- 極めて柔らかい膜環境にあるタンパク質分子のナノ動態イメージングの実現 (2017年度-2021年度) ナノ生命科学研究所 特任教授 安藤 敏夫 極めて柔らかい膜環境の下で働く膜タンパク質の動きを高速原子間力顕微鏡で観測することは、膜が計測探針との接触によって大きく変形してしまうため未だに実現されていません。本研究では、そのような柔らかい膜環境中にある様々な膜タンパク質の機能動作と動的構造を観測できる次世代の高速走査型プローブ顕微鏡の開発に挑戦します。
- 稲作と中国文明ー総合稲作文明学の新構築 (2015年度-2019年度) 人間社会研究域歴史言語文化学系 教授 中村 慎一 領域では、従来の中国文明研究では軽視されてきた稲作と文明形成との関わりにスポットを当て、考古学を中心に、歴史学、文化遺産学、社会学、地理学、植物学、動物学、人類学、農学、地球化学、年代学等を専門とする多彩な研究者が一丸となり、「総合稲作文明学」という新たな学術領域の創成に挑みます。
- X線突発天体の監視による重力波源の同定とブラックホール形成メカニズムの研究 (2016年度-2020年度) 理工研究域数物科学系 教授 米徳 大輔 重力波とは、ブラックホールなどの重たい天体が高速で運動する際などに生じる時空の歪みが、波動として伝わっていく現象です。1916年にアインシュタインが発表した一般相対性理論からその存在が予言されていました。そして、2015年9月15日、米国の重力波観測施設LIGOによって、史上初となる重力波の直接検出が実現しました。重力波の観測だけでは方向決定精度が不十分なため、本課題では、重力波観測が本格化する2018年頃に、広視野X線撮像検出器とガンマ線トリガーシステムを搭載した超小型衛星を打ち上げ、重力波の発生と同期したX線突発天体を発見することで、重力波源の同定を目指します。また、重力波とX線・ガンマ線の検出時間の差などから、ブラックホールの形成過程を初めて観測的に議論できるようになるでしょう。
- 高速バイオAFMが拓く新構造生物学 (2012年度-2016年度) 理工研究域数物科学系 教授 安藤 敏夫 世界最先端の顕微鏡「高速AFM(Atomic Force Microscope)」を用いて多様なタンパク質系について動態イメージング研究を行い、その機能メカニズムを明らかにします。併せて、新しい顕微鏡の要素技術の開発にも挑戦します。
- 「肥沃な三日月弧」の外側:遊牧西アジアの形成史に関する先史考古学的研究 (2013年度-2017年度) 人間社会研究域歴史言語文化学系 教授 藤井 純夫 従来の西アジア考古学は、都市と農村の考古学であり、そこには周辺の遊牧社会は組み込まれていなかった。本研究では、広域遺跡調査を通して遊牧西アジアの形成史を明らかにし、都市・農村世界に偏った従来の西アジア考古学を刷新し、西アジア史の全体性を回復することを目指します。
- 新物質群「3次元カーボン構造体」と革新的触媒反応 (2018年度-2023年度) 新学術創成研究機構 ナノ生命科学研究所 教授 生越 友樹 本研究では、有機化学的に構造制御が可能な新物質「3次元(3D)カーボン構造体」を構築し、革新的電極触媒反応を開発します。さらに3Dカーボン構造体に柔軟性を持たせ、力学的エネルギーにより反応触媒サイト間の距離や基質の量を変化させ、電子やイオンの能動的な制御を行います。加えて、得られた3Dカーボン構造体を個別に設計・合成された半反応電極触媒として用い、同一導電性基板上に空間的に隔てて共担持した局部電池触媒を構築します。
- 微粒子による生体応答の相互作用の解明と制御 (2018年度-2023年度) 新学術創成研究機構 ナノ生命科学研究所 教授 華山 力成 微粒子に対する生体応答を担う主役は、最初に微粒子を取り込む貪食細胞です。貪食細胞はまず恒常性を維持する為の防御性炎症応答を行いますが、この過程が過剰になると、周辺環境を破壊する傷害性炎症応答を引き起こします。本研究では、微粒子本来の生理機能や体内動態を解析する技術の開発により、エクソソームやエアロゾルに対する炎症応答を解析し、その相互作用によって炎症応答が傷害性へと移行する機序を解明・制御します。
- 1細胞遺伝子発現解析による組織微小環境情報の構築 (2015年度-2020年度) 医薬保健研究域医学系 特任教授 橋本 真一 組織の状態を理解する事は、診断や病態を改善する上で非常に重要であります。その理解には組織において位置情報を保持したまま数千以上の1細胞の解析が必要となります。本研究では、1細胞由来のRNAにランダムにバーコードをつける技術を用いて、組織から数千~数万レベルの1細胞の位置情報と遺伝子発現を解析する方法を提案します。この方法によって癌細胞等に対する創薬ターゲットの同定、診断基準の決定が可能となります。
- 磁歪式振動発電の実用化に向けた革新的メカニズム・材料の創成 (2015年度-2018年度) 理工研究域電子情報学系 准教授 上野 敏幸 磁歪式振動発電は身近な振動から効率よく発電を行う技術です。今回の研究課題では、発電デバイスを洗練化、微振動からミリワットの発電、半永久の動作を可能とする技術を確立します。またデバイスと合わせ、人・モノの動き、波、流れから効果的に振動を発生するメカニズムを開発することで電池不要IoTの汎用性を高めます。磁歪材料においては性能と均一性を向上、量産技術も確立することでデバイスの低コスト化を実現します。
- 消化器がんの発生・進展過程における慢性炎症の誘導と役割の解明 (2012年度-2016年度) がん進展制御研究所 教授 大島 正伸 多くのがん組織は炎症反応を伴っていますが、その誘導機序や役割については明らかになっていません。本研究では、発がんの初期および悪性化進展過程で、炎症反応が誘導されて遷延化するメカニズムを明らかにし、炎症反応ががん細胞の増殖や浸潤を促進する分子機序を解明することを目指しています。
- ATP/GTPが駆動するタンパク質マシナリーの動的構造生命科学 (2013年度-2017年度) 理工研究域数物科学系 教授 安藤 敏夫 ATP分解酵素/GTP分解酵素の多くは、動く、引っ張る、押す、解く、絞るといった力学的作用を生み出し、様々な生命現象を支えています。本研究ではタンパク質マシナリーが働いている現場を直に観る、時には分子を操作する新しい手法により、新しい構造生命科学を開拓します。
- ナノスケールの電気化学イメージング技術の創成 (2018年度-2021年度) 新学術創成研究機構 ナノ生命科学研究所 理工研究域電子情報学系 准教授 髙橋 康史 電気化学計測やナノ計測に特化した4種類のプローブ顕微鏡を駆使して、局所触媒活性の電気化学イメージングと制御、イオン・ホール伝導が関与する化学反応の理解、溶液中でのイオン濃度プロファイルイメージング、局所計測のための要素技術開発の4つのテーマをもとに研究を進めていきます。
- 光触媒の能動的制御による近赤外光合成プロセスの開発 (2018年度-2021年度) 理工研究域物質化学系 准教授 古山 渓行 近赤外光により選択的に活性化される触媒を開発し、可視光材料をはじめとした高付加価値材料の新しい合成法を開発します。近赤外光と強く相互作用することが知られるアザポルフィリンを利用し、置換基効果・中心元素の調整により吸収波長・光励起状態を能動的に制御できる設計指針を産み出し、600〜1000nmの光で駆動する触媒の開発を目指します。
- 環状バナデートによる特異的な酸化剤の活性化 (2016年度-2019年度) 理工研究域物質化学系 テニュアトラック助教 菊川 雄司 本研究では、分子レベルで金属酸化物の構造を制御し、構築される特異的な反応場を利用することで、メタンなどの選択的部分酸化反応の達成を目指します。金属が持つ、単核では利用することが難しい弱い性質を、環状に配列させ集積させることで、酸化剤を強力に活性化できる反応場を作り出し、利用していきます。特に、種々の触媒反応系に用いられるバナジウムに着目し、立体化学を駆使した反応系の開発を行います。
- 界面をもつポリマー流体の3次元挙動の数理解析 (2016年度-2019年度) 理工研究域数物科学系 准教授 野津 裕史 界面をもつポリマー流体の3次元挙動を明らかにします。ここでいう界面は2つあり、ひとつは移動するポリマー流体界面、もうひとつは相分離の界面です。本研究を推進することにより、新しいポリマー材料の開発、ポリマー製品の物性予測、製品製造工程の効率化などに貢献します。特に、高速射出成形過程における3次元ポリマー流体の性質をシミュレーションから示します。
- 固体高分子形燃料電池の代替を実現する直接ギ酸形燃料電池の開発 (2014年度-2016年度) 理工研究域機械工学系 助教 辻口 拓也 本研究では固体高分子形燃料電池を代替する直接ギ酸形燃料電池(DFAFC)の開発に取り組みます。ギ酸は優れたエネルギーキャリアのひとつで、燃料電池 に直接供給することができます。しかし、現状のDFAFCは出力が低く、自動車や定置用としての使用は困難です。そこで本研究では、DFAFCの性能を飛 躍的に向上させる触媒を開発し、固体高分子形燃料電池に匹敵する出力を発揮するDFAFCの開発に挑みます。
- ゲスト分子-空間空隙相互作用の原子スケール3次元AFM計測技術の開発 (2014年度-2016年度) バイオAFM先端研究センター 助教 淺川 雅 空間空隙材料による選択な貯蔵・輸送・分離・変換を実現するためには、ゲスト分子がどのような相互作用を受けてナノ空間空隙に接近・吸着するのか分子スケールで理解することが重要です。本研究では、ゲスト分子と空間空隙の間に生じる相互作用力を3次元空間で直接計測する新しい先端AFM技術を開発し、ゲスト分子の吸着エネルギーに関する考察や吸着サイトの可視化を実現する基盤的計測手法を確立します。
- ヘパトカインを介した肝臓による恒常性維持機構の解明 (2014年度-2016年度) 医薬保健研究域医学系研究科 准教授 御簾 博文 これまでに肥満症や2型糖尿病の病態に関連した肝臓由来分泌タンパクを同定し、これら機能未知の肝由来分泌タンパクを“ヘパトカイン"と呼ぶことを提唱してきました。今回の研究では、申請者が同定したヘパトカインの全身での多面的な作用を解明しその受容体を同定することで、ヘパトカインを標的とした過栄養関連疾患に対する新たな診断・治療法の開発を目指します。
- 新規高速原子間力顕微鏡で解き明かすミオシンVの化学-力学エネルギー変換機構 (2013年度-2015年度) バイオAFM先端研究センター 准教授 古寺 哲幸 探針で触りながら生体分子の“構造”と“動き”を同時に観察することができる高速原子間力顕微鏡の特徴を活かし、観察対象の特定の部位だけを強く触りながらビデオイメージングすることができる新規の可視化実験技術を開発します。そして、その革新的分子イメージング技術を応用することによって、モータータンパク質であるミオシンVの化学-力学エネルギー変換のメカニズムを解明します。
- 分子レベルで制御された次世代キラル超空間の創成と機能開拓 (2013年度-2015年度) 理工研究域物質化学系 准教授 生越 友樹 柱状面性キラル環状分子を組み上げて、完全有機の1次元チューブ及び3次元ネットワークキラル超空間を創製します。それらをもとに他材料への応用や展開を図り、最終的には、安価・簡便性とキラリティーという高度な機能を兼ね備えた次世代を担う空間空隙材料の創製を目指します。
- 内因性リガンドによる進化的に保存された自然免疫活性化機構の解明 (2012年度-2015年度) 医薬保健研究域薬学系 准教授 倉石 貴透 がんや肥満などの生活習慣病には「慢性炎症」が深く関与しています。慢性炎症の発生・維持には、NF-κBタンパク質の活性化が重要です。これまでに、NF-κBを活性化する新しいシグナル伝達経路を見いだしており、本研究では、その経路に関わるすべての因子を明らかにします。それにより、生活習慣病につながる未知の要因が見いだされ、新たな疾患予防薬のターゲットが見つかることが期待できます。
- 免疫抑制化レセプターに着目した微生物叢と宿主の共生および疾患発症メカニズムの解明 (2018年度-2021年度) 先進予防医学研究センター 特任准教授 平安 恒幸 常在細菌叢は宿主と共生関係を成立させて宿主の免疫に影響を及ぼしますが、 そのメカニズムは十分に分かっておりません。本研究では、ある種の微生物や腫瘍細胞が、免疫抑制化レセプターを利用して宿主の免疫へ作用することに着目し、 免疫抑制化レセプターと常在細菌叢との相互作用を解析します。 そして、免疫抑制化レセプターに基づいた微生物叢と宿主の相互作用・共生を理解し、疾患との関係解明を目指します。
- 消化管内分泌細胞と腸内細菌叢との相互作用メカニズム解明 (2017年度-2020年度) 医薬保健研究域薬学系 准教授 倉石 貴透 腸内細菌叢の乱れが糖尿病や肥満につながると示唆されています。しかし、どのような腸内細菌が関与しているかわかっていません。消化管では、インスリンの分泌や食欲を制御するさまざまなホルモンが作られています。私は、消化管ホルモンの合成を制御する腸内細菌を探索し、腸内細菌からのシグナルを受け取る受容体の同定を目指します。見つかった受容体を調節する化合物を作成して、新規医薬品を創出に繋げることを目指します。
- イオン液体とラジカルを利用したリグノセルロース・リファイナリー 理工研究域自然システム学系 教授 高橋 憲司 イオン液体を用いたバイオマス処理方法の技術開発を進めます。イオン液体を用いることで、食料とは関係ない木質系を原料とするエネルギー製品や化学製品の開発につなげます。
- バイオイノベーティブデザインの研究開発 理工研究域機械工学系 教授 坂本 二郎 生物構造の優れたデザインに着想を得て革新的な機械構造を設計するための「バイオイノベーティブデザイン技術」を開発することで、産業への応用展開を行うことを目指します。 将来的にはこの技術により、建設機械を始めとする産業機械分野において超軽量かつ高強度な構造を実現するなど、革新的な製品開発が期待されます。
- 植物由来の炭素繊維複合材料の開発 新学術創成研究機構 准教授 仁宮 一章 本研究では、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)適用航空機のライフサイクルCO2排出量を削減することを目的として、現在石油から作られているCFRPを植物由来に代替するための技術開発を行い、エネルギー転換・利用効率向上の実現を目指します。 将来、航空機を始めとした輸送機器・発電等産業機器などの燃費低減への貢献が期待されます。
- コンクリート橋の早期劣化機構の解明と材料・構造性能評価に基づくトータルマネジメントシステムの開発 理工研究域環境デザイン学系 教授 鳥居 和之 北陸地方のコンクリート橋では、深刻な早期劣化が生じており、それらをいかに維持管理していくのかが課題となっています。 本研究プロジェクトは、産学官民共同で道路橋の合理的な維持管理手法として点検・診断、モニタリング、評価判定、対策・更新への個別的な課題の抽出をとおした新技術の開発とメンテナンスマネジメントシステムを構築します。
- 生体分子ムービー観察を実現する高速イオン伝導顕微鏡の開発 理工研究域バイオAFM先端研究センター 助教 渡邉 信嗣 生体分子は自らの構造を変化しながら、他の生体分子と相互作用することで機能を発現しており、構造と動きを直接的にとらえるムービー観察技術が強く求められています。本課題では、独自に考案した技術とイオン伝導顕微鏡を融合した新しい走査プローブ顕微鏡の基盤技術を開発します。これにより、液中の生細胞膜ナノ構造のムービー観察を高解像度で高速、非標識に行うことができ、生命科学研究における革新的な研究ツールとなることが期待されます。
- 抗がん剤抵抗性がん幹細胞をターゲットとする革新的がん治療戦略 がん進展制御研究所 准教授 仲 一仁 がん幹細胞は、無限の自己複製能と抗がん剤に対する抵抗性を持ち、がんの再発や転移を引き起こす原因となっています。このがん幹細胞の抗がん剤抵抗性メカニズムを解明し、がんを根治する次世代のがん治療法を開発することを目指しています。
- がん幹細胞を標的とする薬剤を探索するための革新的インビトロがん幹細胞モデル系の開発 がん進展制御研究所 教授 高橋 智聡 人工的ながん幹細胞モデルを作り、がん幹細胞が生じるメカニズムの理解と治療薬の発見を目指します。将来的にがんの根治につながる遺伝子や化合物の発見が期待されます。
- 覚醒制御システムのコネクトミクス:睡眠・覚醒制御系の全解明 医薬保健研究域医学系 教授 櫻井 武 現代人の睡眠の質を改善し活気のある生活を実現するために、睡眠と覚醒をあやつる脳内物質「オレキシン」を中心に、睡眠と覚醒を切り替える脳内メカニズムを解明し、健康な睡眠を促す方法や睡眠障害の治療法を開発することを目指しています。
- グローバル化による生殖技術の市場化と生殖ツーリズム:倫理的・法的・社会的問題 医薬保健研究域医学系 助教 日比野由利 医療技術の進歩は、寿命の延伸だけではなく、「生殖」にも大きな変化をもたらしています。体外受精や不妊治療などが上げられますが、さらに、生殖ツーリズムといった国際的な問題も顕在化しています。こうした問題は、医療技術に加え、倫理や法律、社会制度などと複雑に関係しています。これらを総合的に研究し、生殖補助医療のあり方について検討します。
- 遺伝子改編酵素AID/APOBECがつくるB型肝炎慢性化と発癌の機序 医薬保健研究域医学系 教授 村松 正道 遺伝子改編酵素AIDとその類縁酵素群(APOBECs)が発癌プロセスにかかわる可能性を追求し、ウイルスによる発願機構の解明を目指します。
- 有機エアロゾルの超高感度分析技術の確立と応用に基づく次世代環境影響評価 環日本海域環境研究センター 准教授 松木 篤 大気中の微粒子である大気エアロゾルは、大気汚染の原因になるだけではなく気候にも重要な影響を及ぼします。本研究では「能登スーパーサイト」で大気エアロゾルを観測し、その特性を分析することで、地球温暖化をはじめとする環境問題のより正確な理解に貢献することを目指しています。