130.失敗は成功の元

130.失敗は成功の元

-相談員への道を歩む-

はじめに


 先日、麻生市民館のシニアの社会活動支援事業(活動コース)のひとつ「麻生市民館生涯学習相談員養成講座」に参加しました。生涯学習相談員養成講座の目的は、生涯学習情報提供や生涯学習相談を中心に、市民館の生涯学習支援のために活動するボランティアの養成です。
 スケジュールは10月から11月にかけての毎週木曜日の午前もしくは午後の5回のシリーズでした。

vbl-spsknm01.jpg図表1 スケジュール

 今回はこの講習会に参加して感じたことを、魚眼マンダラで整理し、「相談員への道」という自業計画を立てるまでのステップをまとめました。

1. 魚眼マンダラで整理


 今回の生涯学習養成講座で学んだことを、私なりに1枚に整理したのが図表2 相談員講座です。「魚眼マンダラ-柴又 帝釈天の例-」で述べたマンダラ図法を使って作りました。

vbl-spsknm02.jpg図表2 相談員講座

こちらをクリックすると詳細が見られます

 図表2で青枠で囲まれている部分に生涯学習相談の関係する地域 (麻生区、川崎市、神奈川県等)・関係者に関する情報が書かれています(社会)。赤枠で囲んだ部分は相談員自身の置かれた立場やできること 、なすべきこと、やりたいことに関する情報です。黒枠部分が相談者にからむ情報です。すなわち相談員は赤枠の持つ自分自身の条件のもとで、青枠からの情報や助けを得ながら相談事 (相談者の悩みや希望)に対応していく様子を示しています。
 青楕円枠→黒楕円枠→赤楕円枠の流れが「空間軸」、黒枠の流れは「時間軸」となります。
 中間横軸の関係者、学習相談の流れ、相談員のスキルが、相談に絡む仕組 (人、モノ、金)であり、情報・技術、学習相談の流れ、心が「仕掛」となります。 
 こうして「空間」「時間軸」「仕組」「仕掛」の重なったところで、 学習相談が行われることになります。
 これは「商品コンセプトの探索」で述べた多次元思考の一つ、4次元思考の例です。

 社会については「第4回 生涯学習の意義と学習相談の役割」で、生涯学習が人生100年時代の今、どのような意義があるのかというお話と、それを取り入れてきた経緯のお話をいただきました。
 また、学習相談の役割は 学習者と教育・学習資源とを結びつける、学習者の学習上の問題を解決する 、学習者が「学習の仕方」を学ぶのを支援することです。

 情報技術の例としては、「第3回市民相談窓口を見学してみよう」で、地域活動(市民活動)と市民活動を行っている団体の橋渡しのお手伝いを行うために、 麻生区役所(麻生市民館)、麻生区社会福祉協議会、 あさお市民活動サポートセンターが協力して2017年4月に立ちあげた検索サイト、「麻生区市民活動団体検索サイト」(https://asao-act.org/(2019/11/22アクセス)の説明をいただきました。 
 ここには、現在約250の利用登録団体が登録されています。

 学習相談の結果は 「第2回 麻生市民館 現学習相談員との情報交換・交流会」で過去7月から10月の半ばまでにどのような相談者からどのような相談があり、その相談はどのような結果になったかなどがそのひとつです。 

 関係者の例は「第3回 第3回市民相談窓口を見学してみよう」で訪問した市民交流館やまゆりです。
 そこでは、区民の「地域デビュー」をサポートするために賑わいの場づくり区民への広報着実な運営を行い「やまゆりをさらに多くの人に知っていただく」ために市民活動団体の支援の拠点として地域への参加、地域との交流確かな運営のための活動を行っている人が多くいらっしゃいました。

 学習相談の流れについては「第5回 講座を振り返って」で相談時の手順のお話がありました。

 相談員のスキル並びにについて、「第1回  生涯学習相談とは」で傾聴や気づきのお話をお聞きし、参加者は、その実践ワークで話し合いの雰囲気を楽しみ・学びました。また「第4回、学習の意義と学習相談の役割」で支援者固有な能力に加えて、全員が持つべきものとして、「意識変容活動」注1)の気づきを促す手法として、「傾聴スキル」注2)加えて、話していることをほかの立場からポジティブに言い換える「リフレーミング」注3)のお話がありました。

 相談者相談員は、 チラシが置いてある市民館や図書館を訪れてくる人です。

2 相談がうまくいくためには


 図表2を見渡して分かるように、相談がうまくいくためには、次の3つが必要です。

1. 相談員は赤枠の「相談員のスキル」を学ぶだけでなく赤枠の自分の「心」を十分に生かし、 相談者に気づかいし、相談者の理解を得られるように伝える能力 (傾聴とフレーミング)を持つ必要があります。

2.  さらに、相談員を取り巻く人々(青枠の「関係者」)とともに、青枠の情報や技術を使い易い形で提供できるようにしておかないと、相談員はとても自分の専門外のケースの相談に乗ることはできません。 
 このような情報が上げられているところとしては、第3回にお聞きした「麻生区市民活動団体検索サイト」以外にも、 注7) に挙げた 「生涯学習支援実践講座」や参考文献に挙げた「生涯学習 ユーキャン」、「PLANET」、「川崎市民アカデミー講座のご案内」、「かながわ生涯学習情報システム」、「キャリアアップガイド_2019働いている皆さんのための講習、東京都」等いろいろあります。 
 このような情報の整理と公開も生涯者相談員のグループ活動として準備することになります。
 例えば「生涯学習支援実践講座」でやっていることや最近のITの進歩を見ると、ネットワークやAIの知識を知って活用できるスキルを磨かないと「気づき」や「傾聴」といった人間の能力頼りと言ったサービスだけではユーザーの多様化に対処できなくなり、早晩役立たなくなることを感じました。その後、学習相談に参加させていただいたところ、いろいろな チームや組から出されている生涯境域活動報告の中から、参加メンバー募集情報をもとに、ある人が一覧表を作成しパソコン上に見えるようにしていました。またある人は、得られた記事を切り抜き、生涯学習の種類に分類・整理してバインダーに貼り付けるといった形で情報を整理されていました。このような作業は、相談会場に相談者がいらっしゃらない時に相談員が自発的に行われていました。こうして作成された情報を使ってその他の相談員も相談者の問題や質問に応えることができていました。 

 しかし、この方法では、情報源での変更情報を的確に反映させるために、 常に相談員が情報源にアクセスし確認・更新する作業が発生いたします。生涯学習相談員が利用する場合は、自分の経験や記憶にない相談を受けた時には、システムを検索して得られた結果を、生涯学習サービスを提供しているところに確認してから、相談者に対応することになります。しかしながら相談者が直接使用することとなると、これでは信用を得られません生涯学習を行っている団体は、自分たちの都合に応じて、どんどんやり方を改善していきます。
 この辺りは文部科学省が基本的方針を作り、それに従って各部門が学習プランを作ることが多い、基礎教育とは異なっています。このため できることなら、情報元の変更が自動的に反映するシステムが組めればよいのですが、これには情報セキュリティの問題と相当者のソフトウエアスキルが必要になり、ボランティアベースの相談員だけでやるのは難しそうです。
 そのうえ単にデータを集めただけの、通常の検索システムでは、「テニスをやりたい」、「パソコン教室に行きたい」といった具体的なものであればともかく、抽象的な悩みの場合は相談者だけではなかなかなか自分の知りたい情報を見つけることはできません。これを見える化して、適切な学習場所として伝えるのが生涯学習相談者に要求されるスキルです。1.に挙げた項目です。

3. 相談員とのコミュニケーションを行うためには、相談者自身も自分がどのような時に幸せかのような、自分のことを自分で判断できる必要があります。生涯学習相談では相談者が相談結果にそのまま従うのではなく、何をどう行うかは相談者が決めるようにお話をしています。

vbl-spsknm03.jpg図表3 自分のやり方

 図表3の自分のやり方は自分で案を作成する方法です。
 まず自分の経歴を整理します。この時重要なのは、履歴書でよく使われる、学歴や職歴だけを書くことではありません。

 まずは、自分の記憶に残っている印象深かったイベントを書き出します。それにその時の自分の立場を書き加えます。そしてそのイベントが起きた時期の順に並べ、これまでの略歴・職歴と組み合わせます。こうして図表3の左上の図を完成します。この図の特徴は、従来の学歴・職歴だけを重視するのではなく、将来の行動のもとになる自分では意識をしていない暗黙知を呼び起こすために記憶に残っているイベントを書き出していることです。

 次いで、書きだされたイベントをその強さの程度を考えて、例えば図表3の左下にあるような 個人―組織人、専門能力―実践力 の2次元のマトリクスの中に記入します。このマトリクスも、自分の都合に合わせて軸を決め、整理します。これにより自分はどのような時にどのようなタイプの行動をとるかが見えてきます。 

 それをもとに自分の強みと弱みを、同図 中下のマインドマップに書き出します。その結果を同図右下のSWOT分析図に書き込み分析し自分の強みを生かす仕事のス タイルを見つけ、図表中上の自分のやり方としてマインドマップを作ります。そしてこの中で不足しているものがあればそれが生涯学習の対象になるものです。もう少し詳しい図は「原宿のイルミネーション」に書かれていますので、そちらをご参照ください。

 相談員やネットの推薦で言われたことをそのまま始めたのでは、失敗したときに腹も立ちますし、代替手段も思い浮かばないでしょうから、もう一度浮かびあがる(失敗から立ち直る)ことは難しくなります。これを防ぐために、あくまでも相談者自身が相談員の相談結果を採用するかどうかを判断するようにします。しかし図表3のような図を作るにはそれなりの時間もかかります。参考資料をお渡しし、じっくりとやる必要があります。これらの会話するときに相談員が気を付けることが「傾聴」・「リフレーミング」・「気づき」であり、その結果起きるのが「意識変容」です。そのために必要な技法の例を 注2)、 注3) にあげてあります。ご参考までに。

3. 相談員への道


 ということで、これはやりがいがありそうと考え、 ボランティアとしてやってみる気になったら、相談員という自業の進め方を 「図表4 相談員への道」に描きます。

vbl-spsknm04.jpg図表4 生涯学習相談員の道

こちらをクリックすると詳細が見られます


 ここで、自業とはこのシリーズの「自業の夢を描く-自分のやりたいことを楽しもう」に述べているものを意味しています。基本は「金儲けではなく人生を豊かにすることです。ビジネス流に言えば「自分の時間」を投資して、「幸せ」を稼ぐ活動のことです。

 現在の私は、左下の生涯学習相談員講習が終わったところです()。これに自分の持っているスキルや情報を加えて、どのようなことができるかを準備しています。その後「自業計画の作成」を参考に自分が行う生涯学習相談計画を立てて、必要な解決策を準備し、とりあえず「生涯学習相談員を開始」する段階に入ります()。まずはやってみてどこに問題があるか・改善することとはないかなどを整理し、その後はOODA注4)(Observe Orient Decide Act) のルールに従って常に活動結果を検証しながら、自業を継続いたします()。

 こうして当初の目標を達成できた場合、1 創業計画に入るか、 2 さらに発展させて自業拡大を図るか、 3 うまくいきそうにないから中止するかといった出口の判断を行います()。自業を行っている間に、使いやすい支援システムを構築できれば生涯学習コンサルタントとか、エバンジェリストが頭に浮かびます。 こうして生涯学習相談員の方が夢を持てれば、「生涯学習相談員活動」は自業として十分報いられます。

 ここで「生涯学習相談活動」そのものを自分の「生涯学習」と考えて、今回のセミナーで学んだ 「傾聴スキル」「リフレーミング」「気づき」「意識変容活動」を生かし、学習者と教育 学習資源とを結びつける 学習者の学習上の問題を解決する 学習者が「学習の仕方」を学ぶ、を実践すこともできます。 

 たとえば、第2回目で出てきた「相談者の年齢がかなり高年齢であった」 状況をどう考えるかです。
 「幼児教育に学ぶ」に生涯学習に関する変遷と金沢大学の地域課題への取り組みが行われていることを紹介しました。
 このように、今や大学並びにその他の教育機関が生涯学習を社会向けに行うのは普通の時代になっています。
 それならば、教育機関と提携 し、AI・VR・IOT等を活用し面白くして、相談コーナーが20代~40代の方にも魅力的に見えるようにする方法も思い浮かびます。
 ただこのような、現役時代の相談者に対する生涯学習については、すでに紹介用のホームページもできているでしょう。したがって、検索スキルのある相談者には、「生涯学習」で検索して自分に合ったHPで調べることを、お薦めすれば十分な場合もあります(参考文献にいろいろなケースについての資料を挙げてあります)。
 先日も相談者が来られて、お話をしているうちに、参考文献にある 「麻生区市民活動団体検索サイト」をお見せし、そこで検索し結果をお見せしていると、これから自分で見るからそこのURLを教えてくださいと言われました。ホッとすると同時に、何かもの足りない感じもしました。

 また、市民館で行われている「ヨガ」の活動を行っている部屋をのぞくと、参加者のほとんどはスマートフォンを使える若者だそうです。
 このような魅力ある「生涯学習」では、若くてスマホ等を使いなれている参加希望者が素早く登録するので、検索システムを使いきれない相談者が、「生涯学習相談」に来た時には「時すでに遅し」になりがちです(定員になり募集終了となるため)。
 その結果生涯学習相談を訪れる人にはITで埋められなかった生涯学習活動の空きを紹介することしかできません。
 このような時は、検索システムの使い方を説明し次回の募集に備えるか、それでも今何かやりたいという相談員には代替の生涯学習項目を選ぶようガイドすることになります。

 一方、このシリーズでいえば「大学はやめないぞ」や「過去の中に未来を見る」 等で述べてきた「自分への備え(Prepare for yourself)」ができていないために、相談者が何をやりたいのか明確に説明できない人もいます。このような場合には、傾聴やリフレーミングを行ってもなかなか納得できる結果を得られません。
 また地域デビューの相談窓口として、相談コーナーのほかにも市民課活動相談コーナー、ボランティア相談コーナー(https://asao-act.org/confer(20200118 アクセス)があります。 市民民交流館やまゆりは、私が以前から参加している「あ・そうかい」のある組織です。そこには「市民課活動相談コーナー」があり、週2回の午後何かを始めてみたい、体を動かしたい、仲間をつくりたい、充実ライフを見つけたいという人の相談を行っています。距離も離れていないので、案件によってはそちらを紹介した方がよい場合もあります。
 忙しい時には自分の得意案件を絞り、相談者に許されればそれ以外は他人に回す方が、相談者にとってもいい場合があります。
 こうなると「出る杭になってイノベーションを」でのべたように、相談員としては広い範囲の相談にのれるだけでなく、狭い範囲でもよいから他の人がマネができないような能力も身に付けておく必要があります(こんな人をT字型人間といいます)。

 「意識変容」には「振り返り」と「気づき」が大切です。このためには講義・講 座・ワークショップに出席するだけでなく、仕事・旅行・ イベントのような日常生活からも資料を得るようするにしなくてはなりません。 相談者自身で学べる講座もしくはアイデアを見つけるだけでなく、自分が働かけてつくることも必要になります。やりたいことがどんどん浮かんできます。今や IT時代、意外と可能な方法を知って作れるチームが見つかるかもしれません。

おわりに

 
 以前このシリーズに「幼児教育に学ぶ-幼児の未来はみんなの未来-」を掲載して、生涯学習に興味を持っていたころ、麻生図書館のロビーで「麻生市民館 生涯学習相談員養成講座募集」といったパンフレットを見つけました。生涯学習といえば、大学等の教育機関は勿論のこと、社会教育、企業内教育、 趣味といったいろいろな機関で行われています。そのような中で公的な機関で、しかもその機関の人材にではなく、なぜ社会に向けて教育業務をやるのだろうかと、疑問を持ちながらも、これは面白そうだと参加を申し込みました。幸い定員になる前に申し込むことができ、無事養成講座に参加することができました。当初生涯学習を行う相談員の養成と思っていたのですが、学習について悩み(課題) をかかえている相談者に学習機関(組織・チーム)を紹介する相談員でした。しかし、悩みを抱えている人とどのようにコミュニケーションを取り、相手の気持ちを引出し、理解する秘訣は学習の相談員 (一般的には学習コーディネーター)と同じです。

 ただすべての学習教育を行うことは、「市民館等の」役割でもありませんし時間と費用がかかり、市民の要求の変化についていくことはできません。そこで「学習相談」という形で「問題を解決する情報」を提示することにより、市民の学習の悩みに答え満足していただこうとしているわけです。

 こうして、集めた情報は次の社会的事業の参考資料にすることもできます。この考え方はアマゾンやグーグルの無料の検索システムと同じです。これは現在の日本の製造業の抱えている問題でもあります。今や製造業を中心とした 20世紀の日本からサービスを中心として製造と統合する21世紀の時代すなわちモノづくりとコトづくりの時代に入ってきたのと同じことが、社会事業でも起き始めているわけです。

 以前このシリーズの「新時代の組織構築」で議論したようなビジネス・リエンジニアリングと同様なことを行うための、公的機関の顧客すなわち市民の満足度を上げるために必要な情報を得るための機能の一つとして使うわけです。

 このシリーズの「シリコンバレーに学ぶ人材活用術」 には大学院のMOT授業で行った人材活用術での考え方を掲載させていただいています。これを今様に直してボランティアの相談員用として利用できばれ面白そうです。そのためには複数の情報元からの情報を統合して見ることができるITシステムの構築する必要があります。さもないと、便利と感じません。学習相談員の実態にわずかしか接触したことのない私には、まだまだ手が出ません。以前町内会長をやっていたころに、似たような話として、「地域包括ケアシステム」についての話をお聞きしました。これは高齢者の増加が見込まれる中での、生活支援のお話でした。注5)「地域包括ケアシステム」で言っている「自助」、「互助」、「共助」、「公助」の 考え方は「図表2 相談員講座」にある「空間」「時間軸」「仕組」「仕掛」 とも関連したものです。注8)立ち位置の違いにより見えかたが違うという例です。 

結論

 ということで、相談員は図表2にあるように1から4までの準備を行い、そのうえで 5,6を行うこととなります。

1. 赤枠の自分自身を明確にし不足部分(スキル・心がけ)を補足する。
2. 青枠の自分の周りにあること(関係者と情報)を整理する。
3. そのうえで「仕組」「仕掛」を整える(不足している部分は補充する)。
4. そこで自分のやろうとしていることが、関係部門の中でどの位置にあるか「空間」を確認する。
5. 相談者の現状と希望(ありたい姿)「時間」を知り
6. 相談の流れに沿って今やるべき相談を行う。

しかし、もっと大事なことが残りました。 それは

7. 社会の「誰にどのようないい結果」をもたらすためにやるのか(今回はこれを宿題にします)。


補足

 今回の報告は生涯教育を行う人のための講座ではなく、生涯学習を紹介する相談員のための養成講座に出席した私の感じたことを事例として、相談員への道をまとめたものです。まだ私には結論は出ていません。しかし参加された相談員の皆さんの積極的な発言も多くお聞きしました。これから相談に参加することにより、相談現場からいろいろなことが学べそうと期待が膨らんでいます。

 「社会教育士」や「社会教育主事」を称して生涯学習コースにかかわるためには、「生涯学習相談」ではなくて「生涯学習」そのものについて十分知っている必要があります 注6)。このためには、例えば参考文献に挙げた「生涯学習  ユーキャン」を調べて自分にあうものを利用するとか、 注7) にあるような生涯学習支援実践講座に出席する方法もあります。「生涯学習支援」の道をお進みになりたい人は、「図表4 学習相談員への道」の右下の「自分への備え」を整理して自分の立場を十分理解したうえで、これらに参加するのが良さそうです。 

 注や参考文献にあるように、今回参考にしただけでも実行に役立つ資料は豊富にあります。他にもいろいろあるでしょうから相談員になりたいと考えている人はまずは図表3にあるような「自分のやり方」を見つけとりあえずやってみたいことを、思い切って「自業」として初めるのはいかがでしょうか。うまくいけば幸せだし、うまくない結果になった時は、体験したことを反面教師として整理し自分のスキルに加え、次の自業を始めればよいわけです。「失敗は成功の元」です。まずは初めて見ましょう。

注1)この話は、公益財団法人 日本女性学習在団が発行している  月刊「We learn」2018年3月号の 『学びのスイッチ-男女共同参画A to Z:「意識変容の学習」/山澤和子』 に述べられています。詳細は参考文献の 「女性の学びと意識変容」のp141、p233に書かれています。

注2)傾聴力とは、ただ相手の話を聞くというのではなく、深いレベルで相手を理解し、相手の立場・気持ちを尊重して、共感する能力です。HP:『「傾聴 の目的と3つのメリット、「傾聴力」スキルを高める5つのトレーニング方法」(https: //boxil.jp/beyond/a4664/ (2019/11/24アクセス)』 に分かりやすい説明が、参考文献に挙げた小宮昇が書かれた 「プロカウンセラーが教える初めての傾聴術」にはカウンセラーとして身に付けておくべき多く情報が、原千恵子「高齢者カウンセリング-傾聴から始まる出会い」、 学苑社、2014には高齢者カウンセリングに傾聴を使う方法が説明されています。

注3)リフレーミングとは「物事を新しい見方でポジティブに解釈する」ことです。 HP:『【完全理解】一瞬で世界を変えるリフレーミングの効果と活用辞事例』 に分かりやすい解説が載っていますので、ご参考までにhttps: //teamhackers.io/reframing-changes-your-working/(2019/11/24アクセス)

注4)OODAとは「元々は軍事行動における指揮官の意思決定を対象としていたが、後にこれに留まらず、官民を問わずあらゆる個人の生活、人生ならびに組織経営等において生起する競争・紛争等に生き残り、打ち勝ち、さらに反映していくためのドクトリン、そして創造的行動哲学となった ・・・・経営学者である野中郁次郎と、元陸上自衛隊陸将補である三原光明は、本モデルは基本的に個人の状況適応モデルであって知識創造モデルではなく組織の知識創造能力やイノベーション能力の向上と直結させるのは無理があると提言した。」 Wikipediaより(2019/11/23アクセス)

注5)「地域包括ケアシステム」は日本社会全体の少子高齢化に対応するために 「住まい」、「医療」「介護」「予防」「生活支援」の分野で国が進める政策の柱です。ご参考までに https://www.kawasaki-chikea.jp/(2015/11/27アクセス) 

注6)2020年4月から施行される「社会教育主事養成の見直しに関する基本的な考え方について(案)」の概要をご参照ください。 https: //www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/__icsFiles/afieldfile/2018/03/23/1402576_4.pdf(2019/12/14アクセス)参考文献の高井正の「生涯学習支援のデザイン」には生涯学習を行っている人たちがどのような考え方で、生涯学習をデザイン(計画)したらよいかが書かれています。

注7)生涯学習相談ではなく、「生涯学習支援」を行いたい時には、 例えば次のような研修コースに参加する方法もあります。
生涯学習支援実践講座 生涯学習コーディネーター研修 (基礎コース) https://www.tsushinkyoiku.or.jp/cordinater_shinshiengiho/index.html(2020/01/18アクセス)
生涯学習支援実践講座 生涯学習コーディネーター新支援技法研修(新技術技法コース)  //www.tsushinkyoiku.or.jp/cordinater_shinshiengiho/index.html(2020/01/18アクセス)
生涯学習町田市生涯学習ボランティアバンク_登録講師ガイド
https://www.city.machida.tokyo.jp/bunka/bunka_geijutsu/cul/chuokominkan/kouminkan/volunteerbank.files/00guide1905.pdf(2020/02/07アクセス)
町田市にお住まいもしくは活動中のひとで、活動を充実させたいグループとか自分の特技を役立てたい時には、町田市のボランティアバンクに登録すれば、相談者は、この登録者一覧から依頼したい生涯学習ボランティアを探して、生涯学習センターの窓口で申し込むことができます。また依頼したい内容をつたえれば、それに合ったボランティアを探す手伝いもします。

注8)みんなの介護による「地域包括ケアセンターの図解説明」が下記に掲載されています。
https://www.minnanokaigo.com/guide/homecare/area-comprehensive-care-system/(2020/01/19アクセス)


参考文献
小宮昇、「プロカウンセラーが教える初めての傾聴術」、ナツメ社、2012

原千恵子、「高齢者カウンセリング-傾聴から始まる出会い」、学苑社、2014

山澤和子、「女性の学びと意識変容」、学文社、2015、p141、p233

山澤和子、『学びのスイッチ、「意識変容の学習}、We learn, 2018年3月』、 日本女性学習財団、2018

PLANET(プラネット)かながわは、神奈川県生涯学習情報の検索システムです。「先導的に学習を支援するネットワーク」という意味の Pilot Learning Assist NETworkの頭文字から、PLANETになりました。かながわ生涯学習情報システム https: //www.planet.pref.kanagawa.j(2019/11/22アクセス)

「生涯学習情報を検索しよう」、https://www.planet.pref.kanagawa.jp/index.html#sagasu(2019/11/22アクセス) 

「麻生区市民活動団体検索サイト」、https://asao-act.org/(2019/11/22アクセス)

「区民公開講座(やまゆり)」、https://yamayuri.ne.jp/category/kumin(2019/11/22アクセス)

川崎市民アカデミー講座のご案内 http://npoacademy.jp/sub2/bosyu19k/bosyu19k1.html(2019/11/22アクセス 受講生募集終了)

かながわ生涯学習情報システム(https://www.planet.pref.kanagawa.jp/(2019/11/22アクセス)

「キャリアアップガイド_2019 働いている皆さんのための講習」、東京都 https://www.hataraku.metro.tokyo.jp/zaishokusha-kunren/carr_up/31_all_hukushihenkou.pdf (2019/11/22アクセス)

生涯学習支援実践講座 生涯学習コーディネーター新支援技法(新支援技法コース)
https://www.tsushinkyoiku.or.jp/cordinater_shinshiengiho/thanks.html?no=2019112203(2019/11/22アクセス)

生涯学習 ユーキャン  https://www.u-can.co.jp(2019/12/11アクセス)

高井 正・中村 香、「生涯学習支援のデザイン」、玉川大学出版部、2019

2020/02/18
文責 瀬領 浩一