金沢大学能登学舎

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大切に。丁寧に。生きることを繋げ、喜びを分かち合う細やかなアクション連動。

早朝の金沢駅から一路珠洲へ。

午前中は坂茂建築設計の皆様率いる「能登瓦・古材再生プロジェクト」作業に参加させて頂きました。

作業の流れの説明と共に「今は生産されていない能登瓦」の貴重さを説かれる瓦職人さん。

能登産の土に黒光りした釉薬が風土を体現する「能登瓦」。今般の能登地震において立派な家屋が倒壊し、あるいはブルーシートに覆われた痛ましくも無数の屋根の姿に一方でネガティブな印象にも繋がった存在。これら倒壊し、公費解体を待つばかりの家々の屋根から瓦を下ろし、未来へと繋げるというのが今回のプロジェクト趣旨とのこと。僅かな時間ながらもマンパワーで次々と結束されていく能登瓦に、たとえ特別な技術が無い我々にもその成果の可視化を体験出来るというプロジェクトは、あらゆる面において大いなる可能性を見出した次第でした。是非、今後の展開のオープンな窓口と広報活動によって、能登瓦の救出と再生をきっかけとした関係人口の構築にも希望を持ちたいです。

屋根から下ろされる瓦をバトンで繋ぐ。
瓦同士を繋いだ針金を取り除き、再生すべく4枚一束で結束。

そして午後からは、県立飯田高校音楽室においてピアノ伴奏によるフルート演奏と、現役高校生らによる歌唱ミニコンサートを視聴。

地震により心の不調を抱える皆さんを支援する金沢大学「KEYPAT」を主導される吉川・足立先生らの取り組みのもと、アコースティック楽器による生演奏が、誰しもの体と心の緊張を緩和させる効果があることを実感。少なからずダメージを受けた校舎に響く音色が、その傷にさえ浸透し、治癒するかのようでした。また、現役高校生らによる澄んだ声には、思わず涙が込み上げそうに。元旦の幸せな時間の強烈な暗転を体験した彼らと何か、具体的な震災における会話をした訳でないにも関わらず、それらを乗り越えつつ、こうして立って、観衆に歌を届ける姿を前にして、それでも生きて、幸せを共有する人間の根本的な強さや優しさ、希望を感じずにはいられませんでした。

生きている事を実感すべく呼吸し、体を動かし何か、小さくともやり切る事に関わりを持つ。それが誰か、まずは隣り合う人々と共有出来ることの幸福を存分に感じた貴重な時間となりました。これら結束がまた、多くの方々と共有できますように。

(2024年度能登里山里海SDGsマイスタープログラム受講生・谷口菜穂子)