人と地域のWEBマガジン ISHIKAWA DRAWER

Toru Miyamoto

丸井織物株式会社 代表取締役社長
宮本 徹

Credo
#07
2017.03.06

Introduction

丸井織物株式会社は、創業から80年間能登に本社を構え、「テキスタイルメーカー」「産業資材メーカー」、そして最近では「IT企業」と三足のわらじを履き幅広い事業を展開しています。ざっくばらんで豪快な笑顔が印象的な、宮本社長のクレドをお伺いしました。

Q.1

御社のクレド(信条・行動規範)、教えてください。

「丸井にかかわる全ての人々が、仕事を通して人間成長をはかり、豊かで健やかな人生を創り上げるところにある」。これは丸井Wayと言って、経営理念として掲げている言葉ですが、仕事を通しての人間成長をキーワードにしています。縁があってこの会社に入ったわけですから、一人ひとりがここで成長をしていくこと。そして、豊かで健やかな人生をつくること。「豊か」というのは、経済的にはもちろんですが、仕事のやりがいという意味でもそうあってほしい。働いている時間が8時間だとしたら、24時間の3分の1、起きているのが16時間だとしたらその半分は会社へ来ているわけですよ。単に生活していくための給料をもらうだけではなくて、そこでのやりがいや面白さを実感してほしい。例えば去年より今年、あるいはこの3年で自分も成長したなと感じられる会社にしたいという想いがこの言葉には詰まっています。そして、経営理念の他に5つの行動指針というものもあって、より具体的に経営理念を補足しています。

1. 幅広い視野と豊かな感性で世界を見つめ、夢の実現に向けてはばたこう
2.「これでいいのか」「だからどうする」を常に心がけ、絶え間無く、改善・創意工夫に取り組もう
3. 現地現物で本質を見極め、素早く合意・決断し、全力で実行しよう
4. 個性を存分に発揮し、相互に認め合い、積極的に困難に立ち向かおう
5. 誠実と質素を旨とし、規則と礼儀を重んじ、協調・協力しよう

まず一つ目は、チャレンジしていきましょうということ。組織ってなかなか失敗は許されないけれど、チャレンジした人が報われるような会社にしていきたい。会社という舞台を大いに利用して自分たちの実現したいことをやってもらう。そしてそれが会社の実現したいことと重なればベストですね。二つ目は、イノベーションと改善。ものづくりのメーカーとして、ずっと同じものを作っていてもダメなんです。変わっていかないと会社も人間も潰れる。ダーウィンの進化論じゃないけれど、生き延びていくためには変化していかないといけない。今の時代、為替の変動も激しいですし、国と国との関係性もどうなっていくか分からないですが、どんなに外部環境が変化してもその中で生き残っていけるというのが大切です。三つ目は、現場主義。四つ目は、リスペクト。社員がお互いに尊敬できる環境をつくっていくこと。私は社員に「丸井は動物園でいい」とよく言っているんです。どこを切っても金太郎飴みたいに同じような人間しかいない会社ではなくて、いろんな個性があっていい。動物園って個性が集まった場所でしょう?ゴリラもいればライオンもいる。その中には寝てばかりのナマケモノもいるけどね(笑)。そういう人たちを活かせる場所にしたいんです。最後は、チームワーク。いろんな動物がいていいから、お互いを尊重し合える動物になってほしい。そして園長の出した最終決断には従ってもらう。それさえ守ってくれたら、あとはもう自由にやってくれと。うちはそういう会社ですね。

Q.2

「働く」って、なんですか?

働くというのは、我々の経営理念そのものだと思っているんです。ただ単に、遊ぶためであったり家族を養うためのお金を稼ぐためのものじゃない。働いている時間を充実させて、自分自信も成長する。そして、自分の力を他の人のために使って、たくさんの人に喜んでいただくのが「働く」ということなんじゃないかな。

学生の時と違うのは、社会へ出たら、好きな仲間とだけ一緒にいるんじゃ仕事はできないという点です。少人数の気の合う仲間で「こいつとは相性がいいよな」と言いながら飲んでいるのは楽しいだろうけど、社会に出たらそういうわけにはいかない。会社に入ったら、いろんな同僚がいる。いろんなお客さんがいる。その中には気の合わない人もいるでしょう。そういう人たちと協調・競争していけるかどうか。そのためにはコミュニケーションが一番重要です。メールやSNSなど、コミュニケーションのツールが発達した時代になりましたが、本来コミュニケーションというのは相手の目を見て話し、相手の心を動かすこと。そして、自分の思いを相手に伝えるために大切なのは、ロジカルシンキングです。コミュニケーションといっても、論理的に話ができないとダメなんですよね。「私は好き」「私は嫌い」というような感情論では話が前に進まない。自分の「好き」と「嫌い」を分析できて初めて、人にわかってもらえるんです。

最近の若い人は、もっと自分の個性を大切にした方がいいと思いますね。先ほども話した通りうちは動物園ですから、面接でも一人ひとりの個性を重視しています。ある社員が、前任者の引き継ぎで客先へ行った時に「君、前の担当者よりも間抜けそうな顔してるねえ(笑)」と言われたらしくて(笑)。そいつ、「はい!ぼく、見た目の通りバカなんです!よろしくお願いします!」と言って帰ってきたの。面白いヤツでしょう?そうしたらそのお客さんにめちゃくちゃ気に入られてね。彼は心の中で泣いているかもしれないけど、表には絶対出さない。営業マンとして100点ですよ。あとはきちんとした仕事をするだけ(笑)。ぼくは良い大学を出た優秀な人間よりもそういうヤツが好き。採用活動でも「変わっている人間をたくさん入れよう」っていつも言ってるから、総務のスタッフは困っているかもしれないけどね(笑)

Q.3

いしかわで働く意義って、なんですか?

うちの会社が創立当初から能登を本社にし続けているのは、ここに育てられたからです。「こだわり」ですよ。そしてそれが存在意義でもあります。私たちは「NOTO QUALITY」という名前でブランドを出しているのですが、ここに埋もれるのではなく、能登から世界へ向けて発信していこうという意味がとても強いです。石川県で会社をやろうと思ったら、金沢を本社にした方が人材も集まりやすいし、便利なこともたくさんある。そういう意味ではデメリットの方が多いけれど、今はインターネットの時代ですから、これだけ通信手段があれば仕事には支障をきたさない。ここにいるという原点のこだわりを何よりも大事にしているんです。理由なんかない。これこそ「好き嫌い」の問題ですね。こだわりを説明なんかできない。そんなことしたら、屁理屈になってしまうよ。

今までは、「繊維なんて」とよく言われていました。ぼくたちの時代には斜陽産業でしたしね。でもこの2、3年で「繊維って面白い!」と言う子が入ってきてくれるようになったんです。うちの会社には、北海道や沖縄など県外出身者がたくさんいますよ。その子たちに聞くと「繊維が好きだから丸井に来たんです」と言っていますね。まず根本は、何よりも企業の魅力です。県外の人から「石川県にあるあの会社に行きたい」と言われるような魅力的な会社を増やすことが大切ですし、自分たちがそうでなくてはいけないと思っています。ターゲットを石川県だけで考えていると同じような人ばかり集まりますしね。さっきの動物園の話じゃないけれど、いろんな人がいるから刺激になる。集団の中で「異物」となる人が必要なの。そうしないと会社って活性化しないんですよね。

Q.4

休日の過ごし方、教えてください。

土曜日でも仕事をするときもありますが、そうでない時はゴルフをしたり読書をしたり。社長の仕事ってオンとオフがないんです。仕事とは関係なく楽しい仲間とゴルフをしていても、その時は楽しいけれど、終わったら会社のことを考えている。会社のことを考えない日ってなくて、そういう意味で言えば社長の仕事は24時間。これはしょうがないですね。なかなか長期間の休みが取れないので旅行にはあまり行けなくて、女房にしょっちゅう怒られるんですよ。「あんたいつ休めるの?早く会社辞めてよ」って。それで、もっと年取ってから辞めるよって言ったらね、「動けなくなってから家にずっといても迷惑だから、それなら動けなくなっても会社に行ってよね」だって(笑)。厳しい叱咤を受けていますよ(笑)。

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  • 開発商品着用のマネキン2体と宮本社長。トリオ感、出てます。
  • 工場の通路には、社員から募集した安全がテーマの標語の数々が。
  • 本社織布工場は、従来のイメージを一新する明るい雰囲気が印象的。
  • 約4万点の生地サンプルを蓄積する、1400㎡のテキスタイルスタジオ。