2017年秋季ばね及び復元力応用講演会出張報告
2018/03/07
2017年秋季ばね及び復元力応用講演会出張報告
先端科学・イノベーション推進機構 博士研究員 三井真吾
2017年11月22日に名古屋市のウインクあいちにおける2017年秋季ばね及び復元力応用講演会にて講演を行った。講演題目は「SOIピクセル検出器を用いた小型リアルタイムX線残留応力測定装置の開発」である。X線残留応力測定の背景から開発した装置の概要、応力試験片や一般工業材料のX線残留応力・半価幅測定および硬さ試験について高速で実用的な精度で測定可能であることを示した。
従来のX線残留応力測定装置は、0・1次元のX線検出器を用いて検出器を回転させながら回折環を計測しているため測定時間が10分以上掛かる。しかし、我々の研究しているcosα法は、2次元X線検出器を用いてリアルタイムで回折環全体の計測が可能である。そのため、測定時間が600~6000倍高速になり、1秒以下での残留応力や半価幅、硬さの測定が可能である。これにより、今までは不可能であった金属製品の全数検査やマッピング測定が可能となり産業への応用可能性が大いにあるため、多くの企業から関心が寄せられた。
講演会の参加者には、ばね鋼やばね製品関係の企業が多く、大学などの研究機関の研究者も見受けられた。参加者の講演では、ばねの復元に関する研究、防錆剤に関する研究、応力に関する研究など、ばねやばね鋼に関する幅広い分野での発表があった。磁場によってばねの振る舞いが変わるという研究からばねの形状による応力分布の研究、環境による錆や亀裂の発生や伝播に関する研究など応用範囲の広い研究も多く、我々の研究にも活かせる内容のものも多かった。
講演会後は、いくつかの企業の方から研究に関する質問や疑問があり、詳細な話を進めていく中で、何社かの方は後に研究室訪問、技術相談をするに至った。今後はさらに研究を進めて、共同研究に発展していきたい。特に、線材や丸棒の測定の需要は高かったが、曲率の影響があるため現在理論と測定技術の両面から研究中である。今回の講演会において、研究に対する様々なご意見を頂いたので、ユーザーの視点に立った開発を行い、製品化を進めていきたい。
(2018.2.23)