ジョブ型自業への道
-ニューノーマルの雇用型-
はじめに
2020年7月18日のODSGの会で、立命館大学 OIC総合研機構 三藤 利雄 氏から、「ジョブ型・メンバーシップ型」のお話をお聞きしました。サブタイトル「今後 CASE, DXなどの革新的な技術の実装と普及が進行するなかで、わが国はジョブ型雇用システムへと移行すべきか、移行できるか」にあるように将来の日本企業における勤務態の在り方についての重要な話でした。
今回は、このお話の準備段階で学んだことも含めて、これからの雇用型についてまとめました。
第1章 三藤氏の「ジョブ型・メンバーシップ型」のお話
お話の内容は以下の通りでした。
1. はじめに
2. 日本型雇用システム
3. メンバーショップ型雇用がもたらした帰結
4. 濱口モデルについて
5. イノベーションの活性化の観点から見たメンバーシップ型雇用システムの課題
6. ジョブ型組織への移行は可能か
CASE、DX実装が進行する中で大量のプレゼンテーション資料は、現在に至るまでの組織の人材雇用で発生たことの説明であり、その中に三藤さんの意見が書き込まれた、わかりやすい説明でした。
さらに、出席にあたっての事前学習の指定されていましたが、終わってみると、そう簡単にはいかないと身に沁みたお話でした。
しかし、ベンチャーをこころざす人には、非常に大きなチャンスとなりそうな時代が来ているようにも感じます。
(注)CASEとは Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、 Shared & Services(カーシェアリングとサービス/シェアリングのみを指す場合もある)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語です。
(注)DXとは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のことを指します。日本では経済産業省が2018年に「デ ジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」をまとめています。
第2章 メンバーシップ型社会とジョブ型社会 事前調査
今回の三藤氏の講演では事前準備として、メンバーシップ型とジョブ型について描かれている3冊お本のうちどれかの最初の50ページ位を読んでおくようにと、指示されていましたので、『濱口 桂一郎 著、「日本の雇用と中高年」、ちくま書房、2001』を読んで参加しまた。その本には次のようなことが書かれていました。
1960年代の日本はジョブ型労働社会を目指していた。
1950年代末から1970年小児至るまでの日本は終身雇用、年功序列に代表される日本型雇用システムに対してきわめて批判的な認識が一般的で、欧米のような労働社会を目指すことが政策の基本となっていました。1960年12月の池田勇人内閣の下で決定された所得倍増計画の雇用の近代化という章に書かれています。
この時には同一労働同一賃金、労働移動の効率化がうたわれていました。p31
その後1966年7月に雇用促進対策法が立法化されました。p33
その前の1966年4月12日の朝日新聞の社説「過剰雇用と労働力不足」では、労働力不足とは年功賃金制の下で給与の低い、しかし将来の可能性に富む若年労働者のことであり、過剰雇用とは、職業能力に比べて相対的に給与高く、技術革新からはみだされつつある中高年層のことだと書いています。p34
今もほとんど同じ状況です。不思議なことに、40年以上前に新聞の社説に載っていた問題が、今もそのまま残っているわけです。
当初、雇用促進対策法が適用されたのは国、地方自治体及び特殊法人であり、民間企業に適用されたのは1971年5月に中高年齢者雇用促進特別法で、この時中高年の定義は35歳から45歳になりました。p35
さらに1976年5月に企業一本になり、高齢者を5%以上雇用することとなり、職種別という考え方は無くなりました。 p35
私は本シリーズの「130.失敗は成功の元」の図表3 自分のやり方に書いたように、1974年に大学院を修了し、外資系のコンピュータ系の会社に入りました。大学・大学院時代は製造業の機械工作に取りつかれていたのに、突然気が変わって、外資系のコンピュータの製造と販売を行っている会社の営業本部を希望しました。この本を読みながらよく就職できたものだと驚きました。多分この会社は外資系とはいえ、メンバーシップ型判断で私を採用してくれたのだと、今頃気が付きました。この本に書かれているような経過については全く知ることなく、日本的雇用の習慣のもとでもっぱら、会社 から指示されるがままに仕事をしていました。メンバーシップ型だとかジョブ型には全く素人であり、50年も前にこんなことが議論されていたと知り驚くば かりです。
しかしながら、この本には、いろいろなお話が入っていて、簡単には全体を知ることができませんでした。
ということで私なりに一枚の絵にまとめたのが図表1 メンバーシップ型社会とジョブ型社会です。
図表1 メンバーシップ型社会とジョブ型社会
出典 濱口桂一郎、『日本の雇用と中高年』、ちくま書房、 2001を参考に作成
この図の左側8個の青枠の部分にメンバーシップ社会についてまとめ、右側の赤枠の部分にジョブ型社会についてまとめてあります。各枠の中の最上部には関心をもったテーマを書き、その下の少し小さい文字部分に簡単な説明を書いています。メンバーシップ型について書いてある青枠と対応した場所にある、赤枠のジョブ型の中テーマのは「仕事が無くなると」のように同じものもあれば、「職能資格とは」と「職務力とは」のように異なったものもあります。たとえ違っても、「職能資格」と「職務力」のようにスキル整理やその評価に使われるものとして同じ位置に書かれています。これで「8次元比較」を行っています.。
こうして作った表ですが、本を読み進めていくにつれて、内容の修正が必要になりました。多分他の人がやれば、また違った図になったかと思います。この図はあくまでも「私はその時、こう理解していた」ことを表すものにすぎません。そのため、正しいか間違っているかはわかりませんが、難しい話を単純化して、全体として理解するためには役立ちます。
2020年の7月27日の朝日新聞の朝刊1面に『希望退職募る企業、急増 コロナ、正社員も削減』、3面に『退職、強引に迫る例も 社長が「あなたの仕事ない」コロナ禍』という記事が載りました」まさにメンバーシップ型のところに書かれた希望退職が新聞記事に書かれているとおりです。
第3章 がんばると迷惑な人
時間とともに、考え方が変わる例として、太田 肇 氏の「がんばると迷惑な人」がありましたので何が書いて あるかを調べ「図表2 がんばると迷惑な人」にまとめました。
出典 太田 肇、『がんばると迷惑な人』、新潮社、2014
分かったことは、以前の生産現場では、生産量はおおむね働いている時間に比例していたことです。そのため生産量が増え続ける成長期には、作業をやる人集めも難しく、長時間働いている人は「がんばりや」として尊重されたわけです。
しかしながら、ITを使った機械化が普及して、一人当たりの生産量が増えてくると、長時間働かなくてもよい状況になってきました。すなわち作業時間という量より、作業時間当たりの生産量もしくは付加価値とという質の向上が重要となってきたのです。ところが今もって、残業をやめ、すべての有給休暇を取ると、同僚や上司から「『がんばっている』と評価されない」と考える傾向があります。こうなると「生産性を落としかねない人」になってしまうというのが、この本の言わんとしている「迷惑な人」です。
他にも努力をしているのに、結果は労働時間が長くなるだけの働き方をする人も出てきます。例えば自社商品 の寸法精度を向上させるために努力しても、それが顧客の望んでいないものであれば、無駄に製品原価を上げることになり、「コロナ後の自業」の図表2の7つのメガトレンドの一つフルガル (倹約的)イノベーションの対象になり、マーケットを失いかねません。結果として「単に失業を避けるための労働や残業代を増やすための労働」になってしまうわけです。したがってこのようなことをする人も「がんばると迷惑な人」です。
単に仕事時間を増やすような「がんばる人」にならないで、仕事の目的や品質を十分考えた活動をしましょうと言っているわけです。同様に、成果上げるために、時には間違ったふりをして虚偽の情報を作り上司の評判を上げるお手伝い(忖度)をする人なども「がんばると迷惑な人」です。
第4章 ジョブ型への転換事例
しかし、そのような人も、自社の製品品質が悪くて、競争相手に対応するために、有名人を商品広告に採用するとか、特別割引を行って営業利益を減らすような状況にある部門では、ぜひ働いてもらいたい時もあるわけです。このように失敗を防いだり、成功をもたらすには、その部門に本当に必要な人を選んで採用することが必要になります。
したがってIT化の進んでいる業界や、新型コロナウイルスのような社会情勢の変化競争がは激しい業界では、環境の変化に対応できるな「ジョブ型人事の考え方」が重要となるわけです。
4.1 富士通のケース
ということで、日本で、「ジョブ型」を行っている会社はないのかと、探していたら2020年7月7日の朝日新聞に「富士通、在宅勤務を原則」という記事が目につきました。
この記事は。7月6日の、新型コロナウイルスなどと共存する「ニューノーマル(新常態)」に向けた働き方改革の発表についての記事です。在宅勤務を原則 と して、働く場所や時間帯を自ら選べるようにするというのがその中核です。 図表3はそこに書かれている内容をマンダラ風に整理したものです。
出典 2020年7月7日朝日新聞の記事を読んで作成
導入される主な制度は次のようなものです。
・ 仕事に応じて働く場所を自由に選択
・ 小規模の拠点を増やして国内のオフィス面積は3年で半減
・ 場勤務者も含めた全社員に在宅勤務の環境を整える費用の補助として、月5000円払う
・ 通勤定期代の支給をやめて実費精算
・ 単身赴任を解消し在宅勤務と出張で対応
・ コアタイムのないフレックス勤務の適用拡大
・ 「ジョブ型人事制度」を全社員に導入
図表3 「在宅勤務を原則 富士通」で言えば左下の「これまでに」に対して赤枠青枠の原則(周りの人と、働く場所の変更し、ニューノーマルの下で、周りの人と)とともに、右上の「狙い」を達成すると言っています。右下に 「ジョブ型」があるように、この発表の中核は、「新型コロナウイルス」に対応するために無理やり始めた「在宅勤務」を機会に、管理職を中心に行われてきた 「ジョブ型」を全社員に適用するといっているわけです。
詳しい説明は、『大河原 克行、20200707_富士通が原則テレワークへ移行――、新常態の働き方「Work Life Shift」を推進_2022年度末までに国内オフィス半減を目指す https: //cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1263703.html、(アクセス 2020/07/08)』に掲載されていますので、そちらをご参照ください。
4.2 日立製作所のケース もう 元には戻さない
同様にグローバルな大企業である日立製作所のケースとして、2020年7月14日の日本経済新聞の『「もう元には戻さない」在宅定着へジョブ型雇用』のなかでには次のような記述がありました。
中西CEOは2008年のリーマンショック後、世界で戦える体制を目指すうえで最大の壁の一つと考えたのが、終身雇用制と年功序列を前提とした日本的雇用制度と考えていました。
日立製作所の海外のグループ会社では在宅勤務でも生産性の落ちないように職務を明確にするジョブ型雇用が当たり前でした。「日本だけが普通でなかった」ということです。2013年度に 国内外の5万人の管理職を同じ基準で評価する制度を導入していました。2016年には時間や場所にとらわれずに働ける仕組みも取り入れたが、在宅勤務の取得率は約1割どまりでした。その中で起きた新型コロナウイルスはこの壁を破るいい機会となりそうです。中畑執行役員は、まずは週2~3日の在宅勤務をコロナ終息後も続けると宣言しました。
ABBパワーグリッド社(従業員3万6千人)を買収し7月1日より営業開始し、グループ社員30万人の5割以上が外国人となり、グローバル化を進める時代となり、「もう元には戻さない」ということです。
しかしテレビ電話やテレビ会議では部下とのコミュニケーションが難しいと考えていた人もいます。 業務は誰のために、何のために(目的・狙い)や、いつまでに行うべきかといった条件や、できないのであればその理由が明確になっていなければ、単にやるこ とだけを記述しても、言われた人は、状況変化を 理解できず、納期変更等もっといい方法があっても柔軟に対応できません。
そういえば、わたくしも以前お客様のつかっているCADソフトに不都合があり、その修正方法を考え、その結果をフランスにあるソフトの開発部門に送り、その方法でよいかと質問したところ、「その対応方法で結構です」との返事がきました。そのうえ驚いたことに、その方は、「わたくしはこれから1カ月ほど夏季休暇に入りますので、フォ ローは よろしく御願いします」と言ってきたことです。今から40年くらい前の話ですが、私は夏休みも取れず四苦八苦しているのに、ずいぶん悠長な話だと、あきれてしまいました。当時の日本ではソフトウエアの大幅な更新は、お客様の仕事を止めないようにと、顧客の長期休暇のある、夏休みや年末年始に行うケースが多 かったのです、こんなことだから、欧州の製造業は日本の製造業に負けるのではないかと感じていました。
しかし、今になってみると、ソースプログラムも持たない私が、コンピュータの機械語を解釈しながら、時間をかけてプログラムの修正を行わなくても、CAD図の書き方(入力作業)を少し工夫すれば、目的のCAD図は書けたわけです。私としては、そのやり方をユーザーに伝え、ソフト開発部門に不具合の説明とそのバイパス方法を伝えておけばよかったわけで す。そうすれば、次のPTFのチャンスに、ソースプログラムを修正すればよいだけの問題だったわけです。私のやったようなことを他の人に自慢すれば、それこそ「がんばる迷惑な人」の事例となるところでした。
また、平田 紀之・山崎 牧子,『アングル:日立が進める「ジョブ型」雇用、日本での普及に懐疑的見方も』にはもう少し詳しく述べられています。この記事で は、各ポストの職務を明確にして最適な人材を充てる「ジョブ型」雇用を国内の全従業員約15万人を対象に導入すると述べています。
4.3 資生堂のケース
2020年7月14日たまたまテレビのスイッチを入れたところ NHK おはBizで『"ジョブ型"が会社を変える!?』という番組を放送しており、その中で資生堂の「ジョブ型」について社長の「魚谷雅彦」のお話をお伺いいたしました。
こちらは富士通や日立のような巨大製造業はありませんが、化学産業に属する有名な大企業です。
「図表4 ジョブ型が会社を変える 資生堂」はそれらをマンダラ風にまとめたものです。
出典 『"ジョブ型"が会社を変える!? https://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20200714/index.html』、(アクセス 2020/07/14) を参考にして作成
テレビを見ていた記憶だけでは、あやふやなので、詳細はNHK、"ジョブ型"が会社を変える!?、
https: //www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20200714/index.html、(アクセス 2020/07/14)を参照して作成いたしました。
そこで「ジョブ型」のメリットは、社外から来た外国人や、時間的制約のある子育て中の女性など、多様な人材を適材適所で公平に配置できるといいます。ちなみに魚谷社長はコロンビア大学でMBAを取り、外資系の日本の会社で役員をされた人で欧米系の会社についてはよくご存じの方です。2013年4月に資生堂マーケティング統括顧問、2014年代表取締役社長に就任され資生堂の立て直しを行ってこられました。
魚谷社長は 「いわゆる"日本型の雇用慣行"、『新卒一括採用』『年功序列』『終身雇用』は、こういう変化の時代、グローバル化を求められる時代に合わなくなってきている。資生堂そのものも、日本企業のあり方に関しても、今変わらないといけないという強い危機感を持っていると書かれています。これは、グローバル化を狙う大企業では、欧米でのマネジメント経験のある人がトップもしくは人事部門のリーダーであることが改革を進める時に役立つということを示しているようにも見えます。
(注)一 方ジョブ型雇用で働く管理職の男性社員に感想を聞いてみると、「自分自身のポジションに求められていることが、よりクリアになっているということが(従来の制度とは)明らかに違う」といいます。それでは、目標が達成できなかった場合はどうなのか聞いてみると、「それはプレッシャーがあると思いますけど」と話していると書かれています。
第5章 ジョブ型への懐疑的な見方とは
第4章では、ジョブ型に移行しようとしている、3つの企業を上げましたが、今後ジョブ型は日本の企業社会に広がり、根付くのかを考えてみます。
同志社大学政策学部の太田 肇 教授は「ジョブ型社会は、仕事が細分化されいわば社内に労働市場を持つ一部の大企業はともかく、多くの企業では取り入れにくい」と懐疑的です。
理由の一つが、日本の労働市場の流動性の低さだと言っております。服部 良太氏・前田 栄治氏の『(日本銀行調査月報2000年1月号・掲載論文)日本の雇用システムについて』によれば 日本は約13年、アメリカは約7年です。
出典:OECD"Employment Outlook 1995" 他にもアメリカはもう少し短いという話もあるようです。
いずれにしても、日本の流動性は低いため、組織変更は難しいようです。
日立の中畑氏は「(職務記述書の)要件に合っていない人が結構出てくるかもしれない」と話しています。
要件を満たせなければ別の仕事を探す必要性が生じるが、 年齢を重ねると、社内で探すのは容易ではない。そのうえ労働者の定年という権利が厚く保障されているため、企業も正社員を簡単に解雇できません。
ということで図表5のように自営業型を取り込むことを提案しています。
出典 太田 肇、「コロナ後はジョブ型雇用」に落とし穴 日本企業は自営型で
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO6001360005062020000000、(アクセス 2020/07/8)
組織は「欧米から会社組 織や法制度を輸入したが、日本の企業土壌にマッチした方法が定着したのであろう」と書いています。しかしこれらの政策は欧米から見る図表1 のメンバーシップ型に挙げたような問題点もあると言っています。したがって今後は図表5 で示したような「自営業型」を取り込むことを提案しています。
ということで、図表1 の左側経営・企業のトレンドを解決するというより、図表1の右側個人と社会のトレンドの解決の時の参考にすることにしました。
おわりに
戦後日本はジョブ型社会を狙っていたが、高度成長時代の日本を支えてきたのはメンバーシップ型でした。ところが、高度成長時代が終わったあともメンバー ショップ社会は、すたることなく日本の企業の重要なパターンでした。年功序列制のために、高齢差化するに従い給料や社会保障が高くなり今までの仕事を続けるのが難しくなった従業員であっても、解雇できないし、売上が減ってきても従業員を解雇できないとなると、商品戦略の変更に後れをきたす要因の一つとなり ます。これを解決するための手段の一つとして近年は非正規社員で対応してきたが、もはやそれも限界にきていることを理解しました。
ちょうどその時、新型コロナウイルスが発生し、急激に感染しないように、日本でもテレワークが行われるようになりました。そして、これを機会にジョブ型雇用制度ヤサテライトオフイスを採用する企業も出てきました。
こうなると、自分の考えで働くオフイスを選んだり、働く時間を決めることができる人も増えてくるはずです。
このようなことをスムーズにこなす能力を手に入れることができる人は、自営業を営むこともできるようになりそうです。
それであれば、正規社員だ非正規社員だという区別をなくして、責任をもって仕事を請け負うことができます。
このシリーズの「コロナ後の自業」で提案している自業はこのための準備段階として使えます。
また三藤氏のプレゼンテーションでは「教育制度や社会保障制度もジョブ型雇用システムに合わせて編成される必要がある」といっています。このためには、教育機関も柔軟性をもって、新しい時代に対応できる人材になるための「学習期間」ビジネスのチャンスが出てきます。以前1990年ころの不況で、希望退職という名目で解雇を経験しましたが、それまで社内教育があると義務感をもって参加していた社員が多かったのに、その後は自費であっても自分のやりたい仕事に移るための外部教育機関に行く社員が増えて来たのを思い出します。
日本では1945年から2000年ころまでは「コロナ後の自業」の図表5 畳屋の事例で取り上げたように職人を育てるための「奉公」のかたちで、現場で約3~6年間学習する制度がありました。奉公が終わるとそのままそこで働き続けるか、自営業として独立したわけです。
これからの企業も社内教育でなくて「奉公」に近いかたちで仕事を行い、独立を望むは人は、事業契約を結び互いにネットワークもしくはチームで仕事をやればよ いわけです。奉公では、就職するまでに(今様に言えば就職先を決める年ごろまでに)、自分から積極的 に「学ぶ」気持ちでやる習慣を身につけておくことが重要です。私が提案する「自業」はそれを今すぐ(学生時代、就職中、転職したいと思った時に)始めませんかという考え方です。
なお、当然かと思いますが自営型もしくは自業型は、ジョブ型をフォローしたいと思っています。
参考文献
NHK、"ジョブ型"が会社を変える!?、https: //www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20200714/index.html、(2020/07/14 アクセス)
大河原 克行、20200707_富士通が原則テレワークへ移行――、新常態の働き方「Work Life Shift」を推進_2022年度末までに国内オフィス半減を目指す_大河原.docx -
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1263703.html(2020/07/08 アクセス)
太田 肇、『個人尊重の組織論_企業と人との新しい関係』、中公新書、1996
太田 肇、『がんばると迷惑な人』、新潮社、2014
太田 肇、「コロナ後はジョブ型雇用」に落とし穴 日本企業は自営型で
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO6001360005062020000000( 2020/07/8 アクセス)
小松 昭英、エッセイ「続・コロナ禍+ズーム化の衝撃」20200707公開、
http://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2020/07/e-126.pdf、(20200708 アクセス)
佐脇 英志、コロナ禍と戦うアジアの日本人起業家達:ピボットでピンチをチャンスに!
http://www.world-economic-review.jp/impact/article1759.html (2020/07/10 アクセス)
日経BizGate会員へのアンケート結果「テレワーク 週2~3日が効率的」6割コロナ後の働き方 BizGateアンケート
https: //bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO6125130007072020000000/?n_cid=TPRN0016、 (2020/07/10 アクセス)
日経新聞、「もう元には戻さない」、日本経済新聞の2020年7月14日の記事
服部 良太・前田 栄治、『(日本銀行調査月報2000年1月号・掲載論文)日本の雇用システムについて』、2000年1月、
https: //www.boj.or.jp/research/brp/ron_2000/data/ron0001b.pdf (2020/07/24 アクセス)
濱口 桂一郎、『日本の雇用と中高年』、ちくま書房、2001
平田 紀之、山崎 牧子,『アングル:日立が進める「ジョブ型」雇用、日本での普及に懐疑的見方も』、2020、
https://jp.reuters.com/article/hitachi-idJPKCN24F16C(2020/07/15 アクセス)
三藤 利雄、『200718-ジョブ型-メンバーシップ型』、ODSG定例会20200718参考資料
2020/07/28
文責 瀬領 浩一