人と地域のWEBマガジン ISHIKAWA DRAWER

Masaki Takasaku

株式会社ハイディワイナリー 代表取締役 栽培/醸造責任者
高作 正樹

Credo
#03
2017.01.10

Introduction

株式会社ハイディワイナリーは、日本海と能登の山々を望む絶好のロケーションで、 ワイナリー、レストラン「ふらんじゅ」とパン工房を運営しています。穏やかなまなざしの奥で常に次の時代を見つめて新事業を仕掛ける、高作社長のクレドをお伺いしました。

Q.1

御社のクレド(信条・行動規範)、教えてください。

一言で言うと、空間づくりです。もっと言うと、ここ門前町で、まったく新しい産業を軸にした村づくりを一からしていきたいと考えています。現在は弊社でワイナリー、レストランとパン工房を運営していますが、来年度からは宿泊施設を整備する計画もあります。そういった施設で人を雇用してプロジェクトを進めていき、そこに関わる人たちが、いつか門前町の人口よりも増えていけばいいなと考えています。ぼくらはあまり採用活動をしていないのですが、ありがたいことに、全国からうちで働きたいと応募してきてくれる方がいて。今、沖縄出身の28歳の女の子がパン工房でパンを焼いていて、レストランのサービスの子は北海道出身。18名の社員のうち、3分の2が県外から来た人です。ここで生まれ育ったわけではないけれどもぼくらの考えに共感してくれる人たちが、この「村」を大きくしようと集まってきてくれるイメージですね。

ぼくは神奈川県出身で、東京で大学院を卒業しました。その後、地元である神奈川県に帰るかどうかを迷っていた時期があって。そのときに全国を渡り歩いて、地方で成功されている人の話を聞きに行ったんです。何もなかったところから事業を始めて今では年商50億などといった、成功されている社長や事業主の人たちに自分でアポを取って会いに行きました。もともとものづくりに関わる仕事をしたいという想いがあり、その中でも空間づくりに興味があって。あるとき新潟で、人が集まって働く空間づくりを目指しているワイナリーの話を聞いて、ワインづくりをしていくと空間づくりが叶っていくんだなっていうことが分かったんです。ワイナリーを始めるにあたって、いろいろな場所を候補に考えましたが、ひとつもゆかりがない場所は嫌だなと。そこで父の郷里であるこの輪島市に決めました。幼少の頃にぼくも少し住んでいたのですが、自然の中で遊びまわった良い思い出しかなくて。ここでワイナリーができたらきっと素敵だろうなと頭の中で具体的にイメージできたんです。

Q.2

「働く」って、なんですか?

県外から来てくれた子も、県内の子も、ここに来て働き続けてくれる子たちには一人ひとり目標があって。給料のためだったらわざわざここに来る必要もないし、空気がおいしい場所というのもここでなくても海外にもたくさんあるし。じゃあどうしてここなのかっていったら、うちの会社で達成したい何かがそれぞれあるんです。それは採用面接でもきちんと聞くようにしています。例えば面接に来たある人が、「3年間を区切りにして考えたい。その次は他の場所へ行ってこれを実現したい」というビジョンがあったとしたら、ぼくはそれに喜んで協力したい。だから3年間ここで頑張ってもらうために経営者としてできる限りのことをします。その人が成し遂げたいことに付随するような仕事を与えて、勉強してもらって。ぼくはこの会社の代表であり社長というポジションですが、あくまでそれはひとつの駒にすぎない。社長と社員ですけれど、対等な関係だと思っているんです。成し遂げたいものが両者にあって、その両方とも成し遂げられるようなWin-Winの関係を築いていきたいと考えています。

ここで働くのって、最初は良くても、継続するのが大変なんです。娯楽がなんにもないじゃないですか。できるとすれば釣りぐらいですよ(笑)。そういう環境で週2日休み、5日間は9時間くらいずっとここで働くわけじゃないですか。精神的に支えられるものっていったら、「やりがいのある仕事」しかないんですよね。ぼくも含めて、社員はきっとみんな自問自答していると思うんです。「自分が今やっていることは正しいのだろうか」と。そして、ここでこれからやっていくためには自分に何が必要で、ポジションを決められたら、そこでどう問題を処理していくかを考えていく。そうやって考えることが楽しくなれば、ここで継続して働いていける。それができるのは、やはり一つでも目標を持って入ってくる人だけだと思いますね。

Q.3

いしかわで働く意義って、なんですか?

土であったり空気であったり、この場所にある豊富な資源を利用してワイナリーを運営していますが、それを次世代に繋げていくというのがここで働く意義だと感じています。そういった長期的なスパンで見ないと、自分がやりたいからやって、それで終わらせるというわけにはいきませんから。ワイナリー自体もひとつの資源になりますから、それをバトンにして、次に繋げること。

いしかわは、新しいことを始めようとする人を受け入れてくれる懐の深さがありますね。例えばぼくらは民間企業ですが、ここを支えてくれているのは、夢を一緒に実現したいと思ってくれているサポーターの方々なんです。最初はぶどう畑しかなくて、それを見て個人の人が何百万円も出してくれるなんて、普通はありえない。それでも多くの出資希望者が集ってくれたのは、ぼく一人ではなくて、チームとして頑張っている社員たちの姿を見て応援してくださったり。あとは、サポーターの方々にも大きな意味でビジョンがあって、その手段としてレストランが必要、パン工房が必要、っていうことをぼくらが明確に示していくことで出資してくださる方もいます。「必要なんですよ!」って熱意を込めていうのはぼくらですが、出してくださっている方々の方がすごいんです。僕の地元の横浜でこのワイナリーをやろうと思ったら、最初の資金集めの時点で失敗していると思いますね。ここ、いしかわの地だからできたことです。他の自治体だったらどうかって言ったら、それもまた微妙で。ぼくらはタイミングにも出会った人たちにも恵まれたおかげで今があります。その思いをこれからも大切にしていきたいですね。

※ハイディワイナリーではオーナーズクラブを結成し、全国から集まったサポーターの方々に出資を募っています。

Q.4

休日の過ごし方、教えてください。

まず前提として休みがあったらいいなという感じです。自分の場合は丸一日休みというのがほとんどないですね。もし丸一日休みがあったとしたら、旅行に行きたいです。3日あったらヨーロッパに行きたい。フランスで修行をしていたこともあって、フランス、ドイツ、イギリスと今まで行ってきたところに挨拶回りも兼ねて旅行したいです。

旅行に行きたいというより、旅行しないといけないという感覚が近いかもしれない。ここで1年間を通して仕事をするのではなくて、理想的なのは半分を県外で過ごして、半分は県内で仕事をする。そうしないとなかなか新しい情報が入ってこないし、感覚が麻痺してきちゃう。今の世界の動向を察知して、じゃあそれをこの仕事にどうやって取り入れようかなって考えるためには、家でテレビを見ているだけじゃなくて、テレビに映ったものを自分の目でちゃんと見て、直に触れる。そういうことをして考えが湧いてくることが多いので。ぼくらは会員制度を取っているのですが、会員の方たちの考え方も時代とともに変わっていきます。新規顧客獲得のためには新しいことを提案しないといけないけれど、かといって自分たちのスタイルも崩せないし…って、夢の中ですごく悩むんですよ。寝た感じがしない(笑)。

人から見たら、ずっと仕事のことを考えていると思われているんだろうなと感じますが、僕自身は「仕事をしている」という感覚がないんですね。遊んでいる感覚に近い。24時間遊んでいると思ったら、「ああ今日も遊んだな」で終わるじゃないですか。そうすれば心理的にも楽ですし。…そう考えると、すごくいろんな人の人生を巻き込んだ遊びをしていることになっちゃうんですけどね(笑)。

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  • 「門前町のぶどうは厳しい自然の中で元気いっぱいに育ちます。こんな風に!」
  • 夕暮れ時のレストラン「ふらんじゅ」は映画のワンシーンのようにロマンティック。
  • ハイディのワインはこだわりのフランス・アリエの森産オークの旧樽で熟成。
  • 禅寺御用達のプレミアムワイン「相承-SOJO-」は赤白ともにエレガントな味わい。