141.高齢者はデジタルで

141.高齢者はデジタルで

-Pythonで社会に貢献できる実力を-

はじめに

 このシリーズの「92. 70にして立つ」では少子高齢化社会での同窓会の様子、「122. 過去の中に未来を見る」では西国立志編にあるような100年も前の心構えが参考になるというように、過去の経験を生かすことができるアクティブ・シニアに活躍のチャンスがあると書いてきました。しかしながら高齢者の寿命が延びていても、体力や記憶力の低下もあると希望する組織で働くこともできず、過去の経験を生かすこともできなくなるケースが発生します。またそのためにスキル向上の機会も少なくなっている人もいます。

 このように思っているときに若宮 正子 氏の著作、『老いてこそデジタルを。』、1万年堂出版という本を見つけました。この本では、すでに若い人たちは、スマートフォンをはじめいろいろなデジタル機器を使いこなしている。高齢者もデジタルを有効に利用することにより、体力の低下を補えば過去の経験を生かした社会貢献ができるというのがその趣旨です。

 そこで、過去の経験で学んだことを生かしてデジタルの世界で貢献するための道具として、コンピュータ言語Pythonを身に付けられないかと検討したのが、今回のお話しです。

 なおこの中には多くの参考資料から得た情報が書かれていますが、あくまでも読んで私が解釈したことを記述していますので、詳細をお知りになりたい場合は出典をご確認頂けるように巻末には今回参考した資料(参考文献ではなく参考資料)を掲載しております。

第1章 老いてこそデジタル

 図表1は若宮正子氏の書かれた「老いてこそデジタルを。」の目次をマインドマップ風に整理したものです。

vbl-krsdjt01.jpeg図表1 老いてこそデジタルを 目次

出典 『老いてこそデジタルを。』(若宮正子、2019) の目次を参照して作成

 この本の著者プロフィールによると、若宮 正子 氏は「昭和10年(西暦1935年)に生れ、定年をきっかけにパソコンを購人し、楽しさにのめり込む。シニアにパソコンを教えているうちに、エクセルと手芸を融合した「エクセルアート」を思いつきました。その後もiPhoneアプリの開発をはじめ、デジタルクリエーター、ICTエバンジェリストとして世界ご活躍。シニア向けサイト「メロウ倶楽部」副会長、NPO法人プロードバンドスクール協会理事と熱中小学校教授をしている。」ということで、アナログ時代の幅広い経験を踏まえて、デジタル時代の世界でも有名なプログラマとして活躍している人です。

1.1  生きがいをもって

 図表1にあるように『老いてこそデジタルを。』(若宮正子、2019)の1 章から4章にかけてはシニア世代の人にとって現状はどのような時代になっているかについて、デジタルはシニアの大きな味方、インターネットにつながるといいこと、シニアのための安心スマホ教室、知っておきたいセキュリティのことといったお話しが書かれています。

 さらに第5章デジタルを活用して豊かに生きる」には、これからシニアはどのように生きたらよいかについて、自分の経験を図表2に次のように書いています。

vbl-krsdjt02.jpeg
図表2 デジタルを活用して豊かに生きる

出典 『老いてこそデジタルを。』(若宮正子、2019) の目次を参照して作成

01 ボケ対策にはクリエイティブなことをするのがいちばんということで、エクセルというソフトウエアの「セルの塗りつぶし機能」や「罫線の色つけ機能」を使ってアート(作品)を作る。「ワードでお絵かき」ではワー ドの「図形の塗りつぶし機能」や「罫線の色付け機能などを使った描画の世界。ビデオ撮影を行い、動画の編集、キャプション(ナレーション)、BGMを加えた「作品」を作ってきました。

02 さらに無料アプリを使って、ピアノやお琴を使った音楽を楽しみました。

03 翻訳ソフトを使えば、どんな言語も読めるので、外国人とのおつきあいや海外のカンファレンスでの講演に使いました。こうしてグローバル活動が容易になりました。

04 「プログラミング」というと、会社や家でパソコンに向かってひたすら、プログラムを作る「オタク」を連想するかもしれませんが、現在はプログラミング業務も多様化しオタクでなくてもこなせる時代となって来ています。現在の日本は多くの人が車の免許を持つようになり、車を運転できるようになったのと同じく、これからの時代はプログラミングは多くの人の基本的なスキルになりそうです。

05 汎用性の高く多くの人々に使ってもらえるソフトやアプリ作りは専門家にまかせるとして、現場を知っている人が「自分の身近な人に役立つ「自分にとって使いやすいアプリ」を自分で開発することができる時代になりそうです。こうして、高齢化とともに、退職に追い込まれたり、難聴になり人の言うことがうまく聴き取れなくなったり、これまでできたことができなくなるといった、喪失体験が多くなった高齢者も「プログラミング」スキルを使って「何かを作る」体験により、獲得体験を得られ、元気を取り戻すことがでそうです。

06 もうすぐやって来るキャッシュレス時代。手段に応じて賢く使い分け。クレジットカード、電子マネー、デビットカード、スマホのQRコードで決済が中心となる時代が来ています。

07 これまでの人に命令されたことだけを、命令通りにやるデジタル機器と違い人工知能(AI)は一つ一つ細かく命令しなくても、以前にやった仕事から学ぶことができるものです。

08 このため、AIの時代には非認知力(柔軟な発想をしたりする能力)といわれる柔軟な発想のできる「人間力」が必要です。そのためには自分の周囲のことについ てよく知ることや周りの言っていることでなく「自分だけの世界」を持つことが必要になります。

09 新製品の開発に、日々頑張っている若者たちにエールを。

10 「あったらいいな」と思うことは、私たちから社会へ訴え続けましょう。
これらのデジタル技術は高齢者の活動を支援し元気づけするものですと言っています。

 そして最後に付録として、老いることで能力を失った機能を補完するにはデジタル機器で補えばよい、ということで次のような具体的な例を挙げています。
1.難聴をカバーする道具として「音声を明瞭化するスピーカー」、「骨伝導マイク」、「通話の文字が見えるサービス」
2.目の機能を補う道具として 「視角障害を補う電子メガネ」やお金を認識するアプリ
3.物忘れ、記憶力の衰えには「検索」ソフトで検索、スケジュールはカレンダー・アプリで、相手の名前を覚えられなくなったら、顔認 識のアプリで対応
4.体が思うように動かなくなり、寝たきりになったら 、「移動用ロボットで移動」、「AIスピーカーに語りかけることで対応」

 他にも、若宮 正子 氏は『独学のススメ 頑張らない!「定年後」の学びかた』(若宮 正子、2019)で、「独学」とは勉強する本人が主体性をもって、自分で「何を学ぶか」「どのようにして学ぶか」を決めて勉強することです。と言っています。

 この2つの本をまとめると「独学」により、AIツール(デジタル)を学べば、高齢者はこれからの社会に貢献出来、幸せな人生を送れるようになれると聞こえ勇気付けられます。

第2章 AIの歴史

2.1 人工知能と機械学習

 ところで、AIツールにはどのようなものがあるのだろうと調べているときに、「簡単入門 AI(人工知能)と機械学習の違い」(フクロウ、2020)を読んで、AIは図表3のように発達してきたと理解しました。

vbl-krsdjt03.jpg

図表3 草地の広場 

出典 https://www.sejuku.net/blog/55834 をもとに筆者が作成

 1950年ころに人工知能が賞賛を浴びた時に人間のようにいろいろなことができるドラえもんのような「強いAI」ができるのではないか、と思われていました。しかしすぐには実現できそうもないことが解りブームは去り、1980年に統計学的処理を使った機械学習が始まると再びAIに注目が集まりました。 そのブームも収まり、2010年頃から深層学習(ディープラーニング)と言われる技法が始まると機械学習がブームとなりました。

 機械学習はドラえもんとは違い、囲碁や将棋や医療診断のようにある特定の問題に特化した「弱いAI」です。しかしある特定の問題に限れば人間以上の能力を発揮し、人間の仕事を助けてくれます。

 若宮 正子 氏がデジタル化の例として取り上げた難聴をカバーする道具、目の機能を補う道具、物忘れ、記憶力の衰えを補足する「検索」、体力不足を補う移動用ロボットには、程度の差はありますが機械学習の機能が使われています。

2.2 AI言語

 「AI(人工知能)の開発に適したプログラミング言語ランキング8選」(フクロウ、2021)で、AIの開発によく使われる言語として次にあげる8つを取り上げ紹介されています。
Python

Julia
JavaScript
C++
Java
Haskell
Matlib
 このなかで、オススメはPythonだと言っています。ただそのほかのプログラム言語にもそれぞれに、生まれてきた経緯があり、得意技もあるわけです。このホームページには、簡単に各言語の特徴も書かれていますので、AI言語を選択する時の参考になります。

第3章 Pythonについて

3.1  Pythonで儲かるAIを作る

 ということでしたので、今回は言語をPythonに絞り、図書館でAIの本を探して見つけたのが『Pythonで儲かるAIを作る』でした。

 この本は業務に役立つAIの作り方について解説している本で、そのまえがきで「AIが成果を出せるかどうかは、企業や組織の中で、AI導入を適切に導ける現場リーダーのスキルにかかっている」として「第6章 AIプロジェクトを成功左折上流工程のツボ」設けられています。すなわち組織(たとえば会社)のパーパス注1を達成するために、現場を導いていく能力のことです。さらにそのスキルは「業務目線」と「技術目線」の両方を持っていることだと言っています。図表4にあるように機械学習プロジェクトに必要な人間の役割としては次の3つが挙げられています。

1. 業務専門家:AI利用の アイデア出しや入力データ項目の洗い出しを行う
2. データエンジニア注2:業務データの入手・加工、学習用データの準備
3. データサイエンティスト注3:モデルの作成、モデルの 最適化

vbl-krsdjt04.jpg図表4 業務専門家とIT専門家

 業務専門家の基本的ミッションは、図表4の上部に書かれている、業務の進め方の専門家です。ここでは「5W2H」図を少し変更してありますが、まずは「なんのために何をやるのか」すなわちパーパス(目的や狙い)を理解して、そのためにAI利用のアイデア出しと入力データ項目の洗い出しを行います。このため現場業務を良く知るプロジェクトリーダーの役割が与えられます。AI利用のアイデア出しが不十分な状況で、AIプロジェクトを開始することになれば、うまくいかないのは確かですし、その後のプロジェクト推進の進め方を知らなければ、納期を守って当初の目標を達成するプロジェクトをすすめることもできません。
 ということでこの本では、「業務のAI化」で本当に役立つアイデアをだせる業務専門家が簡単なモデ ルを自分で作り、業務を効率的に進める(すなわち今後は業務専門家がデータエンジニアやデータサイエンティストの行っている業務もこなせるようになる)ことが期待されています。その理由は状況に応じてなすべきことが変わる今の時代のAI開発ではプログラムの仕様書をきちんと書いて、プログラマーに渡しても、プログラム開発に時間がかかるとプログラムが完成する前に要件が変わってしまい、役に立たないことも発生します。
 (すなわちプログラムの効率化や高精度化より、変化する現場の業務に適合できるかどうかに重きを置かざるを得ないということです。)

3.2 プログラムを作りながら基本を学ぶ

 このようなことを学びながら読み始めるとこの本の趣旨は分かりましたが、なんとなく難しい。ということで独学の第1ステップとしてはもう少し易しそうな、『入門者のPython プログラムを作りながら基本を学ぶ』(立山 秀利、2018)を使うことにしました。この本は約400ページの文庫本サイズで、Python稼働環境を準備し、三つのプログラムを作りながら、Pythonとはどんなものかを体験するものです。

 この本を片手に、Pythonのプログラム稼働環境を準備するためのパッケージであるAnacondaをインストールし、統合開発環境Spyderプログラムの起動方法を学びました。プログラミングについては、作例1としてファイルやフォルダーの操作を行うプログラム作成、作例2としてwebページとのやりよりをするプログラム作成、作例3としてデータ分析を行うプログラムを作成することにより、Pythonプログラム作成の基本的な構造と開発方法を学び始めました。

 そしてこの本を読み始めてびっくり。どのプログラムも10ステップ前後の短いプログラムなのに、やりなれないことを始めたためかこの本を読み終わるまでに(プログラミングに)、5日間もかかりました。専念したわけではありませんが、親切丁寧な解説を読みステップごとにプログラムの作り方を学びながらテストし完成にもっていく方法でした。この時はキーインミスや、意味の取り違いが起こし、失敗しながらプログラム作成をする「アジャイルプログラミング」という感じでした。このため、普段 本を読むスピードに比べると格段に長い時間がかかりました。

vbl-krsdjt05.jpg図表5 プログラム作成事例

 図表5はこうして最後に作った作例3のデータ分析を行うプログラムの例です。この時作成したプログラムは図表5の左の8行目から15行目の、わずか8行です。これだけのプログラムで図表5の右下のコンソールエリアにあるデータ分析出力表と、右上の分析グラフが出力されました。ただここに来るまでには、 左にあるコード以外に、右下のコンソールエリアに、いろんな条件を入れその結果が適切に処理されているかをテストしています。適切に動くことを確認すると、左のコードに書き込んでつじつまの合う結果になっているかを調べ、うまくいっていないと分かれば、右下のコンソールエリアでに戻り修正し再確認します。このようにして、このシステム使ってデータ分析を行い、適切と判断をして、その結果を表やグラフに表現したものとなっています。この方法はプログラム仕様書に従ってプ ログラムを書くのではなく、書いたプログラムを実行することによりプログラムが正しいかを検証しながら、その結果を集積してプログラムを作成していくというやりかたです。
 (プログラム仕様書を書かずに コーディングをしている感じです。ただ、後ほど何をしようとしているかがわかるようにプログラムの中にはコメントを入れています。)

 また、プログラムコードを考えるときには、何のために処理をするのかを決め、その後どのような処理を行うかを考えて記入していく方式でした。すなわち英語の 主語、述語と同じ考え方です。文脈もまず結論を考え、その結論を導くステップを記入していく方式です。オブジェクト指向であり、間違えたらその都度修正 していくアジャイルコーディングと言う感じの開発環境であることが解りました。この時使った開発環境のSpyderは製造現場で作った製品の品質を確かめながら生産方法を改善していくものづくりの方法とよく似ていて、解りやすい方法でした。これなら現場の業務専門家でも何とか対応できそうです。

 ただ、この3つの例でやったことは、与えられた課題を解決するために必要な関数やモジュールだけを使ってプログラムを作る手順を学ぶことです。Pythonには全体でどのような関数やモジュールがあるのかは、これから多くの プログラムをつくりながら学んでくださいということでした。
 (プログラムを作りながら学ぶという考え方です。)

 そういえば、50年ほど前に Fortranプログラム作成を作成し、偏微分方程式を使って実験データの検証したときは最初の1本のプログラムをつくるのに約1カ月かかりました。この時は実験の合間に、Fortranのマニュアルを読み、プログラムの書き方とルールを学んでからプログラムロジックを作り、試行錯誤を繰り返し作成しました。プログラミング文法の基本を学びながら実験結果に合わせたコーディングを始めてから結果を得るまでの期間ですから、中身は今回のPythonの場合とは違います。しかしこの時も、偏微分方程式を解くにはどのようにコーディングするか、必要なデータを整理するにはどのような順番で計算すべきか、といったに解き方を自分で考えてプログラムを作り、出力結果が思わしくない時はプログラムを修正しながら、完成させていきました。いわば「3.1 Pythonで儲かるAIを作る」で示した3つの人間の役割(業務専門家、データエンジニア、データサイエンティスト)を1人でやっていたわけです。

 この立山 秀利 氏の入門書は、何をやりたいのか、そのために必要なものは、そのためにやることはないかという具合に、解くべき対象を中心に、プログラムを作成しながらPythonの基礎について学ぶものでした。現在多くの企業で行われている、システムの外注方式とは全く違います。このため、業務専門家が慣れるまでにしばらく 期間がかかりそうです。言語体系と、開発環境で何が用意されているかを調べたうえに、問題が決まってから本を読み・使いながら学ぶこととなりそうです。

3.3 Python 言語仕様について

 こうしてプログラムの書き方とその手順の概要は理解できましたので、今後問題を解くために使える文法や関数にどんなものがあるかを、調べました。このために使った「Python言語リファレンスマニュアル」は、Pythonに関するホームページの「Documentation」の中に置かれています。そのホームページではPython言語の文法と、 "コアとなるセマンティクス" について記述します。このマニュアルは先ほどの入門書とは違いそっけない書き方でしたが、正確さと完全さを優先しています。組み込みオブジェクト型や組み 込み関数、組み込みモジュールに関するセマンティクスは、「 Python 標準ライブラリ 」で述べられています。形式ばらないPython 言語入門は、 「Python チュートリアル」 を参照します。C言語あるいはC++プログラマ向けには、このマニュアルとは別に二つのマニュアルがあります。「 Python インタプリタの拡張と埋め込み」 では、Python 拡張モジュールを書くための高レベルな様式について述べています。また、「 Python/C API リファレンスマニュアル」 では、C/C++ プログラマが利用できるインタフェースについて詳細に記述しています。そのうえ、ソフトウエアのバージョンアップや更新時ように、ホームページも更新されていて参照できます。

 例えばPython 「言語リファレンスマニュアル」では 2.字句解析、3.データモデル、4.実行モデル、5.インポートシステム、6.式、7.単純文、8.複合文、9.トップレベル要素、10.完全な文法仕様に分けて、Python言語の説明が書かれています。例えば演算子は2.字句解析の中の2.5演算子の項目に書かれています。さらに細かい説明はgoogle検索をすれば「とほほのPython入門 - 演算子」等にも説明されています。ということでPython言語についての基本情報の入手については、心配は無用でした。また「Pythonの人工知能のライブラリ13選|勉強法や人工知能以外の活用先も紹介」(akimoto、2020)にあるように、豊富なライブラリも入手可能です。
 このためPython 入門書にあった環境セットアップが完了すれば、最新版の言語情報はすべてインターネットで参照しながら調べることができるということがわかりました。これこそオープンソフトのいいところです。

3.4 教育機関等でのPythonの普及度

 このようにPythonを独学するための、環境がそろっていることが解りました。しかし、使えるようになるためには、プログラム作りながら新しいことを学び、使い慣れておくことが必要です(昔の丁稚奉公と同じです)。ということで教育機関や学習期間等ではどう対応しているかをインターネットで調べまし した。

・京都大学
京都大学では、大学の教育カリキュラムがあり、その時参考にする、京都大学国際高等教育院 教授の喜多 一 氏が書かれた。Pythonによるプログラミング演習の教材を京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI)で一般公開しています。この教材は、プログラミングの初学者を対象にPythonを用いたプログラミングを演習方式で学ぶもので、以下のような教材もアップされています。
・プログラミング演習 Python 2019、 https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/245698/1/Version2020_02_13_01.pdf
・プログラミング演習 Python 2019(コラム編) https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/245698/2/Version2020_02_13_02.pdf
これなら、どこからでも学べます。

・東京大学
東京大学のケースは東京大学、『Pythonプログラミング入門 東京大学』、https://utokyo-ipp.github.io/index.html(アクセス 2021/03/14)にも公開されており、『Pythonによるプログラミング入門 東京大学教養学部テキスト アルゴリズムと 情報科学の基礎を学ぶ』(森畑 明昌、2019、東京大学)という本も出版されています。

・金沢大学
金沢大学のシラバスには次のような情報が書かれています。

『Pythonデータ分析入門』(東 昭孝、2021、金沢大学シラバス)https://eduweb.sta.kanazawa- u.ac.jp/portal/Public/Syllabus/DetailMain.aspx?lct_year=2019&lct_cd=73621.01& je_cd=1(アクセス 2021/03/14)

「Pythonを学べる大学一覧2019」、https://tech-joho.info/pythonを学べる大学一覧2019/ (アクセス 2021/03/14)には旧帝国大学、名門有名大学でのPythonについてのシラバス調査結果が報告されています。これらを見ると、いまやPythonは理系文系を問わず実施されている教養科目であることが解ります。高齢者がこれらの教育機関を出た人たちとともに働くためには独学か、教育カリキュラムに参加するか、公開講習会等に参加すれば身に付けることができる時代となっています。

3.5 Pythonを使うには

 若宮 正子 氏の本に刺激され、体力を失いつつある高齢者が社会の貢献し生きがいを感じるために、体力がそれほど必要としないソフトウエア開発を行うAIを使う環境の 一つとして、 Pythonでプログラムを開発できないか調べたところ、「3.3 Python 言語仕様について」にあげたようにすでに多くの入門書が出版されて誰で も学習と推論プロセスを理解できるようになるための情報が提供されていることが解りました。また、「3.4 教育機関等でのPythonの普及度」にあげたようにAIを学ぶ環境もあることも解りました。さらに、会社員も高齢者も新型コロナウイルスへの対応のための在宅勤務の普及で、E-learningになれてきてい ますからPythonを独学で学び使うことについての障害は少なくなってきています。残るは、学ぶ意欲があるかどうかです。

おわりに

 第3章 AIツールについての後半で、述べているように、Pythonについては、すでに大学教育にも取り込まれており、今の若者には十分学ぶチャンスがあります。さらに、社会で働いている人たちも、必要であれば自分の強みを生かすために、学ぶコースも用意されていることも解りました。これらの資料や学習する仕組みが、一般に公開されているので、若宮 正子 氏が対象としている高齢者も学習することができます。いまや、少子化が 進む日本の労働力不足を高齢者が補う事もできる時代となっているわけです。

vbl-krsdjt06.jpg図表6 高齢者のPythonによる機械学習

 図表6は、バーチャルな世界(Virtual Reality)の高齢者の視点からPythonによる機械学習の現状を4次元マンダラ図に描いたものです。こうした活動を行いながらPythonを経験することにより、高齢者もオブジェクト指向でアジャイル開発の世界で過去の経験を生かすことができるようになります。リアルな世界では体力のある若い人に勝てなくても、バーチャルな世界でIoT機器等を利用して体力を補いつつ、これまでに蓄積してきた経験を生かすことで、若者が持っていない力を発揮することになります。図表6は、高齢者だけでなく、お仕事を持ち現在働いている人にも当てはめることができます。高齢者との違いは「自分の力」にある過去にいろいろが業務をこなした経験があることと「周りの人」に書かれているような仕事以外でおつきあいの部分です。

 またPythonでプログラムを書いているときに、機械学習だけでは実現できないことは「人間力」で補足することにより現実社会がどうなるのか知り、活動できるを理解し自分の過 去の経験の中から、AI時代になっても生き残れるものは何かを見つけ出しておくことを習慣づけておくことが必要条件となります。

 この記事を書いている2021年3月30日に朝日新聞に減る年金・増える介護保険料なる記事が掲載され、個人負担が増えるという記事が載りました。さらに70歳まで雇用機会の確保という記事も載っています。こうなると、企業の方も「非正規雇用」を増やすだけでは追い付かず、「メンバーシップ型雇用」から、 「ジョブ型雇用」方針を変えるかもしれません。この時のために、図表5の自分の機械学習図を作成し、自分に必要な「人間力」を知り、準備しておけば、「134. ジョブ型事業への道」に取り上げたようなメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用の時代になっても安心して働けます。

 どうでしょう高齢者の皆さん、まずはPythonを学んでこれから必要となるAIの世界で若者達と一緒に語り合える話題を得てみませんか。


・注1 ここではパーパスとはこのシリーズ「140. 未来から現在を考える」に書いているように、組織がどう行動すべきかをステークホルダーの立場から検討して作成する企業の目的を表現 したものとします。
・注2 業務専門家とは、「データエンジニアとは」(Ai drops 編集部、2019)に書かれているように「大規模なデータの活用を支える基盤構築と運用の専門職です。インフラ・データベー ス・開発などIT エンジニアとしての基本スキルに加え、ビッグデータを扱うための分散処理やデータマネジメントに関するスキルが要求されます。活躍する場所として機械学習やデータ分析を行う事業会社のほか、データ基盤構築を受託するIT企業で働くことが多いです。職種の呼び方として「データエンジニア」のほか、「基盤エンジニア」や「データ分析基盤エンジニア」と呼ばれることもあります。」となっています。
・注3 ヘリントン、「データ・サイエンティストとは」によれば データ・サイエンティストとは、さまざまな意思決定の局面において、データにもとづいて合理的な判断を行えるように意思決定者をサポートする職務またはそれを行う人のことです。統計解析やITのスキルに加えて、ビジネスや市場トレンドなど幅広い知識が求められます。」となっています。


参考資料
・Ai drops 編集部、2019、「データエンジニアとは」、2019年8月30日、https://www.bigdata- navi.com/aidrops/1171/、(アクセス 2021/03/29)
・AINOW、2019、「プログラミング不要! 約50のAI構築GUIツールをまとめたサービスマップを公開!」、2019年11月14日、AINOW、https: //ainow.ai/2019/07/09/173221/, (アクセス 2021/03/18)
・akimoto、2020、「Pythonの人工知能のライブラリ13選|勉強法や人工知能以外の活用先も紹介」、https: //www.acrovision.jp/career/?p=1972 、(アクセス 2021/03/28)
・CREATIVE VILAG、2019、「AI開発のための必須言語「Python」基本的な使い方や勉強法について」 https: //www.creativevillage.ne.jp/72484 (アクセス 2021/03/19)
・「Python 言語リファレンス日本語 3.9.2」、 https: //docs.python.org/ja/3/reference/index.html (アクセス 2021年2月22日)
・「Python 標準ライブラリ」,https://docs.python.org/ja/3/library/index.html#library-index, (アクセス 2021/02/22)
・「Python チュートリアル」、https://docs.python.org/ja/3/tutorial/index.html#tutorial- index、(アクセス 2021/02/22)
・「Python インタプリタの拡張と埋め込み」、https: //docs.python.org/ja/3/extending/index.html#extending-index、(アクセス  2021/02/22)
・「Python/C API リファレンスマニュアル」、https://docs.python.org/ja/3/c-api/index.html#c-api-index、 (アクセス2021/02/22)
・「Pythonを学べる大学一覧2019」、https://tech-joho.info/pythonを学べる大学一覧2019/ 、(アクセス 2021/03/26)
・『Pythonによるプログラミング入門 東京大学教養学部テキスト_アルゴリズムと情報科学の基礎を学ぶ』、東京大学
・「ピアノなど鍵盤楽器を演奏する おすすめアプリランキングTOP10」_Appliv、https://app-liv.jp/hobbies/musics/1170/?price= free (アクセス2021/03/13)
・とほほのPython入門 - 演算子 http://www.tohoho-web.com/python/operators.html 、(アクセス、2021/03/18)
・フクロウ、2020「簡単入門_AI(人工知能)と機械学習の違い」、2020年6月12日、
https://www.sejuku.net/blog/55834 (アクセス 2021/02/22))
・フクロウ、2021「AI(人工知能)の開発に適したプログラミング言語ランキング8選」、2021年1月25日、https: //www.sejuku.net/blog/51246 、2021/1/25、(アクセス 2021/03/24))
・明石雅典、2020,『Pythonで 儲かるAIを作る』、日経BP、2020年8月11日 
・ヘリントン、「データ・サイエンティストとは」、https: //www.sas.com/ja_jp/insights/analytics/what-is-a-data-scientist.html、(アク セス 2021/03/29)
・東 昭孝、2021、『Pythonデータ分析入門』、金沢大学シラバス、https://eduweb.sta.kanazawa- u.ac.jp/portal/Public/Syllabus/DetailMain.aspx?lct_year=2019&lct_cd=73621.01& je_cd=1 (アクセス 2021/03/14)
・石山温子、2020、「シニアに「デジタル提案」は、効果があるか?」_2020/0/131、https: //nspc.jp/senior/archives/9987/ 、(アクセス 2021/03/5)
・京都大学、「プログラミング演習 Python 2019」https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/245698 (ア クセス 2021/02/22)
・ 京都大学、「プログラミング演習 Python 2019 教材」、 https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/245698/1/Version2020_02_13_01.pdf  (アクセス 2021/02/22)
・京都大学、プログラミング演習 Python 2019(コラム編) https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/245698/2/Version2020_02_13_02.pdf  (アクセス 2021/02/22)
・厚生労働省、「少子化対策推進基本方針(要旨)」、https: //www.mhlw.go.jp/www1/topics/syousika/tp0816-2_18.html、(アクセス 2021/03/15)
・瀬領浩一、2021、「92.70にして立つ」、2014年12月11日、 http://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/092.html (アクセス  2021/01/31)
・瀬領浩一、2021、「120.アクティブ・シニアの貢献」、2021年1月11日、 http://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/139.html (アクセス  2021/01/31)
・瀬領浩一、2021、「139.みんなで世界を良くしよう」、2021年1月11日、 http://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/139.html (アクセス  2021/01/31)
・瀬領浩一、2021、「140.未来から現在を考える」2021年2月 日、http://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/139.html (アクセス  2021/02/08)
・立山秀利、2018、『入門者のPython_プログラムを作りながら基本を学ぶ』、講談社、2018年9月20日
・東京大学、『Pythonプログラミング入門 東京大学』、https://utokyo-ipp.github.io/index.html (アク セス 2021/03/14)
・内閣府、「令和2年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」、https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w -2020/zenbun/02pdf_index.html、(アクセス 2021/03/14)
・内閣府、「学習・社会参加」、https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w- 2020/zenbun/pdf/1s2s_03.pdf、(アクセス 2021/03/14)
・内閣府、「生涯学習 に関する世論調査」の概要」、https://survey.gov-online.go.jp/h30/h30- gakushu/gairyaku.pdf、(アクセス 2021/03/14)
・橋本 誠、「PythonがAIに使われる理由とおすすめ勉強法」、https://toiroha.jp/article/detail/8093 (アクセス 2021/03/24)
・森畑明昌、2019、『Pythonによるプログラミング入門 東京大学教養学部テキスト_アルゴリズムと情報科学の基礎を学ぶ』、東京大学
・吉崎、2019、「GUIツールが普及した機械学習民主化後のキャリア -機械学習の新しい学び方- 吉崎さん秘伝の新規事業案も特別公開」、https://ainow.ai/2018/08/30/145436/ 、(ア クセス 2021/03/14)
・若宮正子、2019、『老いてこそデジタルを。』、1万年堂出版、12月4日
・若宮正子、2019、『独学のススメ 頑張らない!「定年後」の学びかた』_中央公論社、2019年5月10日
・若宮正子、2020、『若宮正子さん「これからの高齢者に必要なのは"デジタル"」。日本人の意識に課題も』、2020年4月13日、https: //suumo.jp/journal/2020/04/13/171854/、(アクセス 2021/03/25)

2021/04/01
文責 瀬領 浩一