6. 社長から社員へのメッセージ(2)
前回述べたように、私の社長としてのもっとも重要な活動は、会社の理念やビジョンといったメッセージを社員に対して送り続けることだったと思っています。
今回は社員に送ったメッセージのご紹介の2回目です。
<一人3役をめざす>
"一人3役制度"で社員満足度の高い職場を実現している会社に「三州製菓」があります。
社長の斉之平伸一さんは、埼玉県の教育委員も務める大変な人格者で私の20年来の友人でもあります。
女性従業員が大半を占める同社の社員の最大のニーズは育児、介護と仕事の両立でした。
そこで斉之平さんが編み出したのが多能工制度あるいはマルチタスク制度でした。同社ではこれを「一人3役制度」と呼んでいます。
「一人3役制度」では自分の専門以外に2つ以上の仕事を身につけることが要求されます。
「一人3役マネージャー」が、育児や介護で早く帰らなくてはいけない人に代わる人を日々きめ細かく指名することで、周りの人が応援して帰りやすくするしくみです。
その結果、①社内の風通しがよくなり、②社員満足度がアップし、③モチベーションのアップした社員によるサービス向上により顧客満足度も格段にアップし、④育成にプラスとなり、結果として長期間素晴らしい利益率の業績をあげています。
様々な立場を経験することで、自分以外の人の業務状況が一目で分かるようになり、セクショナリズムがなくなり、会社全体を見渡せるようになったと、斉之平社長は言います。
時間外勤務はゼロになり、個人事情に応じた勤務形態が可能となり、今や一人の募集に400人が応募する人気企業になりました。
今、国をあげて提唱している「働き方改革」を先取りして実現してしまっているのです。
「一人3役」は、社員の満足度向上による企業のサステナビリティー(持続可能性)に貢献するだけでなく、社員が、一人の人間として、変化の激しい環境に適応して生き残る能力を身につけるためにも大いに役立っています。
P.F.ドラッカーは著書の中で、「歴史上 初めて、組織より人間の寿命が長命になった。」「これから求められる人材は会社の寿命よりも長く活躍するプロフェッショナルである。」と述べています。
昔は一つのスキルを身につけていれば一生食べていけましたが、今ではそのスキルが通用する分野や会社の寿命が、人の労働加能寿命よりも先にきてしまいます。
したがって、異なる分野の異なるスキルを身につけ、その能力を発揮することで、激しい環境の変化に対応して、自分自身を柔軟に変化させ、新たな価値を生み出し、社会に貢献し続けることになるのです。
(2017年7月24日)
2017/12/30
文責 米川 達也