金沢大学先端科学・社会共創推進機構

VBL

19.待望のサービスロボット

-ロボット展2007より-

 去る2007年11月28日~12月1日にかけて東京 国際展示場にて、ロボット展2007が日本貿易振興機構の主催によって開催されました。会期中の入場者数は主催者の発表によれば104,211名となっております。すでに、いろいろなロボットが使われていることは知ってはいたが、改めて最近のロボットの研究課題は何か、その中で大学が出来ることは何かまた、大学がやったほうがいいのは何かを探りました。

産業用ロボット

 上の写真は、大型液晶パネルを一つの機械から次の工程の機械へと移動させるための機械です。左の写真は、大型液晶パネルを一つの機械から次の工程の機械へと移動させるための機械です。隣の人間の大きさと比べても、わかるように、縦・横数メートルの液晶基盤を10メートル近く持ち上げ、左から右へと流れるよう に動かしていました。まるで空中サーカスを見てるような感じでした。会場のあちこちで、機械メーカー各社は、同様な移動用の機械を所狭しと展示されていました。さすがに天井の高い展示会場も、いつもより低く感じさせられました。電子産業だけでなく、自動車の組み立てラインはこのようなロボットがラインを取り巻いているわけです。産業用ロボットは生産ラインと一体で設計されるものです。個人プレーの集まりでしかない大学の研究室が、リーダーシップを取って行う研究には向きそうも無いロボットと感じさせられた次第です。
 そのほかの産業用ロボットしては、プレス用、樹脂成形用、鋳造用、塗装用、入出荷用、溶接用、搬送用、機械加工用、組立用、測定・検査・計測用、クリーンルーム用、マイクロロボット、マイクロマシンシステム等何からなにまで出品されている感じでした。

サービスロボット

 産業ロボット以外にも、非製造業及び応用システム以外のロボットを集めた、サービスロボットのコーナーがありました。たとえば、極限作業ロボット(海洋開発用、原子力用、防災用、宇宙開発用)、メンテナンス・検査用(ガス、電力、通信、土木、建築)、補修用、マイクロロボット、マイクロマシンシステム:医療用、ホームオートメーション用(清掃用、警備用、調理用)、医療・福祉用(介護用、介助用、リハビリ用、チャイルドケア用、車いす用) 、エンタテイメントロボット、パーソナルロボット(ホビー用、接客用、教育用、ペット用、コミュニケーション、ヒーリング)、農業・林業・漁業用、バイオ産業用、研究開発用、2足歩行ロボット及びシステム・部品、パーソナルロボット等新しいロボットの用途です。
 たとえば上の写真は、歯医者さんの訓練用ダミーロボット:かわいいお嬢さんが口をあけて何をしているのかと思えば、これはロボットで、医師もしくは実習生の研修用のロボット(ダミー人間)だそうです。
 このロボットの口にはセンサーが内蔵されており、医師や歯科実習生が誤った処置をしたり、力を加えすぎると、「痛い」との叫ぶようです。株式会社ココロ(Kokoro Company Ltd.)と日本歯科大学が共同開発し、その成果として製作したもので、現在は同大学の附属病院に試験的に導入されているそうです。
 昔自分がまだ学生のころ、医者の卵であるの先輩の医学部学生に、「ちょっと、手を貸してくれない。こんど初めて患者さんに注射をするのだけれど、どうも自信が無い。練習させてよ」といわれ、思わず手を引きこめてしまったのを思い出しました。

ROBO Link Forum 2007

 展示会以外にもいくつかの講演会が行われました。ROBO Link Forum 2007もそのうちの一つです。次世代知能ロボット分野における優れた要素技術を有する欧米諸国と日本の産業技術交流の促進を目的に開催されました。以下は講演の要旨です。

ロボット産業と世界的なR&D活動(レンセラー工科大学教授 アーサーアンダーソン氏)
 ロボットはコンセプト時代を終わり、いくつかの用途では、十分実用化レベルに達した。これから考えることは、今後どのような用途に展開できるかを考えることである。現在のロボットは、特定の用途に合わせ、いろいろな機械要素を組み合わせたものであり、人間のように何でもこなせるものはまだできていないとのこと。とはいえ、現存する機械を制御し、あらかじめ設定された最適と思われる状態で動かせるための機械や部品は、どうしてロボットとは呼ばれないのかはわかりませんでした。

サービスロボットビジネス創造に向けた鍵(富士重工業 竹中恭二氏)

 少子高齢化社会をむかえて、生活の場で使われるロボットへの期待は高まっているが、実際は期待だけが先行し、そういったロボットの事業化の例は少ないとのことまだ数十年はかかりそうだとのことでした。
 とすれば、今ロボットの研究者がなすべきことは、ロボットが人間と同じ仕事を同じようにこなすことは期待しないほうがいいのかも知れない。
 考えて見れば、人間の歩行能力を移動目的と捕らえることによって発達した自動車は、人間の足とも、その他の動物の脚ともまったく違ったものになったし、口や耳の代わりをするものは、スピーカーやレシーバーとこれもまた人間の姿とはまったく違っている。
 形や機能を真似るのではなく、行動目的を満足させることがサービスロボットであると考えれば、設計の自由は無限に広がる。それに従って、必要な研究や技術開発の方向もまったく違ったものになることを感じさせられた講演でした。
 産業用ロボットと違ってこれなら、大学や中小企業やベンチャー企業も参入可能な領域に見えました。
 サービスロボットの研究者には、次のようなことが期待されそうな期がしました。
 1.ロボット技術の共通基盤の切り出し
 2.人間支援とは何かという、人文科学的社会的意義の見直し
 3.成長し・衰えて行く体や心との調和の取り方
 4.サービスとは何かという、人間の意識の問題
 5.サービスに関する知識をどのように切り出し、蓄積していく方法論
 6.サービスビジネスとの融合

iロボット:実用ロボット分野のグローバルリーダー(iRobot Corp創始者・現会長)

 ヘレン・グレーナー氏がおよそ10年前iRobot Corpを設立し、現在は年商1億8900万円の企業になった。掃除用iRobot Roombaは世界で250万台の売りあげになった。
 家庭内だけではなく軍関係のロボットも製作しているが、家庭用に商品の開発方針は必ずしも最高の品質のものを作ることを目的とはしていない。 なぜなら、えてして最高の品質ものは需要が少ない。
 ビジネスとしては、ある程度の市場がなければ、参入するわけに行かない。

 プレゼンテーションの後は、舞台にてiRobotのデモを行いました。地を這う円盤という感じで、舞台の上を軽快に走りまわっていました。障害物や、仕切り(壁に見立てていた)にぶつかりそうになるとスピードを落とし、器用方向転換していました。整理整頓された、広いスペースでなら十分役に立ちそうです。

同時開催のインキュベーションフォーラム2007と産学官技術交流フェアー

 ロボット展の会場の向かい側で、同時開催の中小企業基盤整備機構主催のインキュベーションフォーラム2007では、60社以上の会社、50組織以上のインキュベーション施設や支援組織が展示を行っていました。石川県から、いしかわ大学連携インキュベータ(i-BIRD)が出展されていました。先端技術大学大学院、金沢工業大学とともに、金沢大学のパンフレットがおいてあり、一生懸命、石川県のインキュベーション施設の説明をされていました。

 またもう一つ、同時開催の日刊工業新聞社主催の産学官技術交流フェアーでは、石川産業創出機構(ISICO) が3ブースぶち抜きで、石川県の産学官連携の状況を展示されておりました。写真は、訪れたお客様に、一生懸命説明をされているところです。このフェアは早くも来年も10月1日から3日に開催しますと、出展者向けの資料を渡していました。 早くも、年度末を感じさせてくれたイベントでした。