金沢大学能登学舎

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奥能登における事業承継支援制度の活用状況を調査しました

 今回、マイスタープログラムのフィールド研究で初めて能登半島を訪れ、事業承継支援制度の活用状況について現地調査を実施しました。羽田空港から能登空港まで片道約1時間とアクセスは良好でしたが、珠洲市での宿泊先の確保に苦労し、結局志賀町の民宿に宿泊することとなりました。

 調査では、珠洲商工会議所や輪島商工会議所等の支援機関に加え、直近10年を目安に事業承継を経験した中小企業複数社にヒアリングを行いました。2019年からのコロナ禍に加え、2023年5月と2024年1月の地震により、飲食業・宿泊業等が深刻な打撃を受けたほか、他地域同様に人口流出と高齢化という課題も深刻化している現状が明らかとなりました。特に印象的だったのが珠洲市のメルヘン日進堂への訪問です。同社は創業110年を超える本格バウムクーヘンのお店で、独自製法による高付加価値商品の開発と口コミによる事業拡大により、能登半島最北端の立地でありながら全国規模の取引を実現しています。お話をお伺いした代表取締役の石塚愛子氏は、2011年度マイスタープログラムの修了生でもあります。

メルヘン日進堂 代表取締役の石塚愛子氏と

 このような厳しい環境下でも、地域の中小企業は第三者承継を機とした多角化による収益源の多様化や独自製法の追求による高付加価値商品の開発により、様々な工夫をされています。また、価格転嫁による利益率の向上や営業時間の短縮による効率化など、経営手法の見直しも積極的に行われていました。

 これらの取り組みが単なる利益追求ではなく、人口減少社会において地域経済・社会の要としての使命感に基づいていることに、深い感銘を受けました。地域に根ざした企業が、伝統を守りながらも時代の変化に対応し、地域雇用の維持と地域文化の継承という重要な役割を果たしている姿を目の当たりにしました。

 今回のヒアリング結果をもとに引き続き中間報告、そして最終成果報告に向けて調査研究を進めてまいります。

(2025年度 能登里山里海SDGsマイスタープログラム受講生 三田 琳太郎)