151.学生起業への道

151.学生起業への道

- 自分への備え -

はじめに

 これまで「起業の準備」のホームページでは、いろんな場合につかえそうなやるべきことすなわち「What」を中心にまとめました。しかし汎用性があるようにまとめたために、内容は起業にまつわる法律とお金に関する情報とそのために必要なことが中心となりました。

 一方起業は新しい分野を切り開くプロジェクトで、一人一人他とは違ったことを行うことが要求されます。このため今回は現役学生さんを対象として起業をいかに行うかすなわち「How」についてまとめます。

 今回対象と考えている学生さんは、まだ会社の経営者や管理者経験のない学生さんです。例えば会社での業務を経験し、新たな技術を取得するべく退職して大学で研修を受けている人にとっては良くご存じのことは多いかもしれません。ということで起業一般を考えるには十分ではありませんが、説明を簡単にするために学生起業プロセスの中で使う最低限のルールに基づいて全体図をまとめました。

 例えば起業の準備シリーズの一つ「143.起業の種類と事業形態ー個人か法人か?ー」に個人事業と法人事業の特徴並びに手続き、届出並びに税務手続きについて述べています。簡単にまとめると事業の信用度は法人事業の方が高いのですが個人事業の方が手続きは簡単で費用も少なくて済みますと書かれています。 ということでまずは起業が容易に行える個人事業として起業を始めることにしています。業態はフリーランスがもしくはネットビジネスということでスター トする予定です。開業資金が大きくなりそうな場合や利益が増えてきて税金が高くなりそうといったような状況になったら、起業のプロセスの中で修正を加えて新しい法人を開始するという考え方です。

 「令和2年度大学発ベンチャーの実態調査の結果概要」によれば2020年の大学発ベンチャーの数は 2901件とです。最近5か年の大学発ベンチャー企業の平均件数の割合は研究開発ベンチャー、共同研究ベンチャー、技術移転ベンチャー等の合計で大学の教員が中心となって行われるものが約70%、学生発ベンチャーが20%、その他が10%となっています。ということで大学発の学生発ベンチャーの起業数はそれほど多いわけではありません。それなら研修のつもりで、個人事業を始めてみるのも学生らしい活動と考えることができます。

1.学生起業の道

 これ等を考慮して作成したのが、図表1の学生起業の道です。この図は「起業の準備」シリーズの「アイデアとコンセプトの整理」の「図表9 起業の道」を学生生向きに再編したものです。この図は学生起業のモデル図(FBE: Framework By Example)であり、皆さんが利用する時はご自身のケースに合わせて内容に修正しながら使ってください。

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図表1 学生起業の道

 「起業の準備」は起業にあたり行うべき基本作業であり「申請」「報告」「承認」等の「手続き」を中心に述べています。ということで、「図表1 学生起業の道」の左上の「世の中は変り続ける」から始めます。

2.世の中は変わり続ける

 これまで学生さんが義務教育で学んできた歴史の教科書に書かれている内容は、その時の社会情勢や政府の方針に合わせた「学習指導要領」に基づいて変更されて きました。このため多くの学生さんは、このような教科書で学んだ「形式知」と、子供時代に両親とともに過ごした生活から学んだ「暗黙知」をもとに、将来を予測し何をなすべきかを考えるのが普通でした。「暗黙知」については当人も使っていることを意識していません。

 一方マスコミやSNS等による情報では、注目を引きできるだけ多くの人に読んでもらいたいために、ズバ抜けて素晴らしいことや、悲劇的な状況になったこともしくはなりがちだといった例外的情報を流しがちですがこれらにも学ぶことがあれば取り込んでいきましょう。学生起業家を目指す人は、すでに両親からの「暗黙知」や学習指導要綱に従った教科書で学んだ「形式知」は身に着けているわけですから、今後はマスコミ情報やSNS等による他人の情報に注意して、自分の役に立つものを集めておくことに使うことにします。

 このようなものとして、若い学生が将来を考えるときに起業に関係がありそうな例をいくつかを「図表2 世の中は変わりつつある」にまとめました。

vbl-01002.jpg図表2 世の中は変り続ける

 以下これらについて簡単にまとめます。

① 長寿化と人口構成の変化

 平成20年厚生労働白書によれば、1947年の日本人の平均寿命は男性が50.06歳、女性は53.96歳でしたが、令和2年厚生労働白書によれば男性が81.41歳、女性が87.45歳とおよそ30歳くらい伸びています。 このため昭和の終身雇用制度とされていた初期の55歳定年も1998年には60歳定年となりましたがその後の雇用促進ももはや追いつかなくなり、いまや終身雇用は死語となっています。

 また、こうして雇用期間が延びてくるにつれて、年功序列という考え方で発生する、古い時代の経験に染まった管理者だけでは時代の変化についていけなくなってきました。
 さらに経済のグローバル化や新型コロナウイルスの蔓延により、企業の正規雇用の割合は減り、それ以外のパート・アルバイト、派遣社員、契約社員、臨時社員、 嘱託社員などの非正規社員が増えてきています。 総務省統計局の平成3年11月9日の労働力調査によると、2021年4月から6月平均)は正規職員 3557万人(63.3%)、非正規職員 2058万人(36.7%)の計5615万人となっています。

 今回の新型コロナウイルスの対策の結果、在宅勤務が増えてくると正規社員も非正規社員と似たような勤務体制に統合されるかもしれません。 こうなると、一つの会社に長く勤める人も減ってくることになり、多くの人が一生の間にいくつかの会社で働くことになるかもしれません。まさに「図表3 人生100年時代を生きる計画」が現実味をおびてくる時代が来そうです。

vbl-01003.jpg図表3 人生100年時代を生きる計画

 リンダ・グラットン教授の『LIFE SHIFT(ライフシフト)』とはこれまでの「教育を受ける」、「社会で働く」、「定年後に余生を送る」というような直線的な3ステージはもはや通用しなくなり、一生の間に図表3のように就職・転職・起業の間を行き来するマルチステージライフの時代となってきているという話です。 この時代になると、起業は特に珍しい働き方ではなく普通の人の働き方の1つの時代となります。

 西暦1970年ころ韓国の映画やドラマが日本で放映されるようになってきて、私はそれを見て、韓国のドラマに出てくる会社の社長やマネージャーの若々しいのにおどろきました。どうして日本の会社の役職は年長者多くなっているのだろうと感じた次第です。その時思いついたのが年功序列制度でした。これでは若者の元気は生まれなくて上司のご機嫌を生うかがう忖度が多くなるのは仕方がないと思いながらドラマを見ていました。

 「130.失敗は成功の元-相談員への道を歩む-」にはこれから始まる人生100年時代の人生は、教育が終わった人はその後就職、転職、転職を転々と移り変わるようになるという「マルチステージライフ」の時代になるというお話を掲載しています。

② テクノロジーの進化

 モノづくりとその流通を中心として発達してきた18世紀の産業革命は1960年ころからから始まった情報処理技術とその後のインターネットに代表される通信技術の進歩により20世紀以降はIT革命またはICT革命と言われるようになりました。 ICTを使った工場生産が普通になると、機械を1日24時間動かすことができるようになり、人間中心で8時間労働制は意味を持たなくなり、工場の生産性を3倍に上げることが可能となります。

 現在の日本ではGDPに占める製造業の割合が少なくなってきていますがその製造業でも生産の自動化やAI化が進み、生産人口はさらにが少なくてすむようになってきています。「132.コロナ後のベンチャー-ITとOODAの有効利用-」で述べたように、新型コロナ対策のためにほかの国では、かなり普及していたテレオフィスが日本でも普及しはじめました。のため従業員の通勤時間を減らすことができ、1日24時間―労働時間―睡眠時間―通勤時間から通勤時間が無くなれば個人の使える時間は10%から30%くらい増やすことができます。

 「141.高齢者はデジタルで-Pythonで社会に貢献できる実力を-」で取り上げたように、高齢者もAIを使うことにより労働のチャンスを増やすことが可能となります。 産業革命時代に自動車や馬が行っていた人の移動やモノの運送といった仕事はほとんど自動車に置き換ったように今やデータ立国 (AI、IT)といわれるような産業革命時代に企業が行ってきたモノ作りはAIやITに置き変わる時代が始まっているわけです。

③ グローバル化の進展と自国第一主義

 これまで日本では、自国の人件費が上がってくると、海外の人件費の安い国に生産拠点を設け、部品の生産その物を海外に委託することにより部品原価を下げる方策をとってきました。これは日本の製品の競争力を上げるためでした。同様なことは世界中で行われ、生産ラインのグローバル化がすすめられてきました。この方策は発展途上国の経済を拡大させるとともに、先進国の製品原価を下げることになり競争力を上げるという両者にメリットのある方法でした。すなわち世界の経済は自国の弱みを、世界の他の国の力を借りことにより補うというグローバル化が拡大させることができる状況でした。ところが2018年に米国のトランプ大統領は、貿易赤字相手国として最大の国中国に対して、関税の引き上げを打ち出しました。これに対して中国もまた米国に対して関税の引き上げを 行いました。こうしてグローバル化とともに自国第一主義をも主張する時代となったわけです。

④ エネルギー・環境問題の深刻化

 環境問題で現在マスコミを賑わかしているものの一つ地球の気温の上昇を防ぐためにCOP26に代表される環境問題でガソリン車の廃止といった議論が戦わされ ていますが、これ等はこれまでもSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の中でも検討されてきたものです。このシリーズの「138.ボランティア活動の危機-水辺のある里山に参加して-」では川崎市のSDGs活動についてや「137.心豊かに暮らせる社会-SDGsの利用-」でその事例をいくつか挙げています。いまやいろいろな組織がSDGsを検討し事業運営を見直す時代になっており、新しいことをやるときの前提条件に近いものとなっています。

 環境問題を解決するためにまず私たちがすることは、何と言っても「知ること」です。「世界中で起きている事実を知り、しっかり受け止めた上で、「今の自分には何ができるだろう」と考えることが、何よりも大切だと言えるでしょう。

 その上で「居ても立っても居られない!地球環境のために今すぐ何かしたい!」という場合は、まずは日常生活の中の何気ない自分の行動に気を留めてみて下さい。面倒くさがってゴミを分別せず捨てていないか、調理に使った油をシンクに流して捨てていないか...など、細かな部分を気にかけるだけでも大いに環境問 題の解決に貢献できるはずです。

 また朝日新聞の2021年11月4日の取材記事「脱炭素の道筋政府が示すべきだ」の中に 「自動車業界は今CO2を出さず走る電気自動車への転換が進んでいるが、政府は目標だけが独り歩きしている、ものづくりの現場を疲弊させないために「脱炭素」の具体的な道筋を示すべきだ」との趣旨の記事がありました。具体的な道筋を書くべきだと言っているくらいですから、この記事の著者は問題点だけではなく解決策もご存じのようです。例えばこのような道筋があるといった意見だけでも簡単に述べていただければ読む価値が出てきます。さもないと何の役にも立ちません。何か具体的提案を加えて書いた記事にしていただけたらと思いました。

 これらを見ていると日本では欧州のようにSDGsのような将来に向けてのエネルギーシフトが起きていない、財界は現状を壊すと大反対、既得権益を守るために非正規化による社会指標の悪化、格差拡大は止まらない・・・、そんなことやる人がいないではないか、と人のせいにするのではなく自分やるならこうすると言って欲しいです。さもない日本にはGAFAのよう な巨大企業は生まれてきそうもありません。日本の政治では野党は、与党のやり方は間違っているとは言うが、こうすべきだと主張していないので、どうなる のか予測もつかないので賛成を得ることが出来ないと同じです。起業の場合も何のためにどのようなことをどのようにやるかを明確にする必要があるわけです。

 これこそ自立の精神で、起業の精神はその代表的な考え方です。

⑤ 社会の変化

 朝日新聞の2021年10月15日「劣化した日本社会」では「既得権益を守る政府 忖度し続ける官僚 お上にすがる市民」といった記事があり、そこでは日本 社会の劣化の例として、国民はコロナ渦の対応を政府に期待し、不安の原因はお上にある・いやお上に従わない人にあるといった具合に他人のせいにして自分の 問題ではないと言っている状況を記事にしております。

 一方政府は専門家の意見を尊重しているといいながら専門家の意見の中から自分に都合がいいことだけ採用といったことも書かれています。 このようなことに対しては社会の対応する仕組みを作るか、仕組みがあるのであればそおの仕組みを変える必要があります。 ということで、例えば大学を中心としたイノベーションと言って次のような提案を出しています。

 大学におけるエコシステムについては「図表4 スタートアップエコシステムの目指すべき姿」があります。

vbl-01004.jpg図表4 スタートアップエコシステムの目指すべき姿

 この図で取り上げているのは、大学発ベンチャー一般であり、学生起業とは異なりますが、ベンチャー起業を成功させる場合には、単に自分の設立起業する企業について考えるだけではうまくいかない場合もあります。このような場合には図表4にあるように関係しそうな企業や政府機関等にも話しかけ、必要とあればこのようなチームを作り連携する方法を提案する必要があることがわかります。

⑥ 他にもいろいろ

 ジョブ型雇用については、「134.ジョブ型事自業への道-ニューノーマルの雇用型- 」を。
 こちらの方は、主にビジネス環境や参加する人たち全般に及ぶものであり、個人事業としてスタートしたベンチャービジネスを法人化する時に「ジョブ型」の雇用契約を使用することにすれば、終身雇用や正規社員といった制約から逃れ、アクティブな社員を採用しやすく出来ることにない新規事業への挑戦をやりやすく出来そうです。

 コロナ後対応については、「136. IT時代のコロナ後対応-6次元曼荼羅思考-」で6次元思考で考える方法を。 
 すなわち起業の立ち位置だけでなく個人の立場も考えて事業を運営していくことの必要性を書いています。これからの新中間層の必要性を言っているようにも思えます。「133.新型コロナ後の自業-「家業」のやり方を今様に-」ではコロナ後にはフルーガル(倹約的)イノベーションが始まりそうです問話で、これは高性能・高性能を目指してきた日本の製造業にとっては既存事業の縮小となり、手を出しにくい事業です。しかしベンチャー企業にとってはねらい目があげられています。

 例えばこういった問題解決の情報を集め整理するためには、以下のような普段からお付き合いのある情報源を見聞きしている時に気が付いたこともしくは気になったことのキーワードとその内容を簡単にメモっておくがよさそうです。
・よく見るテレビ番組
・興味がひかれる新聞記事
・友達と話すことの多い話題
・大学から与えられる課題や現在活動している中でよく話題になるために調べていること
 「30.メモの活用」にはこうした活動によって得たメモを有効に使うためには手帳と形態を有効に使う方法が説明されていますから、ぜひ参考にしてお使いください。「46.魚眼マンダラの作り方」の図表5には柴又帝釈天に行って集めたキーワードを情報するためにメモを整理する手段としてマインドマップを使った例が挙げられています。これらのことを行うだけで何かヒントは見つかるかと思います。

 このようなことを整理し自分のアイデアをまとめるための基礎となる考え方を「図表6 自分への備え」にまとめした。

3.学生起業への備え

 このHPをお読みの方は、いろいろやりたいことをお持ちだと思います。まずは、現在やりたいと考えていることを、「図表5 今やりたいこと」の真ん中、今やることに書き出してください。それに対して、図表1に書かれているその他の項目も書き加えておきましょう。

vbl-01005.jpg図表5 今やりたいこと

  
 「この中のやりたいことの一つが、学生時代の起業かと思います。そのために「図表2世の中は変り続ける」といった世界の変化に対応するために何をどう整理して「どんな準備をしておくかをまとめたのが自分への備えです。このなかに学生起業もしくはそれに関連しそうな項目は入っているでしょうか?入って いなければ、この後は気楽にお読みください。入っている場合は、皆さんの準備が必要になります。この準備をするための心構えを纏めたのが「図表6 学生起業への備え(自分への備えの学生版)」です。

vbl-01006.jpg図表6  学生起業への備え(自分への備えの学生版)

図をクリックすると詳細が見られます。


 図表6は図表1の学生起業の道と同じ構造を持った、作業の進め方を記述した図を使っています。いまは時間をそれ程かけることなく気軽に眺めてください。また図表6の左上の「世の中は変わり続ける」には「図表2 世の中は変わり続ける」に書かれた項目の中から今回自分の立ち位置で重 要と感じたことをお書きください。ほかにも学生時代の起業に関して自分の立ち位置から見ると不足していること感ずることがあればそれも書き込んでください。

 「立ち位置」については「図表4 今やりたいこと」を作成した時に感じた、こうあってほしいとか現在漠然と感じている不安でどうあるべきか悩んでいるテーマも加えて書きだしてください。

例えば
・このまま卒業してよいのだろうか?
・何か卒業までにやっておくべきことは十分だろうか?
・卒業した時どんな人間になっていたいのだろうか
といったような今回のプロジェクトに対する自分の立場が書かれておれば十分です。

 この時には、「102.原宿のイルミネーションー立つ位置で見えるものは変わるー」の「図表5重要イベントは何」に書いたようにも普通の履歴書用に書くような過去の履歴(たとえばxxxx年yyyy大学卒業)のように時期と名前を書くだけでなく、その頃の記憶に残ったイベント(例えば体力増強)とその意味 を書き学んだことを書いています。忘れることなく今も記憶していることは、自分の資質を作る元となった暗黙知が含まれている重要なイベントです。 

 「図表7 自分のやりかた」は「130.失敗は成功の元」の「図表3 自分のやり方」を参考に学生起業家向けに書いたものです。

vbl-01007.jpg図表7 自分のやり方


 大切なことはどこで勉強したかではなく、今も覚えている記憶内容です。今も覚えていることですから、今後の自分の行動にも影響を与えることであるということです。そのために「経歴を整理する」の下にある「イベントの意味を考える」にはどのような立場の自分にどんなタイプの重要イベントがあったかを書き出します。

 「三つ子の魂100まで」といったことわざや、SONY創業者の井深大氏の「幼稚園では遅すぎるー人生は3歳までにつられる」にあるように、人生の基本的な能力は3歳までに創られると言われています。これらは主に幼児教育における両親の子供を育てるときの取り組みが重要であることを言っています。このHPをお読みの皆さん は、入試の合格基準を超えて、大学にまで来ているわけですから意識されていないにしても暗黙知の力も利用しているはずです。すなわちご両親の努力によって得ることができた能力をすでに暗黙知として手に入れている証拠です。十分であるかどうかは別としてすでに人間としての基本的な能力はあるということができます。自信をもって起業に励んで頂ければと思います。

 「130.失敗は成功の元」の時との大きな違いは、この経歴を整理するところです。「失敗は成功の元」では経歴として生まれてから退職するまでの約70年を対象に考えていましたので、仕事に関することが多く含まれていました。しかし今回は大学生を対象にしていますから、アルバイトを除けば会社勤めや定年といっ たことは、経験対象にならない人が多いと思います。しかし心配はいりません、図表7の左上にある経歴を整理する時に書き足した例のように、沢山のイベ ントが見つかります。 図表7の例でいえば、D大学時代の組織作りとは次のような経験です。B中学時代に音楽の教師に、歌の歌い方を教わっていた 時に何度も繰り返し練習しましたが上手に歌えず、ついに先生から君の音楽はダメだと言われその後の授業では歌うことを許されなくなりました。D大学の教養学部時代に加賀宝生の会に招かれたときに加賀宝生で謡うことは音痴でもやれるよと言われサークルに入りました。ところが3年生になり工学部に入ると校舎も山の中 に移り教養部のクラブに通うのは時間がかかり参加が難しくなりました。ということで工学部内に「加賀宝生流謡の会い」を作り工学部のメンバーを募り普段の練習は工学部のキャンバスでやり、教養学部の人 と共に学外サークルに参加するようにしたという経験です。

 このように思い出すことができるイベントを図表7の左下「イベントとの意味を考える」の中に記入していくとビジネスに使えるイベントしてまとめることができます。こうして思い出したイベントをビジネスに関する強みと弱みに分けて整理すると図表7の下中ほどにあるような自分の強みと弱みを整理することができます。さらに図表7の右下のSWOT分析によって外部要素と内部要素強みと弱みを整理すると、自分の強みとチャンスの大きい業務エリアを予測できますから、これらを参考して、図表5の中上にある自分の仕事の進め方のパターンを描くことができます。

 他にも「図表6 学生起業への備え」にはまだ説明のない部分がありますが、とりあえずは図表6の詳細図をご覧になり、その記入事例を参考にわかる範囲で自分用の「起業への備え」を作成してください。


おわりに

 この記事をお読みになっている方はベンチャーをやりたいと思っているでしょうから、自分の強みは何で、どのようなことをやりたいかについては、ある程度のイメージがわいていると思いますので、それを書きだしておきましょう。
 この記事でお話したかったことは、「①の世の中が変わるから」、「起業しよう」ではありません。逆に「②の学生起業の備え」を作成するために「①の世の中の変わる」のを利用しようです。すなわち原因があって結果が出るという因果関係ではなく、欲しい「結果」があるのでその「原因」調べ実行計画を作ろうという考 え方です。そんな言葉があるか知りませんかとりあえず「果因関係」を見つけようとでも言えそうです。同様な考え方は「140.未来から現在を考える-ステークホルダーの立場でパーパスを-」で述べたように、周りの人(ステークホルダー)に対してベンチャー企業が狙っている狙いを明確にしなくていけない時代になったという話にもみられます。 

 また「自分への備え」が必要なのは、学生起業の最初に限ったことではありません。今回創ったものはその後、図表6にあるように起業活動が進むにしたがって修正や追加が行われますし、他のプロジェクトにおいても同様な準備が必要になります。その時には今回皆さんが作成した資料や考え方を参考にしていただけば幸いです。

参考資料
Panasonic太陽光発電システム、2021『地球環境を脅かす「5大環境問題」』2021/02/01
https://www.yhg.co.jp/taiyo33/column/(アクセス 2021/110/15)

リンダ・グラットン、2016『LIFE SHIFT(ライフシフト)』2016年11月4日、東洋経済新報社
朝日新聞、2021「自動車業界は今CO2を出さず走る電気自動車への転換が進んでいる」朝日新聞
朝日新聞、2021「劣化した日本社会」2021年10月15日、朝日新聞
朝日新聞、2021「脱炭素の道筋政府が示すべきだ」2021年11月4日、朝日新聞
経 済産業省、2021『令和2年度大学発ベンチャー 実態等調査 報告書』 2021/05/17
https://www.meti.go.jp/press/2021/05/20210517004/20210517004 -1.pdf (アクセス 2021/05/27)

経済産業省、2021『令和2年度産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)調査結果概要』https://www.meti.go.jp/press/2021/05/20210517004/20210517004-2.pdf、(ア クセス 2021/05/27)
厚生労働省、2021『平成20年厚生労働白書 資料編目次』
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/08-2/kousei-data/pdfNFindex.html(アクセス 2021/11/16)

厚生労働省、2021『令和3年版厚生労働白書(令和2年度厚生労働行政年次報告)ー新型コロナウイルス感染症と社会保障ー〔 概 要 〕』
https://www.mhlw.go.jp/content/000810603.pdf(アクセス 2021/11/16)

総務省統計局、2021「労働力調査 2021年4月から6月平均」https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/pdf/gaiyou.pdf(アクセス 2021/11/11)
瀬領浩一、2008「30.メモの活用-手帳と形態の有効利用ー
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/030.html(アクセス2021/11/15)

瀬領浩一、2015「102.原宿のイルミネーションー立つ位置で見えるものは変わるー
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/102.html(アクセス2021/11/15)

瀬領浩一、2020「130.失敗は成功の元ー相談員への道を歩む―
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/130.html(アクセス2021/11/15)

瀬領浩一、2020「132.コロナ後のベンチャー ーITとOODAの有効利用ー
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/130.html(アクセス2021/11/15)

瀬領浩一、2020「134.ジョブ型事自業への道ーニューノーマルの雇用型ー
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/134.html(アクセス2021/11/15)

瀬領浩一、2020「136.IT時代のコロナ後対応ー6次元曼荼羅思考ー」6次元思考で考える方法を-ニューノーマルの雇用型-
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/136.html(アクセス 2021/11/15)

瀬領浩一、2021「137.心豊かに暮らせる社会ーSDGsの利用ー
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/137.html(アクセス2021/11/15)

瀬領浩一、2021「138.ボランティア活動の危機ー水辺のある里山に参加してー
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/138.html(アクセス2021/11/15)

瀬 領浩一、2021「140.未来から現在を考えるーステークホルダーの立場でパーパスをー
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/140.html(アクセス2021/11/15)

瀬領浩一、2021「141.高齢者はデジタルでーPythonで社会に貢献できる実力をー
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/141.html(アクセス2021/11/14)

瀬領浩一、2021「143.起業の種類と事業形態ー個人か法人か?ー
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/143.html(アクセス2021/11/14)

2021/11/20
  文責 瀬領 浩一