきた技術を使い、現在の生活用途に合わせた新しいデザインに出会うことができました。世代交代がされているのを知り、時代の流れを感じることができるのも取材の楽しさの一つです。

「ろくろ舎」の工房横にあるショップ店内。思わず手に取りたくなるものばかり。

来る人が、セコリ荘をつくってくれる。

アパレル・繊維業に携わる人たちが集まったり、立ち寄れる場所にしていきたいと思っています。うれしいことに、地元の工場の方が「こういう素材があるんですよ」と、新しく開発した素材を持って来てくださることも。「一緒に商品開発しませんか?」というお話をいただくこともあります。セコリ荘金沢ではそうした北陸産地のものづくりの魅力を国内外の方々に届けるために、平日は繊維工場を中心に現場に出向いて取材を行い、外部のメディアに寄稿させていただくこともあれば、セコリ百景やセコリ荘金沢のブログといった独自のメディア、SNSを利用して情報を発信しています。

 

また、お借りした素材はデザイナーさんにご紹介、製品化のご協力をさせていただきながら店舗でも展示し、訪れてくださった方々に北陸のものづくりを知っていただけるように説明しています。また、お客さまと一緒に現場で生産風景を見学する活動も行っています。今後、金沢以外にも拠点を増やしたいですし、各地に「セコリ荘」のような活動を行うプレーヤーが増えることを願っています

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