157.日本が生まれ変わるために(前)

157.日本が生まれ変わるために(前)

今何が起きているのか

はじめに

 最近新聞やテレビを見ているとコロナ、ウクライナ、天候不順・浸水、交通事故、殺人、インフレ等の話がよく出てきます。なんか世の中が落ち着いていない感じがします。ということで学生起業を行うにあたって注意すべきことがなにかあるのではないかと、今起きているのことを纏めてみました。

 私は1960年頃に大学ならびに大学院時代を過ごし、1970年頃から社会人生活を始めました。その頃は日米安保条約に関する学生運動で、大学が閉鎖されたり、学生が死亡したりといったことが発生していました。この時もいろいろな変化がありましたが、1970年6月23日に安保条約は自動継続となると学生の安保闘争も下火となりました。1979年にエズラ・ヴォーゲルの著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』に書かれたように、この頃の日本の成長ぶりは世界の模範のように言われていたころでした。

 1960年代に大学で学びその後企業の運営方法を学んだ学生は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」に元気づけられ企業や政府等のマネージャーを目指して、会社のために必死に働いていました。

 ところがその後はうまくいかなくて、失われた20年とか30年と言われる時代が続いています。そのうえ最近の新聞を読んでいると、コロナウイルスの拡大、ロシアのウクライナ侵攻、安倍元総理の殺害、人手不足と雇用問題といったネガティブな記事が多くみられます。

 その上、日本の最低賃金は、OECD国中では10位以内から落ちこぼれ12位から13位という状況です。今や日本は、国の状況説明をする各種の格付けでは、ナンバーワンどころか、ベスト10から落ちてしまうものもでてきました。これらのいくつかには人口に関連するものや、国の面積に関連するものもあるため、単に数値を比較するだけでは評価に適しないものもあるかと思いますが、最低賃金などはすでに後進国並みとなっています。

 この大きな 原因は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を達成できたのは、その20年程度前の1960年頃の欧米の成功事例を学び、それを日本流にして製造業の「改 善」運動とした成功手法(プロセス・イノベーション)でした。ところが、その後の技術の変化や社会の変化に素早く対応できなくて、今や世界の流れについていけない企業も出てきました。世界の流れの変化についていけない大きな理由が現場を良く知っているはずの企業が年功序列の人事制度の元では、自社の過去の成功事業を置き換えるような新しい事業を始めると既存事業のビジネスからの収入が減っていまいますので、危険を冒してまで新しい事業を始めたくないと考えてしまいがちだったのでは無いかと思います。

 ところが学生起業家にはこのような過去に経験し成功した事業を持っていないのが普通ですから、現状を打ち壊すような事業を始めても、それは自分の事業ではありませんから失うものはありません。新しい事業をやる時に、このような過去のしがらみに縛れることの少ないのが学生起業の大きな強みになります。現在使われている製品より安く使いやすい製品で、利益を確保できそうな事業であれば学生企業として初めることに躊躇する必要は無いわけです。

 ということで、学生起業家は既存企業には危機と考えられる環境変化に対応するビジネスであっても、生産性の高い新しいビジネスとして成功する可能性はあるわけです。こうした事業は日本が生まれ変わるために役立つわけです。

日本の現状

 ということで今回は、まずは今の危機とは何か考えてみます。

 深津喜成「最近の企業危機事例に学ぶ~企業に求められる危機管理~」(https://www.tokiorisk.co.jp/risk_info/up_file/2004020571.pdf)(アクセス  2022/07/28)では企業経営や事業活動が深刻な損失を被るもしくは社会一般に深刻な影響を及ぼすと予測される事態を「危機」と定義し、その危機をコントロールするためのあらゆる活動「危機管理」としています。「危機」に似た言葉として「リスクマネジメント」という言葉がありますが、こちらは企業経営に悪影響を与える全てのリスクを把握し、リスクがもたらす損失の極小化を図るもので、企業経営に対する影響の重大なリスクを合理的にコントロールするための経営管理手法である、と定義しています。これは既存企業でも通常行われているものです。

 リスクマネジメントが、比較的軽微なリスクも含め全てのリスクを洗い出し、それぞれの重要度を把握するところからスタートするのに対し、危機管理は、危機の中でも企業経営に深刻な影響をもたらす重大危機に焦点を当てる傾向があります。この危機、つまり重大リスク発生時の莫大な損失を念頭に相当な経営資源(人、モノ、金、情報)を費やしてもその損失を極小化する新しいビジネスチャンスを作り出す危機対策の事例を「図表1 危機対策」にまとめました。

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図表1  学生起業の道

 この図では組織内部の進め方に関する問題はマネジメントの問題として別途考えることにして、外部から発生する危機を「図表1 危機対策」に書かれている4つの矢印とを選びました。今回この図で取り上げたものはいつもの「4次元曼荼羅」で使っている、時間、空間、仕組、仕掛の中から選びだした①~④の危機の源として次の4つ取り上げています。
持続可能な環境   (空間軸)
コロナウイルス   (仕掛軸)
日本の人口減少   (仕組軸)
命の危機      (時間軸)

 ここで、とり上げた4つの枠は、あくまでも事例として取り上げたものです。一通り目を通していただいたら、ここに書かれていることを参考にご自身の事業に合わせて、ご自身の起業における危機対策図を作製されることをお勧めします。

① 持続可能な環境

 ここで取り上げている持続可能な環境とは、学生起業に関連する活動が地球環境を悪化させることは無いということです。このため事業を継続できる環境を維持できるということです。学生企業として事業を行っていても地球資源を枯渇させることはなく、環境を維持できるということです。本シリーズでもこれまで に「137.心豊かに暮らせる社会 SDGsの利用」 でSDGs(Sustainable Development Goals)の概要とSDGsの目標・ターゲット・指標と基本的な考え方と企業・大学・公共機関等での取り組み事例についてまとめていますので、詳細はそちらをご参照ください。「国際連合広報センター」の公式情報では「持続可能な開発」とは「現在および将来の世代の人類の繁栄が依存している地球の生命維持システムを保護しつつ、現在の世代の欲求を満足させるような開発」としています。

 このシリーズでも何度も取り上げているのですが、SDGsは図表2に挙げた17個の目標(Goal)を達成するために、169個のターゲット、231個の指標を設定しています。

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図表2 SDGsの17個の目標

出典:「SDGsの開発目標」総務省の資料(総務省、2019)を参考にして作成

 この目標を見るだけでも、ここでは目標は
1 .基本的人権に関するもの       1,2,3,4,5,6
2 .経済的・社会的豊さに関するもの   7,8,9,10,11,12
3 .地球環境に対するもの        13,14,15
4 .平和とパードナーシップに関するもの 16、17
と広い範囲の目標が挙げられています。
 細かい内容は総務省、2019「SDGsのターゲットと指標」(https: //www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf)(アクセス 2022/08/14)に描かれていますのでそちらをご参照ください。

 また「138.ボランティア活動の危機 水辺にある里山に参加して」では、里山の環境を守るボランティア活動に参加した時に知った川崎市の総合計画とSDGs活動との関連についてまとめています。ボランティア活動により、山林をきれいにするために大きく育った木を伐採し、雑草を刈りとり、水の流れがスムーズになるように山の傾斜滑らかにしてきた活動です。ほかにも海外から入ってきたアメリカザリガニについては国内に広がらないように駆除する活動も行っています。こうして美しく整理された里山を見ながら、自分の出来る活動を体験することを通じてSDGsの重要さを感じたしだいです。

 このようにSDGsはいろいろな立場の人達の間で話題の対象となっており、今やSDGsは特定の観点から見た考え方ではなく、あらゆるプロジェクトや活動の中で考慮されるべきものとなっています。すなわち特別の知識として考えるのではなく、すべての人が心がけるべき暗黙知(着眼大局)のようなものと考えてよさそうです。

 地域が「持続度」を維持すること、すなわち「この世の資源を消滅させない」ためには、住民たちが暮らしに幸福を感じ、生活に満足し、地域への愛着を持って、 ずっと住み続けようと考えることが重要である。ということでブランド総合研究所は、「第4回地域の持続性調査2022」を実施し、都道府県の幸福度・生活満 足度・愛着度・定住意欲度を行いその結果を西嶋治美「『消滅しない』都道府県ランキング2022【完全版】」ブランド総合研究所 DOL(https: //diamond.jp/articles/-/306990)(アクセス 2022/08/22)として、報告しています。

 その結果「消滅しない都道府 県ランキング」1位は、3年連続で沖縄県(持続度78.9点)となり、2位は福岡県、3位は宮崎県・鹿児島県となっていました。石川県は9位で前年度は5位から少し順位を下げていますが、トップ10に入っていますから魅力ある県です。一方、私の住んでいる神奈川県は35位(前年度33位)、近所の東京都は 41位(前年度40位)となっていました。コロナの問題が大きいためかもしれませんが、首都一極集中と言われながら、今や住んでいる人にとってはそれ程魅力のない状況になってきているようです。しかしこれほど大きくなった東京都や神奈川県ですから少々の人口減少があっても消えてなくなることはありえません。

② コロナウイルス

 「132.コロナ後のベンチャー -ITとOODAの有効利用-」は、ちょうど、日本でもコロナが広がり始めたころ(2020年)、スポーツサークルや市民活動が休止となり、日常生活に変化が出てきたので、新聞やホームページに掲載されている情報を参考にして、どのように対処すべきかを纏めた記事です。

 2020年の2月から5月、約3か月の間に私が読んだ約200個のウイルスに関する記事を整理して作製した記事の内容に関する私の感想が「図表3 読んだ記事の内容」です。

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図表3 読んだ記事の内容

 この記事からお分かりのように、コロナウイルが世界的に問題になり、日本に入ってきたばかりの2020年2月から3月ころには地域を特定しない記事が64%で対象地域として日本が取り上げられていたのは36%でした。それが5月頃になると日本を特定した記事が74%と増えています。取り上げられた記事内容はほぼ55%位が現状を述べていますが、2月から3月までの予測や感染対策の必要性がそれぞれ20%弱になり、5月には感染対策が30%、その解説が10%位と徐々に自分たちの問題だという考え方が広がっています。書かれているテーマは2月から3月は半数弱が医療としての話でしたが、5月には人権や経済に関わる問題が取り上げられるようになってきています。

 「133.新型コロナ後の自業-「家業」のやり方を今様に-」では、起業(ベンチャー)とまではいかないけれども、自分のやりたいこと(この記事ではこれを自業と呼んでいます)を始めたいと思っている人向けに、どのようにやればよいかをまとめました。

 世界ではこれまで1918~1919のスペイン風邪では2000万人とか5000万人、1347~1351年の黒死病では5000万人、HIV感染症 /AIDでは3700万人程度の死者が出ましたが、幸せなことに大国から切り離された島国の日本は、これ等の禍に巻き込まれることは有りませんでした。しかしながら、交通の便もよくなりグローバル活動が普通になった現在の日本のこれからは油断ができません。これからの日本は、コロナだけでなく動物や植物の害や、人間の犯罪においても世界的な流れに巻きもまれることを気づかせてくれました。

 コロナはパンデミックを避けるために、外出の制限、出勤の制限、自宅待機等の不便をもたらしました。このために自宅で仕事をできる仕組みを作ることや、1か所に集まらないでネットワーク会議、ネットワークを使うことにより印鑑の利用をやめる等も行われるようになりました。授業もオンラインで行うこともかなり普及しました。

 その結果発生した典型的な悪い例がインターネットにおけるセキュリティ問題や、安部元首相の件で分かった宗教的な問題です。すなわち犯罪集団や詐欺集団もグローバルな活動を活発化しているわけです。

 「135.あさお希望のシナリオ コロナ後の農業」 は、私の住んでいる川崎市麻生区で行われている、地域に住む人たちに生きがいのある生活をできるようにするためのサポートをするボランティア活動で行われていることをまとめた記事です。活動の全体は農業に限らずすべてのことを対象としていますが、川崎市麻生区は神奈川県の中では北端に当り、緑に囲まれた地域ですので農業もそのテーマに入るとして取り上げられました。コロナウイルスの蔓延が始まったころにたまたま私がそのグループに入って活動して話をまとめたものです。

 これまでは着眼大局着手小局ということで何かを考えるときには3×3の9個の駒からなるマンダラ図を使って4次元でものごとを整理していきました。「136.IT 時代のコロナ後対応-6次元曼荼羅思考-」では、今回は希望の広場というサークルに入って、多くの時間は個人として参加していましたが、時にはグループ代表として発言がもとめられることもあり、グ ループ企業を使って6次元で物事を考える必要性を感じたとの話を書きました。これは個人事業として起業する時に必要とされるときに、全体的にモノを見るのに使える図表です。

③日本の人口減少

 日本の人口減少については「平成27年版厚生労働白書 -人口減少社会を考える-」
https: //www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/(アクセス 2022/08/16) 
https: //www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/dl/all.pdf(アクセス 2022/08/16)、これは政府が考えている次の様なことが書かれています。

第1部 人口減少社会を考える 希望の実現と安心して暮らせる社会を目指して
序章 人口減少の見通しとその影響
 第1節 人口減少の見通し
  1.我が国の総人口の見通し
  2.我が国の地域別将来人口推計
 第2節 人口減少がもたらす影響と長期ビジョンが目指す将来の方向
  1.人口減少がもたらす影響―経済、地域社会、社会保障・財政 
  2.「まち・ひと・しごと創成長期ビジョン」による将来の方向
第1章 人口減少社会
 第1節 我が国の人口の概要
 第2節 我が国の人口に関わる施策の変遷
 第3節 人口減少社会を取り巻く背景・現状と国民の意識
 第4節 諸外国の動き
 第5節 纏め 人口減少社会に向けた取り組みの在り方
第2章 人口減少社会に向けた取り組み
に続いて第2部では 現下の政策課題への対応について書かれています。

 それから5年後の「令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」
(https: //www.mhlw.go.jp/content/000684406.pdf)(アクセス 2022/08/20)においても社会保障と社会保険にからむ、日本の人口減少についても書かれています。
 「令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」の概要は
(https: //www.mhlw.go.jp/content/000684406.pdf)(アクセス 2022/08/20)に描かれており、こちらは18枚の プレゼンテーション形式になっております。その本文は「令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」本文
(https: //www.mhlw.go.jp/content/000735866.pdf)(アクセス 2022/08/20)に細かく書かれています(509 ページ)。
第1部は令和時代の社会保障と働き方を考える
第2部では現下の政策課題への対応が描かれています。

 こちらにはたとば図表4のような人口ピラミッドの推移が描かれています。

vbl01604.jpg図表4 人口ピラミッドの推移

出典 「令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」
https://www.mhlw.go.jp/content/000735866.pdf(アクセス 2022/08/21)p7-p8を参照して作成

 日本の年金は、現在働いている人が、定年後の高齢者の年金を払うという仕組みになっています。日本の成長期であった19年頃は図表4の左図にあるように、21歳か64歳までの現役の働き盛が61.6%を占める人が収める資金と同額の企業が支払う資金で、65歳以降の12%の人の年金を払っていました。これを厚生年金に当てはめると5人で一人分のお金を払っている状況です。ところが2040年には少子高齢化のため、50.0%の人で35.4%の人の年金を払わなくてはいけないことになると3人で一人分の年金を払う必要が出てきます。このままのルールでは、一人当たりの年金を減らすか、現役社員の年金支払いを2倍以上に増やさないと現在の厚生年金制を維持できなくなります。といったようなことで大問題となっています。

 また、企業の施設が大都市に移動すると、地方の人は仕事を求めて大都市周辺に移り住んできました。しかし都市は生活費が高いため、給与も高くないと生活できません。高い給与を得るためにはそれなりの学習や経験を積む必要があるのですが、そのためのお金もないというのか地方に住んでいる人や高齢者の悩みでした。こうして地方人口は減り、生活に必要な品物を売る店も減ってきて、地方の中でも人が集まるところと、減るところが分かれてきて、お店はところどころにあるアーケードに集まってしまいました。こうなると自動車等に乗れない高齢者は買い物もできなくなる状況に追い込まれます。こうして地方はますます衰退してきます。

 また地方のJR駅へのお客が減ってくると、公共交通機関と言われて来た会社も、廃線するしかなくなりますます衰退していきます。2022年首都圏NEWS WEB、2022/07/28「JR東日本 地方路線の収支初公表利用特に少ない66区間」、(https://www3.nhk.or.jp/shutoken- news/20220728/1000082825.html)(アクセス 2022/08/22)では、JR東日本は一日に平均何人を運んだかを示す 「輸送密度」が2,000人未満の利用者が特に少ない、35の路線、66区間が対象となりました。66の区間の赤字は2019年度は、あわせておよそ693 億円に上ります。地域としてはこれらが廃止されれば、地域の存続にもかかわるため十分な打ち合わせが必要と述べています。

 「131.明日に備えて偏差値コンプレックスという国民病からの解放」の「図表1 非正規・正規社員の割合」では2016年の国民生活基盤調査にもとづいて作られた正規社員と非正規社員の割合についてのグラフが表示され
・20歳から65歳以上のどの世代においても役員を除く非正規職員・従業員の割合は、男性のより女性の方が高い。
・同年代の「高校・旧中卒」・「専門学校・短大・高専」の卒業生の女性の非正規職員・従業員の割合はさらに高くなる。
・年代別にみるとどの学歴でも高齢者の非正規社員の割合が高くなる。
といったことが書かれています。

 「135.あさお希望のシナリオ-コロナ後の農業-
 神奈川県川崎市の麻生希望のシナリオの調査が行われそこで私が担当したコロナ後の農業の現状を調査した結果をまとめました。その中で麻生区は川崎市の中で高齢化の予測値は最も高く24.6%であり2030年の予測は30%でした。
1.芸術・文化のまちづくり
2.農と環境を生かしたまちづくり
 たとえば、下記に挙げた農業を体験できる所は私の住んでいるところから電車で2,3駅離れたところでそんなに遠くありません。
 明治大学黒川農場・収穫体験、岡上営農団地、早野野里、収穫体験ブルーベリー摘み
3.高齢化への対応とすこやか・支え合いのまちづくり
 たとえば公園体操による健康づくり、地域包括ケアシステム講習会が行われています。
 さらに地域で活動行っている事業者と協力し、次項にも関わりますが高齢者向けの「安心見守りネット」つくりが行われています。
4.安全・安心まちづくり
5.総合的な子ども・子育て支援
6.コミュニティ
7.スポーツのまち麻生

 そこでも高齢者問題以外に「5Gデータ通信の高速化」、「AI 人口知能によるデータを使った判断」、「クラウド ビックデータの保存」において「日本が出遅れている」と、「IT先進国と比べて社会サービスがスムーズにいかないためです」とIT後進国日本社会政策の遅れが指摘されました。

 更にもう一つは、社会政策が出遅れている、個人の教育費低減政策が明確でない、インフレ促進政策等によって発生する年金等の時価低減のように高齢者の実質収入が減らざるをえない時代で迫ってきています。
 ただこれについてはあまりにも問題が大きいので、別個検討するということで別チームの「学習」テーマで検討してもらうことになりました。
 そして同HPの「図表3 農業 食べ物を作り人売る人」について曼荼羅図を作製いたしました。


④ 命の危機


 このような情報を整理していると、2022年7月8日(金)の午前に安倍晋三元首相が参議院選挙で候補者の応援演説中に狙撃されたというニュースが入ってきました。その翌日、安部氏は亡くなられたと朝日新聞のトップ記事として報道されました。亡くなられた安部氏のご冥福をお祈りします。こんなことが日本でも 起きるのだと思い知らされた次第です。容疑者は「宗教団体に恨む気持ちがあった」と供述していると書かれていました。ただこれまでこの宗教団体と政権の間の関係についてのニュースを聞いたこともない私は、なぜ「元首相と宗教団体との絡みで」このようなことが起きたのか理解できませんでした。ということで、 本当の理由は他にあるのだろうと思っていました。

 ところがその後の新聞やテレビのニュースを見ていると、自民党とこの宗教団体との関係はかなりあり、選挙の時の票集めなどにおいてもお世話になったり、自民党の議員の講演会にて発表もありました。

 日本ではこれまでもこのような事件が発生していたとの記事がありましたのでで、近年のテロについて調べたのが図表4です。

vbl01605.jpg図表5 命の危機(政治家襲撃) 

出典:朝日新聞、2022/07/09『繰り返される政治家襲撃』、2面を参考に作製

 ちょうどそのころ読んでいた安倍晋三(2013/01/20)「新しい国へ 美しい国へ完全版」文芸春秋 では安倍元首相が進めてこられた最終章のデフレ退治飛び地銀改革、成長戦略をどう描くか、「瑞穂の国」の資本主義、「外交敗北」を乗り越えて、日本を取り戻すには共感を感ずると同時に、そのために外国のリーダーに対する「説明」の仕方については感心させられました。

 この本の元となった「美しい国へ」は2006年に出版されました。その後、2007年に病気のため、安倍内閣は辞職しましたが、2009年の総選挙で再出発し2012年12月から第二次安倍政権の時代が始まった後に「新しい国へ」として出版されたものです。
 その後、2020年8月28日の記者会見で持病の再発を理由に辞任する意向が表明されました。
 日米同盟の構図、日本とアジア、少子国家の未来、教育の再生といった問題に対する考えなどを読んでそのような政策をとったかについては参考になります。

 一方、金子勝(2021/02/28)「人を救えない国 安倍政権・菅政権で失われた経済を取り戻す」朝日新聞出版 によれば今社会で起きていることは
1.石炭と蒸気機関、石油と内燃エンジンに代わって再生可能エネルギーと電気自動車へ
2.情報通信技術の発展が非常に早く、産業や製品とサービスの在り方を変えた
3.ミレニアム後ヒトゲノムが解析され情報通信技術が医療技術や医薬品の開発を大きく変えた
ということが書かれています。

 情報通信技術は軍備にも使われるようになり大国間もしくは民主主義国と社会主義国との対立を生んだ日本は民需に貢献する技術を開発する。

 日本は第2次世界大戦の戦争責任を問われなかったためか、政治家はコロナリスクの責任を取るムードが無い(自分の行為についての責任感がない)このため改善ができない。
 このため未来の展望を磨かず、過去の責任逃れにとらわれて答弁している。日本の悪い国民文化である。
 このため、たとえば温室効果ガス削減のための策は既存の原子力発電に頼っている。太陽光発電のような小規模で分散できる手法は広がらないように大電力会社が制限をかけている。
 これは第2次世界大戦の時の「戦艦大和の大艦巨砲主義と同じ過ちだ」では最後に書かれている格差と貧困から逃れるために教育と研究に時間と予算を使うべきだ。

 労働者の最低賃金どうやって決めるか。最低賃金とは使用者が労働者に支払う賃金の最低額(時給)であり地域ごとに労働者の生計費、賃金、使用者の支払 い能力を考慮して決めるとなっています。毎年度夏にAからDに区分して引き上げの目安をきめ、10月ごろと都府県ごとの目安を参考し低賃金をきめ、実際に適用する。

 朝日新聞によると日本で1番最低賃金が高いのは東京都の1,041円、一番低いのは高知県と沖縄県の820円です。全国平均は930円です。海外では英国が成人向けで1,530円、フランスは5月から約1,490円となっています。いかに安いかお分かりかと思います。

おわりに

 以上、危機の起きそうなことそれらの結果をいくつが挙げてきましたが、これからはこれらのいくつが組み合わさった時どうなるかについても考えなくてはいけません。

 お金の話としては、各企業はそれぞれ自分の会社の利益についての管理をキチンと行い破産しないように注意してきました。しかしながら自分の会社の収支は黒字になっていると思っていても、取引先の組織が赤字となり支払いの延期を求めてくることもありますし、ときには破産すれば収入はあきらめなければいけないこともあります。このような関係が関連する企業の間で次々と伝わっていけば、いつ何が起きるかわからなくなってしまします。金融関係では個々の企業状況把握 と対策をミクロプルーデンスと言い、関連企業も含めた状況把握をマクロプルーデンスと呼んでいます。金融関係の場合には監督官庁や関連組織が状況を把握しながら調整もしくは支援を行うことがあります。同様なことは、モノづくりやサービス提供の企業においても、材料が入ってこない、納入先が受け入れてくれないといったものやコトの関連においても発生します。この場合は金融業のようにお金に関わることとして、政府やグローバルなネットワークを通じてある程度、 統一した形で対応が可能ですが、その他のモノやコトに関するビジネスではさらに複雑になり統制や調整は難しくなり人ででは無理ということでグループごとに標準化をおこなったうえで情報の収集から(IoT)内容の判断(AI)についてのシステム構築を行う必要がガ出てきます。金融関係のように阿吽の呼吸というわけには行きません。そして金融関係もこれらのグループの一部として組み入れる必要が出てきます。

 そのためにはいろいろな対応が考えられると思いますが次回は次の4つをまとめます。

自分の立場を知る     (空間軸)  自分は十分準備出来ているか 
どのように対応するか   (仕掛軸)  医療の危機はビジネスにも関係する
情報通信技術の有効利用 (仕組軸)  人や物の動きはなくてもできる仕事がある
政治・戦争        (時間軸)  利害の対立により発生する命の危機をいかに回避するか


参照資料
厚生労働省、2015「平成27年版厚生労働白書 -人口減少社会を考える」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/(アクセス 2022/08/16)
厚生労働省、2020、「令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」
https://www.mhlw.go.jp/content/000735866.pdf(アクセス 2022/08/21)
首都圏NEWS WEB、2022/07/28「JR東日本 地方路線の収支初公表 利用特に少ない66区間」https://www3.nhk.or.jp/shutoken- news/20220728/1000082825.html(アクセス 2022/08/22)
瀬領浩一、2017/10/30 「112.成功のマンダラ kintoneによる業務システム構築事例」
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/112.html(アクセス 02022/07/15) 
瀬領浩一、 2020/02/28「131.明日に備えて偏差値コンプレックスという国民病からの解放」
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/131.html(アクセス 02022/07/15) 
瀬領浩一、 2020/06/04「132.コロナ後のベンチャー -ITとOODAの有効利用-」
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/132.html(アクセス 02022/07/15) 
瀬領浩一、2020/07/02 「133.新型コロナ後の自業-「家業」のやり方を今様に-」
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/133.html(アクセス 02022/07/15) 
瀬領浩一、 2020/08/12「135.あさお希望のシナリオ-コロナ後の農業-」
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/135.html(アクセス 02022/07/15) 
瀬領浩一、2020/11/03「136.IT 時代のコロナ後対応 -6次元曼荼羅思考-」
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/136.html(アクセス 02022/07/15) 
瀬領浩一、2020/12/04「137.心豊かに暮らせる社会 SDGsの利用」
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/137.html(アクセス 02022/07/15)
瀬領浩一、2021/12/13「138.ボランティア活動の危機 水辺にある里山に参加して」
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/138.html(アクセス 02022/07/15) 
瀬領浩一、 2021/01/13「139.みんなで世界を良くしよう 起業家意識で組織を変える」
https://o-fsi.w3.kanazawa- u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/139.html(アクセス 02022/07/15) 
瀬領浩一、 2021/06/11「142.アイデアとコンセプトの整理-大学発ベンチャーの設立に向けて-」
https://o- fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/142.html(アクセス 02022/07/15)
瀬領浩一、2021/11/20「151.学生起業の道 自分への備え」
https://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl2/vbl6/post/151.html(アクセス 02022/07/15)
総務省、2019「SDGsのターゲットと指標」
https: //www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf(アクセス 2022/08/14)
西嶋治美、「消滅しない」都道府県ランキング2022【完全版】 ブランド総合研究所 DOL
https://diamond.jp/articles/-/306990(アクセス 2022/08/22)
深津喜成、「最近の企業危機事例に学ぶ~企業に求められる危機管理~」
https://www.tokiorisk.co.jp/risk_info/up_file/2004020571.pdf(アクセス 2022/07/28)
20220615_世界の最低賃金ランキング(2020年版)「平均年収」「最低年収」「最低時給」から解説
https://www.digima-japan.com/knowhow/world/8314.php(アクセス 2022/08/15)

2022/08/23
文責 瀬領浩一